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そこで差がつくニュースの読み方

2010年6月8日更新

第9回 人気ブランド復活には消費者のこんな願望が潜んでいる!?

 往年の人気商品が復活している。制汗剤のほか、車、口中清涼剤と、かつて日本中で愛された商品がリニューアルし、息を吹き返すという様子を頻繁に目にするようになった。

 資生堂が復活させたのは、制汗剤「シーブリーズ」だ。80年代、ウインドサーフィンの映像が流れる爽快なCMによって、サーファーをはじめ、若者を中心に支持された商品だ。その後、時代の流れとともに売上は落ちていくのだが、資生堂が約3年前から、女子高生向けにリニューアルしたところ、売上がまた大きく伸びている。

 資生堂だけではない。三菱自動車はスポーツ用多目的車「RVR」を今年復活させたところ、当初の見込みを上回る売上を記録しているという。そのほか、森下仁丹は34年ぶりの新商品「JINTAN116」の発売し、また、夏にはバンダイが1970年代、テレビアニメで人気を博した「マジンガーZ」を、新ブランド「スーパーロボット超合金」シリーズの第一弾として展開する予定だ。

 ブームが去ったヒット商品を、絶妙なタイミングで復活させる戦術はめずらしいものではない。これまでにも、90年代の大ヒット商品、「たまごっち」が2004年に復活し、再ヒットした例などがある。

 かつての人気商品は、新規に商品を開発するよりも、開発費を低く抑えることができる場合が多いうえ、新たに消費者の認知度を高める必要もない。ブランドは企業の貸借対照表上には表れないが、その資産価値は高く、企業にとっては貴重な財産だ。この目には見えない資産を利用することは、企業の戦術の中でも有効な手段の一つだ。

 それでは、ブランドのない商品を扱う企業にとって、このニュースはまったく関係ないことかというと、そうではない。

 今回、復活した商品に注目すると、ある共通点が浮かび上がってくる。「シーブリーズ」「RVR」「マジンガーZ」。それは、かつて日本が元気のあった時代に生まれた商品だ。

 「シーブリーズ」が若者から多くの支持を集め、地位を確立したのは80年代である。 また、「RVR」は、発売されたのは90年代に入ってからだが、開発時期は80年代のバブル経済の時期にスタートしており、初代RVRで、スキーなどのレジャーを楽しんだ人は多数いる。また、「マジンガーZ」がテレビアニメとして放映されていたのは70年代。オイルショックなどの経済危機はあったものの、日本はこの危機を乗り越え、さらなる成長を続けた時代だ。いずれも、これら復活した商品が最初に世に出た背景には、強い日本、元気な日本がある。

 ブランド商品復活の現象を小売業の視点で読むならば、今後は70年代、80年代のリバイバル商品が狙い目だともとれる。ただし、それたけではない。もう一歩踏み込んで、このニュースを読むならば、消費者だけでなく、復活させたメーカーを含めて、多くの日本人の中に、かつて元気があった時代を懐かしむ風潮が見て取れる。

 なかでも、「シーブリーズ」や「RVR」は家の外に出て、思いっきり休日を楽しむ象徴で、今、不況の影響で蔓延している「巣ごもり現象」の真逆をいくものである。また、「マジンガーZ」は危機を乗り越え、次の時代にステップアップしていく強さの表れだともいえる。

 つまり、このブランド商品復活は、日本を覆う、暗く重い、自信喪失の流れを払しょくしたいという願望を示しているのではないだろうか。今の日本は経済の大きな低迷期を迎え、苦戦を強いられている。そのため、多くの人々は、日本に対して、そして自分自身に対して自信をなくしており、自信を回復させてくれる何かを求めている。

 そう考えると、今、ビジネスの現場における様々な課題を、「自信回復」というキーワードで捉えてみると面白い。店に置く商品を「自信回復」をキーワードとして、選ぶのも一つであるし、組織のモチベーションが低いと嘆くトップは、「自信回復」したいと願う部下の気持ちを理解するだけで、職場の雰囲気が変わるかもしれない。ヒット商品は社会の「今」を示すものである。支持される背景を探れば、モノが売れる・売れない以上のビジネスのヒントにつながるはずだ。

 

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