知れば納得!すぐに使える! 小売・流通業の新常識

連載記事

お手本にしたい繁盛店

カーテン館「窓」

2010年5月20日更新

第7回 アイデアが店の強みに変わるまで −カーテン館「窓」はなぜ圧倒的な成約率を維持できるのか−

 店にお客が溢れていても、それで商売が成功しているとは限らない。集客に成功しても、お客が何も買わずに店を出たら売り上げは立たないからだ。とはいえ、そこでセールストークに磨きをかけても、それだけでは不十分だ。東京都武蔵野市に商品を手に取った顧客の8割超が「お買い上げ」になる小売店がある。カーテン館 「窓」というオーダーカーテンの専門店である。価格が特別安いというわけではないし、店の雰囲気が格別素敵だというわけでもない。なのに、なぜ、顧客は買おうという気持ちになるのか。それは、独特の販売システムに理由がある。

 一般的に、顧客がカーテンをオーダーする場合、専門店に行き、コーディネーターの提案にしたがって、サンプルやカタログを見ながら商品を選ぶ。ただし、オーダーカーテンは決して安いものではない。顧客は慎重になり、二度、三度店に足を運ぶが、それでも最終的には他店に流れてしまうことが少なくない。

車にカーテンを積んで、お客様のもとへ

車にカーテンを積んで、お客様のもとへ

 カーテン館 「窓」の特徴は、顧客がカーテンを「試着」できるところにある。つまり、店のスタッフが顧客の家にあがり、部屋の窓にサンプルをかけながら商品を提案する。洋服を試着するように、顧客は好みに合った商品を自分の目で確かめながら選ぶことができる。

 オーダーカーテンは、できあがったものが店で抱いていたイメージと異なり、高いお金を出した割には満足が得られないことが時折ある。カーテン館 「窓」のシステムならば、こうしたカーテン選びの失敗を回避でき、結果、購買時の顧客の不安は払しょくされる。ここに、成約率があがる理由がある。

 サンプル数は800から1000種類。常時、車に積み込み持参する。まさに、店が丸ごと、顧客のお宅に移動するという感じである。

効率のよい優れたシステム

カーテン館「窓」 代表 後藤賢之氏

カーテン館「窓」 代表 後藤賢之氏

 店が顧客宅へ出向く方式はガソリン代と移動時間がかかるため、割が合わないようにみえる。だが、実はそうではない。カーテン館 「窓」で扱うカーテンは、オーダーカーテンということもあり、既製品と比べ価格は高めだ。30坪程度の平均的な家ならば、一件、およそ35〜45万円程度。リビング一部屋のみのオーダーでも数万円〜10万円を超える売上になる。

 収益上の問題は、「無駄足」をいかにして減らすかであり、成約率を高く維持できるのであれば、広い店舗を用意する必要もないうえ、家賃や店員の人件費といった固定費を低く抑えることができるので、むしろ、利益率の高い、割のいい商売だといえる。

アイデアの出所

 なんだかんだいっても、商売にはアイデア勝負の要素がつきまとう。カーテン館 「窓」は今までにないオーダーシステムを生みだした段階で、成功を半分手に入れたといっても過言ではない。では、このアイデアは、いったいどのようにして形作られていったのか。

 代表者である後藤賢之氏は、カーテン館 「窓」の設立以前は、父親と一緒にカーテンの卸業を営んでいた。バブル経済が崩壊した後は、カーテン産業にも価格破壊の波が訪れ、大規模な卸業者が圧倒的に有利な状況となった。売れていくカーテンは、誰でもが望むような、スタンダードタイプで低価格帯のものばかり。職人が手をかけてこしらえた優れた商品は見向きもされなくなった。

「職人が心をこめてつくった質のいいカーテンをお客様に届け、お客様の生活を豊かにするのが、商人としての使命ではないだろうか」
車に積んだカーテンのサンプル

車に積んだカーテンのサンプル

 後藤氏はカーテンの卸業を営みながら、次第にこうした思いを抱くようになる。いいものをお客様に届けなければいけない。それには、自分の店を持って、直接お客様にいいカーテンを提供すればいいのではないか。こうして、後藤氏親子は卸業だけでなく、副業として小売りを始めるようになる。ただし、開店当初は店舗での販売が中心で、現在のような顧客宅にうかがうスタイルは、まだとっていなかった。

