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そこで差がつくニュースの読み方

2010年4月27日更新

第3回 ミスタードーナツとモスバーガーの共同出店に見る“コラボ”の新しい潮流

 ドーナツとハンバーガショップが一つになって、新業態の店舗「MOSDO(モスド)」が誕生した。出店先は広島県のイオンモール広島府中ソレイユ。共同出店したのは「ミスタードーナツ」のダスキンと「モスバーガー」のモスフードサービスだ。既存の単品メニューに加えて、ハンバーガー、ドーナツ、ドリンクがセットになったモスド独自メニュー「MOSDOセット」を580円で用意している。

 店内に入ると、ミスタードーナツのショーケースとモスバーガーのカウンターがあり、それぞれのメニューから注文できるようになっている。商品の製造は別々のキッチンが設けられており、それぞれ別に作られる。今後、両社はこの出店についての分析・検証を行い、全国展開を目指すという。

 両社の協力関係は、2008年の資本・業務提携に始まり、オリジナルの商品開発や共同配送による物流システムの効率化など、実際の事業にも展開された。今回の共同出店もその一環である。

 顧客にとっては、両店のメニューが一度に食せるモスドは、ドーナツもハンバーガーも両方好きだという人にとって、魅力的な企画であることは間違いないが、出店者であるダスキンとモスフードサービスにとっても、今回の共同出店における狙いは幅広い。集客という面では、先ほどの「MOSDOセット」のような魅力ある商品展開による効果が見込め、店舗運営という面では、喫茶メニューが中心のミスタードーナツと、主食メニュー、ハンバーガーが中心のモスバーガーが合体することで、食事もおやつの時間も顧客が来店するようになり、業務の効率化が図れる。そのほか、マーケティングノウハウや仕入れチャネルの共有という点も両社にとって大きな効果が期待できる領域であろう。

 モスド開店のニュースは、他社との提携のなかでも、同業種でもなく異業種でもない“隣のお店”と手を組むメリットを示唆している。店舗形態に限らず、多くの店では混む時間帯や曜日、季節が存在する。人気のランチの店でさえ、昼時は混雑していても午後三時を過ぎると閑散としてしまう店もある。また、美容室は火曜日を定休日にしているところが多いため、年中無休の美容室は火曜日が混雑するし、同様に年中無休の理髪店は月曜日が混雑しがちだ。むしろ、時間帯や曜日にかかわらず、一様に混雑している店はめずらしい。したがって、同じ分野にいながら、混雑する時間帯がずれている店を相手として選ぶことは、商品のラインアップの充実、集客力アップの面で高い効果が期待できる。

 本来なら、来客が薄い時間帯の集客を増やしたいのなら、その時間帯に対応した商品を自社で開発すればいいという考えもある。おそらく、モスバーガーならば、おいしいドーナツを何種類も開発することは不可能ではないし、ミスタードーナツにも同じことがいえる。しかし、一社のみで商品開発するとなると、手間もコストもかかり、そのリスクは小さくない。そこで、既存の実績のある商品を手掛けているところと組むことで、短い時間で商品とノウハウの両方を手に入れることができる。

 くわえて着目したいのは、今回の業務提携の戦略である。とかく、同じ産業内での提携というと、1位以外の上位2社が手を組み、1位に対抗するという規模をベースとした競争戦略が思い浮かぶ。しかし、今回の両社の共同出店の背景には、他社を意識している様子は強く表れておらず、顧客が喜ぶサービスとコストリーダーシップ両立させようという、絶対的な価値を追求する姿勢がうかがえる。

 かつてのM&Aでは、ナンバーワン戦略がもてはやされたこともあった。たとえ市場の規模が小さくとも、その市場内でトップシェアを取り、1位の座を確保する。そして2位との差が大きいことが事業の安定性のモノサシだと考える向きもあった。しかし、現在は、市況が激しく変化する時代だ。たとえ、シェア1位をとったとしても、市場そのものが縮小し、衰退してしまうケースも少なくない。大切なことは、M&Aや業務提携の組み合わせが、どのような価値を創造できるかということにある。

 顧客にとっては、ひいきの会社が業界ナンバーワンになることは嬉しい限りだが、それよりも、大好きなモスバーガーとミスタードーナツが一度に食せる方が、はるかに喜びは大きい。ライバルの動向を意識し、事業規模に目を向けるのではなく、顧客における価値という点から目をそらさないこと。その大切さをモスドの開店は物語っている。

 

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