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2010年4月20日更新

第2回 ゴールデンウィークが示す消費者の変化

 成田空港によると、2010年のゴールデンウィーク期間中、海外へ旅行を予定している客数は、昨年と比べて約2万人増加する見込みだという。今年は、曜日の配列により、長い休みが取りやすくなっていることが要因の一つであるが、昨年、JTBなどの旅行会社が海外旅行の売上減少に苦しんでいたことを考慮すると、今年の海外旅行者数の増加は景気回復の表れだとする見方が強い。

 しかし、もろ手をあげて喜んでいる場合ではない。なぜなら、見方を変えれば、現時点で、すでに、不況が終わった後の競争が始まっていると捉えられるからだ。いつの時代も、経済状況が異なる局面を迎えるときには、これまでとは異なった価値観が出現するものである。これまで、顧客から重宝がられた商品がそっぽを向かれるようになり、今までとは違った路線のものがよく売れる、といったことは多くの人が経験済みのことだろう。とすると、そろそろ小売りは景気回復後の変化を見据えた商品ラインアップに対応しておく必要が出てきているのではないだろうか。

 これまでの小売りの路線をひと言で表すと、低価格第一主義。外食産業やアパレルのほか、さまざまな産業で厳しい価格競争が繰り広げられてきた。しかし、現在は顧客が欲しいと感じるものは、単に安いものではなくなりつつある。それは、コンビニエンスストア大手2010年2月期の決算業績をみると、傾向は明らかだ。低価格路線を行った、セブン−イレブン・ジャパン、ファミリーマート、サークルKサンクスはスーパーとの安売り競争の影響で、ともに前年と比べて営業利益が減じている。他方、ローソンは高級弁当や高級洋菓子などの高級路線が奏功して、前年比で営業利益増となった。

 昨年7月、ローソンは高級路線として「驚きの商品開発プロジェクト」を立ち上げ、通常商品よりも高級感のある弁当やパスタ、デザートなどを展開、好評を博している。この4月に、2週間の期間限定で販売される「黒豚丼」は、鹿児島県産の黒豚を3種類の醤油をブレンドしたたれに漬け込み、焼き上げ、ご飯の上にふんだんに乗せた弁当で、価格は530円とやや高めだが、手ごろ感は十分。ローソンは期間内100万食の販売を見込んでいる。

 顕著なのは消費者の「節約疲れ」だ。最初は楽しみながら節約していた層も、長引くと、次第に心は荒み、そろそろ、少しだけ贅沢をしてもいいのではないかという気持ちが頭をもたげてくる。景気回復の兆しが見える今、消費者の抑えられていた贅沢への要望が吹き返すときが来ているともいえる。これから先、企業は価格競争で体力を消耗するよりも、高価格帯の商品にも目を向けるべきだろう。

 ただし、大手コンビニエンスストアと同じことを中小企業や個人商店が真似ようとしても、なかなかうまくいかないだろう。なぜなら、質の高い豚肉を使用しながらも、手ごろな価格で提供できるのは、ローソンという大手企業の強みを生かしているからである。大量生産を前提に、大量に仕入れることで、仕入れ単価を下げ、手ごろな価格を実現している。

 では、大量仕入れが無理な個人商店には、もはや打つ手はないのか、というとそうでもない。大量仕入れに代わる案として、現在、自身が抱えている経営資源をより有効活用すればいいのである。その資源とは、ずばり人材である。つまり、お弁当なら、材料に高級な素材を用いなくても、ひと手間をかけることで、味を向上させることは可能だ。たとえば、使用する肉は従来と同じにしながらも、ソースにひと手間かけると、おいしさがアップする。

 このやり方は、家族で運営している個人商店など、従業員同士の結束が固い組織ほど有利だ。従業員が一丸となって、ひと手間かけて、商品の魅力を向上させる。そうすることで、たとえ、素材の高級感はなくても、商品の品質で客の目を向けることは可能だろう。もちろん、この考えは食品だけでなく、他の商品にも応用できるものだ。

 手間をかけるのだから、個々の従業員への負担は増大する。しかし、今迎えている新しい局面は、企業や商店にとって、勝負時であることに間違いはない。今後、不況の霧が晴れたときに、優勝劣敗が目の前に現れてくる。今、何をしたかで、見えてくる景色が変わることに間違いはない。

 

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