知れば納得!すぐに使える! 小売・流通業の新常識

連載記事

そこで差がつくニュースの読み方

2010年5月12日更新

第5回 エコポイント制度にみる有効なインセンティブの作り方

 エコ住宅の新築やエコリフォームした人を対象に、一定のポイントを発行する「住宅エコポイント」の申請受け付けが始まった。それに伴いヨドバシカメラとコジマは住宅エコポイントの対象商品「内窓」の販売を開始した。電化製品ではない内窓をなぜ、家電量販店が扱うのか。それは、これから到来するエアコン商戦の一環として、省エネタイプのエアコンと、熱遮断効果のある内窓の両方を合わせて購入してもらうところに狙いがある。

 顧客はセットで購入することにより、家電エコポイントと住宅エコポイント、さらには店独自のポイントが付与されるため、今まで以上のおトク感が得られる。ちなみに、断熱効果のある内窓の住宅エコポイントは1点につき、最大で1万8000ポイントがつく。住宅エコポイントは3月に申請受け付けが開始されたばかりだが、すでに、内窓取扱店には見積もり依頼が集まり、早くもその効果は表れているようだ。

 このニュースから明らかなように、「ポイント」という言葉は、抜群の集客力を持っていることがわかる。とはいえ、このニュースの読みどころはポイントを厚くすれば売上アップにつながるという話ではない。

 現在、量販店やスーパーマーケットでは、ほとんどの店がポイント制度を積極的に取り入れ、ポイントセールは乱立状態だ。そもそも、本来、ポイント制度は顧客を囲い込むためのマーケティングツールで、ポイント制度は「ポイントがたまるから次もこの店で買おう」とロイヤルティを高めるために導入するためのものだった。しかし、いまや、他店に負けないようにとポイントが2倍、3倍付加されるキャンペーンがいたるところで展開されており、ポイントは単なる値引き合戦になっている。これでは、本来のロイヤルティ向上のためのツールとして、機能するはずがない。

 また、忘れていけないのは、ポイント制度は値引きの先延ばしであり、ポイントセールは麻薬のような性質がある点だ。たとえば、ポイント2倍キャンペーンが奏功したとしても、競合が同様の仕組みを導入したならば、それに勝るもっと大きなポイント還元が必要になってくる。より大きな効果を求めて、何度も実行しているうちに、顧客はポイントを使うときがやってきて、より利益は圧迫され、店は疲弊していく危険性を含んでいるのである。

 先のニュースは、売上を上げるために、安易にポイント制度を導入することの落とし穴を示しているとも読める。とくに体力のない中小の店舗では、致命的な収支構造を生み出す可能性がある。では、中小の店舗が継続的かつ効率的に顧客を囲い込むインセンティブを設計するために、押さえなければならないポイントとは何か、少し整理してみたい。売上アップにつながり、多大なコストはかけられないということはもちろん、

  • 価値を測りにくいもの
  • 自社の商品やサービスに関係するもの
  • 自社の顧客における満足度の高いもの

この3点を満足しているものでなければならないことだ。

 小規模の小売りならではの例をあげるならば、たとえば、精肉店なら、週替わりで肉を使ったとびきりおいしいレシピを配るといった、手づくり感を前面に出すものが一つとしてある。つまり、夕食のメニューに困った顧客がこの店に行けば、良いレシピをもらえる。そしてその料理を味わいたいという顧客を創出することで、肉が売れるという具合だ。ここでのポイントは、肉料理のレシピが店のオリジナルで、精肉店に足を運んだことで顧客の問題解決につながっている点だ。精肉店にしかできない問題解決や付加価値の提供を2回、3回と繰り返すことで、ロイヤルティの高いリピート客の獲得につながっていくのである。

 こうしたアイデアを生みだすためには、工夫が必要である。ただし、地域に根づいた店舗ならば、そのエリアの顧客にだけ効くものに特化できる強みがある。どこの誰にでも効果的である必要はない。顧客を見続ければおのずからその答えは導き出せるはずである。いずれにしても、顧客を店に引き寄せ続けるには工夫が必要である。

 アイデアが不要で、どんな顧客にも価値が認識しやすいポイント制度に人気が集まるのも理解できる。だが、簡単なものには、欠点が多いのだ。売上を生み続ける有効な魔法の杖は存在しないのである。

 

 小売・流通業の新常識 TOPへ