 ある日、近所に住んでいる主婦が来店しカーテンを購入した。後藤氏は商品ができあがったので納品に行った。そのとき、その主婦は「予備のカーテンも揃えたい」と言う。後藤氏は手元にあるカーテンのサンプルをとりだし、部屋に合いそうなものを選び、実際に窓にかけてみせた。そのカーテンはその主婦の好みとは違っていたが、窓にかけてみるとことのほか部屋に似合った。おそらく、その主婦は店でカタログを見ただけでは、後藤氏がすすめるカーテンは購入しなかっただろう。だが、窓にかかったカーテンを見て、気に入り、その場で買うことを決めた。

「お客様はいいものが手に入り喜び、私はカーテンの購入が決まって嬉しい。これが新しい販売スタイルの始まりでした」(後藤氏以下同)

 その後、何度となく、顧客のお宅にあがり、コーディネートする方式を試してみた。すると、成約率だけでなく、できあがったものへの顧客の満足度も格段に高いことを後藤氏は手ごたえとして感じ取っていた。そして、徐々にお宅にうかがって、サンプルを窓にかけながらコーディネートする方式がカーテン館「窓」の販売スタイルとして定着していった。

全てのものごとは飛躍しない

 画期的なアイデアは、導入当初は店に大きな売上をもたらすいっぽう、その大きな売上ゆえに、他社にすぐ真似されてしまうという難しさがある。結局は、ライバル店が乱立して、自身の収穫が少なくなってしまう。

 しかし、カーテン館「窓」のような販売スタイルに、同業他社の参入はほとんどなかった。この販売スタイルには、部屋の大きさ、調度品を見ながら、部屋に合った商品を提案する「コーディネートの技」が必要で、この能力は誰もが真似できるものではないからだ。カーテン選びは顧客の好みが満足度を左右する。勧める側がいいと思った商品を必ずしも顧客が気に入るとは限らないのである。したがって、顧客の好みを入れつつ、プロの技を行使しながら、顧客が満足するものに仕上げていかなければならない。このさじ加減は誰でも簡単にできることではない。後藤氏の技術と目利きがあるから、いい商品をお客様に提供できるのだ。

 個人の技が重要なことは後藤氏が一番わかっている。後藤氏は定期的に海外に行き、本場の商品に触れ、品質を確かめ、センスを磨く。また、国内で展示会が催されると、積極的に出向き、新しい情報を取り入れている。

 カーテン館「窓」は顧客が増えるに従い、徐々に卸業を減らしていき、今の販売スタイルを確立させた。その過程では、顧客層を広げようとワンランク低い価格帯の商品にも手を出し、織元(織物の製造元)から安価な商品を産地直送で仕入れたこともあった。しかし、うまくいかない。安さを求める顧客は値段で商品を決める。結局、その場では買わずに他店との値段を比べたうえで安いものを選ぶ。これではカーテン館「窓」の最も大事な能力である「コーディネートの技」が活かせない。そして、安モノはどんなにコーディネートを工夫しても、出来栄えは所詮安モノ。納品後の顧客が見せる顔が、心から満足していないことがわかる。

 後藤氏は幅広い商品を扱うのではなく、やや価格が高めの商品に的を絞ることにする。このようにして、カーテン館「窓」のスタイルは確立された。

 傍からみていると、画期的なアイデアがある日突然わき上がってきて、神がかりな勢いで実現したかのように思える。しかし、現実の変化はゆっくりとやってくるのである。全てのものごとは飛躍しない。飛び抜けたアイデアを実現するには、日々の小さな歩みが必要なのである。

一、アイデアを成功に結びつけるのは、日々の積み重ね
一、アイデア勝負の商売は他社が真似する前に、独自の能力を構築しておく
一、アイデアが優れていても、品質を保つ努力を怠ってはいけない
会社概要
会社名株式会社カーテン館「窓」
代表者代表取締役 後藤 賢之
所在地東京都武蔵野市中町3-4-4-A
電話番号0422-55-4181
 

 小売・流通業の新常識 TOPへ