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そこで差がつくニュースの読み方

2010年4月6日更新

第1回 出店攻勢の激化が予想される食品スーパーの示唆

 全国主要食品スーパー20社の出店計画によると、2010年度は09年度と比し12%増加となることがわかった。なかでも、食品スーパー中堅のマルエツ、ヤオコー、バロー、オークワなどがこの動きをけん引し、大都市圏へ積極的に出店してそこでの地盤を固めようとする動きがみられる。他方、大手小売りのイオンやセブン&アイ・ホールディングスも売り場面積が1000〜1500平方メートルの食品スーパーを積極的に出店する方針を打ち出している。今後、食品スーパーの出店競争は、過熱が予想される。

 ただし、これから増えることが予想される食品スーパーだが、店舗数はすでに過剰ともいえる状態にある。商業統計によると食品スーパーの1000平方メートルあたりの売上高は減少傾向にある。くわえ、店舗の淘汰が進んで、1999年のピークから5%程度減っているのが現状である。その中での出店競争の過熱である。競争激化は必至。場合によっては、共倒れになる可能性すら否定できない。

 翻って、このニュースから読者に問いかけたいのは、出店して店舗数を増やす「規模の拡大経営」は、企業繁栄には必須事項なのかということだ。古くから、店舗数を増やし規模を拡大することは、企業が繁栄するための鉄則だと信じられてきた。たしかに、規模を拡大することで売上を増大させ、大量に仕入れることで仕入れ単価を下げれば、結果として、売上の増大とコストダウンにより利益が増大するという理屈がかなっていた時代もあった。規模の拡大を追うことが利益を増やす上でもっとも有効な方法として成立していたのである。

 ところが、人々の生活や価値観が多様化した現在、もはやこの論理は通用しなくなっている。つまり、大きいことがたくさん儲かる条件ではなくなりつつあるのだ。実は、このような傾向は、中小企業にとって追風だととらえられる。規模を拡大していくには、多額の資金が必要で、その部分では圧倒的に大手が有利だ。しかし、現在のマーケットは、そこで提供されるサービスの質で店の勝敗が決まる。これは、小回りが効き、きめの細かい顧客対応が可能な中小企業のほうに流れが向いている。時代は「小型」を求めているのだ。

 だからといって、このニュースが示唆することは、これからは「小型」の店をたくさん出店すればいいということではない。むしろ、出店すること自体への疑問を投げかけているととらえられないだろうか。そうはいっても、規模が小さくなれば、売上は小さくなる。たくさん儲けたいのなら、やはり店を大きくしなければならないという考えは根強い。では、本当に、規模が小さくなると儲からなくなるのか。実は、流通にこだわらずに、日本全国の産業全般を見渡すと、売上が小さくなっても利益を増やしている企業が存在する。とくに、メーカーではそのような企業が少なくない。

 そこでは何をしているのか。門構えが小さくなった分、それを上回る費用の圧縮をかけているのである。売上が減っても、販売管理費のムダを減らせば、利益の額は変わらない。メーカーによっては、どこにムダがあるか、みんなで洗い出す仕組みを構築している会社もある。結果、費用の圧縮に成功し、売上が前年度よりも落ちこむ中、利益が増えた企業もある。

 もちろん、メーカーの事例はすぐに小売業に適用できるものではない。費用を削減したために、お客様へのサービスの質を落としてしまっては、将来的に店が衰退する要因になる。したがって、安易に費用を削減するのは危険だが、何をムダだととらえるか、時間をかけて検討することが大切であることは確かだ。 質を落とさずに、費用だけが落ちるものを見つける。これは、そんなに簡単なことではないが、中小の小売業にとっては、小回りの良さ、きめの細かい顧客対応という強みを発揮できる最適なテーマとも言えるのではないだろうか。

 

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