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お手本にしたい繁盛店

小さい会社による、大きい会社の“使い方”

2010年6月3日更新

第9回 小さい会社による、大きい会社の“使い方”

 大手と手を組む。小さな会社にとって、この判断が会社の命運を分けることは珍しくない。ヒト・モノ・カネ、大企業の圧倒的な資本力は、中小企業が到底なし得ない集客を可能とする。メーカーであれ、サービス業であれ、こうした大企業の経営資源を“あて”にして、提携・出店をもちかける。しかしながら、こうした戦略には落とし穴がある。確かに集客も売上も増大するが、そのいっぽうで、さまざまな出店制約条件によって利益率が低下する、ブランド構築のイニシアチブを失うといった長期的な価値が損なわれていくリスクも抱えてしまうのだ。

 では、小さな会社にとって、大企業と手を組むことは、一時的な売上増のための“麻薬”に過ぎないのだろうか。 道はある。この3月、愛知県にあるイオンモール東浦別館にオープンした結婚式場Anniversary House PREMIER(アニバーサリーハウス・プルミエ)は、イオンという大手に飲み込まれるどころか、お互いを生かす経営を実践している。

 アニバーサリーハウス・プルミエを運営するのは、株式会社プリエール&インテリジェンス。創業は1964年、わずか60坪の宴会場からのスタートだった。その後、敷地を400坪に拡張したものの、経営は振るわず苦しい日々が続く。一時期は、年間の利用客は40組にまで落ち込み、廃業の危機にまでさらされた。

 その中、2代目の現社長、中村泰隆氏が家業を継ぐことが決まる。なんとか、立て直さなければならない。役員、従業員が一丸となり、抜本的な改革に乗り出した。そして、わずか3年で年間40組の利用客数を250組まで伸ばす。その後、岡崎市に2号店を、3号店を豊田市に開設した。3月にオープンした「プルミエ」は4号店にあたる。

質の高いものを低コストで

 ところで、企業経営者がさまざまな判断の局面で、一番頭を悩ませることは、「二律背反」の状況にどう折り合いをつけるかだ。「コストと品質」、「品質と納期」など、どちらか一方を優先させると、他方がおろそかになる。今回の舞台であるブライダル業界ならば、コストダウンを図ろうとして建物や設備への投資を怠れば、建物がみすぼらしくなり集客力が落ちる。二つの相反する事項をともに成り立たせるのは至難の業だ。

外観

プルミエはイオンモール東浦別館内にある

 本来、誰が見ても魅力的な結婚式場を新築するには、土地や建物、内装費用と莫大な資金が必要だ。ところが、イオンモール東浦のプルミエは建物にかかる初期投資を従来の半分以下に抑えている。それでいて、内装には天然石を贅沢にあしらい、オシャレな雰囲気に仕上げた。

 これらを可能にした大きな要因は、イオングループという大手企業と手を組んだことによる。プルミエが位置するのは、イオンモール東浦の別館。イオンのショッピングモールに結婚式場が出店するのは初めてのことである。賃貸であるから、土地を購入する必要もない。これが、初期投資を低く抑えられた第一の理由だ。

設備、サービスも充実

 もう一つ、プルミエが受けたメリットは、設備にかける費用が少なかったにもかかわらず、美容室、写真館など、大手結婚式場並みの設備を顧客に提供できる点だ。

 高級ホテルなどには、施設内に関連する設備、「美容室」「写真館」「貸衣装」「ネイルサロン」「エステ」などがそろい、充実した式があげられる。中小のブライダル企業が大手と同様の設備を用意するのは、資金面での負担が大きく困難だ。ところが、プルミエが入っているイオンモール東浦には、本館に「美容室」「写真館」、別館「貸衣装」「ネイルサロン」「エステ店」がプルミエとは別に、単独で営業している。これら設備をふんだんに利用できることから、プルミエは大手並みの設備・サービスを提供できたのである。「投下する資金を少なく」「建物・設備を充実させる」という、本来ならば「二律背反」となる課題を、両方とも満足いく形に解決できたのは、イオンと組んだからにほかならない。

中村氏

天然石は直接海外から買い付け。高価なものを安く仕入れた

 これ以外にも、サービスに厚みを持たせた事項として、電子カードマネーがある。イオンモール東浦に出店している専門店は、イオン独自のカード「WAON」が使用できる。今の時代、ポイントなどがつくショッピングカードは、顧客の囲い込みに効果的なアイテムである。ところが、自社独自でカード制度を導入すると、かかるコストは大きくなってしまう。その点、先ほどのようなサービスを受けたときに、WAONが利用できるとなると、プルミエ側の負担はきわめて少ない。しかも、顧客にとっても、WAONならば全国のイオンの店で利用できるため、受けるメリットは大きい。

 招待客が受けるメリットもある。たとえば、引き出物は新郎新婦が苦労して選んだ割には、もらう側にとって重いうえ、不用品となりがちだ。最近、カタログから選べるスタイルが浸透しているが、商品点数が少なく、欲しいものが載っていないことがある。プルミエでは、招待客は全国にあるイオンの店で、自分が欲しい商品を選べる仕組みになっている。イオンだから、品数に申し分ない。これで、「重くて不要品」という引き出物に関する問題を解決した。

メリットを与えあう協業の形

 大手企業と中小企業が手を組むとき、とかく力関係によって上下の関係がつきやすい。ところが、プリエール&インテリジェンスとイオンの関係はあくまで対等だ。ここまで、主にプルミエ側のメリットを中心に紹介したが、イオングループにも、プルミエが出店することによるメリットがある。

 イオングループでは、経営理念を具体化するための「行動規範」が定められている。そのなかの「地域社会とイオン」という項では、「地域社会の人々が集うコミュニティの場を広げる」ことをうたっている。

 結婚式は新郎新婦と両家の両親から、これまでお世話になった方々への感謝の気持ちを伝える場であると同時に、招待客の祝福の気持ちが新郎新婦、両親に伝えられる場、これら人々が集う場である。

株式会社プリエール&インテリジェンス 代表取締役 中村泰隆氏

株式会社プリエール&インテリジェンス 代表取締役 中村泰隆氏

 今後、人と人との絆を深めることに役立ちたいと願うイオンにとって、新たに結婚式場が専門店として入ることは、地域社会の人々が集うコミュニティの場を広げることにつながるのである。

 経営者の中には、大手企業と手を組むことに対し、抵抗感を抱く人もいるかもしれない。だが、企業の価値は資本金の大きさで決まるわけではない。上も下もないのである。したがって、相手が大手だからといって身構える必要はないし、もちろん、相手が自社より規模が小さいからといって軽んじてはいけない。

 大切なことは、ただひたすら互いに見つめ合うことだ。相手にあるもので自社にないものは何か。相手をよく観ているうちに、補完すべきところが浮かび上がってくるはずである。どちらか一方の損得とせず、互いの強みをどう引き出し合えるか。これが提携を成功に導く何よりの条件である。

一、一時的な売上を求めすぎて、長期的な視点を失わない
一、自社、パートナー企業、顧客、すべてにメリットとなる方法を見つけ出す
一、提携の基本姿勢は互いのことをよく見ること
会社概要
会社名株式会社プリエール&インテリジェンス
代表者代表取締役 中村泰隆
所在地愛知県豊川市正岡町縄手越113
電話番号0533-84-2311
事業内容 結婚式場・宴集会場・各種パーティー会場
 

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