ここが知りたいRoHS指令

ここが知りたいRoHS指令

電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介

Q
その他2018年6月29日更新
Q.540 営業秘密を守るために、SDSに物質名やCAS番号など化学物質を特定できる情報や成分比率を記載したくありません。アメリカ、カナダでの対応方法を教えてください。

化学品の分類および表示に関する世界調和システム(The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)(GHS)では、営業秘密情報(CBI:Confidential Business Information)に関し下記のとおり取扱うように求めています。

  • (1)どのような規定が営業秘密情報の保護に適切かを考慮すべきである。(1.4.8.1)
  • (2)システムで営業秘密情報の保護を規定することを決めた場合、所管官庁は国家の法律と慣行に従い、適切なメカニズムを確立し情報の機密性を保護するべきである。(1.4.8.2)
  • (3)営業秘密保護に関する規定は国家の法律と慣行により、システム間で異なる場合がある。
    しかし、これらは次の一般原則と一致させるべきである。(1.4.8.3)
    • (a)CBIの申請は物質の名前と混合物中の濃度に制限すべきである。
    • (b)CBIがある場合は、ラベルまたは安全データシートでその事実を示すべきである。
    • (c)CBIは要請に応じて所管官庁に開示すべきである。所管官庁は適用される法律と慣行に従い、情報の機密性を保護するべきである。

アメリカ、カナダとも、GHSをベースにしていますので、営業秘密が主張する化学物質は、SDS(Safety Data Sheet:安全データシート)の「セクション3 成分の組成/情報」で、特定の化学的同一性および/または組成の正確な割合(濃度)が営業秘密であることが記載できます。

1. アメリカの場合

米国労働省(DOL)職業安全衛生管理局(OSHA)が労働安全衛生法(OSHAct)において、作業場での化学物質の有害性周知徹底を目的としてSDSについて規定しています。
 危険有害性周知基準(HCS, 29CFR1910. 1200)1)で、営業秘密については、「雇用者の事業で使用され、雇用者がそれを知らない、または使用していない競合他社よりも有利な機会を得る秘密の情報、回路パターンなどのパターン、製造プロセスなどのプロセス、半導体デバイスのようなデバイスなどの情報の集まりを意味する」としています。
 営業秘密はOSHAへの事前承認は必要ありません。

一方、有害物質規制法(TSCA:Toxic Substances Control Act)に基づきCBIが規定されています。新規物質を登録する際にCBIを登録することができます。TSCAのCBIに関するFAQの中で、TSCAの14条(C)機密保持請求要件の(2)で特定の情報を以下のように例示しています2)

  • 化学物質、混合物の製造または処理プロセスの特定の情報
  • マーケティングおよび販売情報
  • サプライヤーまたは顧客情報
  • 混合物の場合には、混合物の全組成物質およびそれぞれの成分の割合の詳細
  • プロセス、混合物、化学物質の使用、機能または適用に関する特定の情報
  • 製造業者または加工業者の生産量または輸入量
  • 化学物質が最初に商業的に提供される日より前に、化学名、分子式、CAS番号、および化学物質を特定するほかの情報をTSCAに提出された時点で機密となる

CBIの手続きは、環境保護庁(EPA:Environmental Protection Agency)に、秘密であることを立証するために提出したすべての情報が、以下のものが真実である必要があります3)

  • 情報の機密性を保護するために妥当な措置を講じていること
  • 情報がほかの連邦法やほかの方法で公開される必要がないこと
  • 情報の開示が競争上の重大な害を及ぼす可能性が高いこと
  • 情報がリバースエンジニアリングによって容易に発見できないこと

なお、EPAがCBI請求を承認すると固有の識別子が割り当てられます。

EPA、DOL、OSHAなどが覚書を締結しており、OSHAは、TSCAに基づきEPAに提出されたCBIにアクセス可能となっています。OSHA TSCA機密情報セキュリティセキュリティマニュアル4)が作成されています。EPAに対して秘密保持が請求できる事項は「化学的アイデンティティ(40CFR720.85)」および「新規化学物質の用途カテゴリー、または提案用途カテゴリー(40CFR720.87)」と限定されています。

2. カナダの場合

Canada WHIMS 2015で、健康に有害な成分については、化学名、同義語、CAS番号、正確な濃度、または特定の濃度範囲をSDSに示されなければならない、とされています。
 一方、CBIの保護に関しては、作業場危険有害性物質情報システム(WHMIS:Workplace Hazardous Material Information System)で機密情報の開示を免除5)すると規定されています。危険有害性物質情報審査法(Hazardous Materials Information Review Act:HMIRA)6)でサプライヤーの免除請求が規定されています。

  • (a)有害な材料(material)または物質の場合
    • 材料または物質の化学名
    • その材料または物質のCAS番号またはそのほかの一意の識別子
    • 材料または物質中に存在し、危険物法(Hazardous Products Ac)7)の下での健康障害クラスのカテゴリー、またはサブカテゴリーに分類され、その材料または物質の分類に寄与する不純物、安定化溶媒または安定化添加物の化学名、健康危険性の材料または物質
  • (b)有害な混合物の成分(ingredient)の場合
    • 成分の化学名
    • CASレジストリ番号、またはそのほかの一意の識別子
    • 成分の濃度または濃度範囲
  • (c)材料、物質、混合物の任意の成分を識別する毒性試験の名称等

カナダ保健省(Health Canada)に、営業秘密として免除請求を行い、危険有害性物質情報審査法のもとで認められれば、HARDRA(Hazardous Materials Information Review Act)レジストリ番号が発行され、営業秘密となる情報の開示が免除されます。SDSに、HARDRA(Hazardous Materials Information Review Act)レジストリ番号と登録日を記載することが必要となります。
 なお、この申請には費用が発生し、免除リスト、その決定日および有効日がカナダ官報で公表されます。

1)https://www.osha.gov/pls/oshaweb/owadisp.show_document?p_table=standards&p_id=10099
2)https://www.epa.gov/tsca-cbi/what-include-cbi-substantiations#informationexempt
3)https://www.epa.gov/tsca-cbi/making-cbi-claims-tsca-submissions#howto
4)https://www.osha.gov/pls/oshaweb/owadisp.show_document?p_id=1497&p_table=DIRECTIVES
5)https://www.canada.ca/en/health-canada/services/environmental-workplace-health/occupational-health-safety/workplace-hazardous-materials-information-system/claims-exemption-under-hmira.html
6)http://laws-lois.justice.gc.ca/eng/acts/H-2.7/page-1.html?txthl=confidential#h-3
7)http://laws-lois.justice.gc.ca/eng/acts/H-3/

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

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