ここが知りたいRoHS指令

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電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介

2019.01.25

欧州委員会(EC) 玩具指令附属書IIの改正案をWTOへ通知

欧州委員会(EC)は、2018年12月18日に掲題の玩具指令(2009/48/EC)の附属書II付録Cの改正案1)を世界貿易機関(WTO)に通知しました。
 玩具指令(2009/48/EC)は発がん性、変異原性および生殖毒性として分類される化学物質に対して一定要件を確立しており、指令の附属書II付録Cは36カ月以下の子どもの使用や、子ども用の楽器のように口に入れられることが意図されているその他の玩具に対して特定物質の制限値を規定しています。
 今回の改正案は、対象物質としてホルムアルデヒドを附属書II付録Cに収載する提案です。

ホルムアルデヒド(CAS No.50-00-0)は、CLP規則(EC)No.1272/2008において発がん性区分1Bに分類されている物質ですが、現在は玩具指令の附属書II付録Cには収載されていません。
 TBT通報されている改正案の前文では、玩具用材料に使用されている繊維や合成木材、皮革、紙および水性材料などに含有されるホルムアルデヒドの状況や、含有量限度などに対する専門家グループなどからの助言、勧告などが以下に紹介されています。

ECは「玩具安全に関する専門家グループ(the Expert Group on Toy Safety)」を設立し、アドバイスを求めています。さらに、専門家グループに対しては、その下部組織である「subgroup Working group on Chemical in Toy Safety」(以降、サブグループ)が玩具に使用されている化学物質の安全に関する情報を専門家グループに提供しています。

以下に記載しています専門家グループ(サブグループ)の勧告を考慮して、附属書II付録Cに収載するホルムアルデヒドの玩具材料への移行限度や含有限度は改正案本文第1条に反映されています。

ホルムアルデヒドはポリマーの製造時にモノマーとして使用されます。そして、そのポリマーは玩具に使用されていますので、当該玩具を口にすることにより、子どもたちはホルムアルデヒドを摂取することになります。
 「欧州食品安全局の食品接触の食品添加物、フレーバー、助剤および材料」(AFC)に関する科学パネルでは、WHOで定められているホルムアルデヒドの1日許容摂取量(TDI)が0.15mg/kg体重であることが確認されています。
 サブグループは、2017年9月26日のミーティングにおいて、玩具に使用されているポリマー材料からのホルムアルデヒドの移行限度量や合成木材からのホルムアルデヒドの放出限度量および繊維製、皮革製および紙製玩具材料中のホルムアルデヒドの含有量限度を勧告しています。さらに、2018年3月3日のミーティングにおいては、水性玩具(water-based toy)材料中のホルムアルデヒドの含有量限度の勧告を行っています。

サブグループは1日の口中の唾液を飲み込む量を100mlと仮定して、玩具の安全性EU規格であるEN71-10:2005(玩具の安全性第10部:有機化合物試料作成および抽出)およびEN71-11:2005(玩具の安全性第11部:有機化合物分析方法)のテスト方法に従い、ホルムアルデヒド移行限度をポリマー材料については1.5mg/lとすることを勧告しています。

また、ホルムアルデヒドはパーティクルボード、配向性ストランドボード(OSB)、高密度ファイバーボード(HDF)、中密度ファイバーボード(MDF)、ポリウッドなどの合成樹脂木材製品の製造にも使用されています。
 ホルムアルデヒドレジンには、フェノールホルムアルデヒド(PF)、ウリアホルムアルデヒド(UF)、メラミンホルムアルデヒド(MF)およびポリアセタール(ポリオキシメチレン)(POM)などがあります。
 サブグループは、EN717-1:2014のテストチェンバーメソッドに従い、上記の合成樹脂材料のホルムアルデヒドの放出限度を決定し、0.1ml/m3を勧告しています(ちなみに、改正案において、合成樹脂製玩具中のホルムアルデヒドの放出制限は0.1ml/m3として提案されています)。
 この値は、WHOが確立した室内空気の制限値と一致しています。

さらに、ホルムアルデヒドは合成繊維の製造過程でも使用されるため、合成繊維製玩具にも存在しています。2002年に発行されたOECD報告書によれば、ホルムアルデヒドからのアレルギー皮膚炎に対する最新の閾値濃度(the latest threshold concentration)は、30mg/kgとなっています。
 サブグループはEN ISO14184-1:2011の水分抽出法(the water extraction method)に従い、ホルムアルデヒドの含量制限量を決定し、その値として繊維製玩具材料に対してホルムアルデヒドの含有限度は30mg/kgと勧告しています。
 また、ホルムアルデヒドは皮革の製造過程でも使用されるため、皮革玩具用材料中にも存在し、EN ISO 17726-1:2008に従って、ホルムアルデヒドの含有限度を30mg/kgとして勧告しています。
 紙ふうせん、折り紙、トランプ、カルタなどの紙製玩具材料中のホルムアルデヒドについても、繊維および皮革玩具用材料と同様のばく露であるという考えに基づいて、同じ30mg/kgの含有制限を勧告しています。

ホルムアルデヒドは保存剤としても機能するため、シャボン玉やフェルトチップペンのインク、使用に先立って水と混合される乾燥材料のような玩具用材料中にも存在しています。健康と環境リスクに関する科学委員会(the scientific Committee on Health and Environment risks;SCHER)の意見を考慮し、化粧品のホルムアルデヒドフリーの決定に関して公表されたテスト方法(the EDQM method)に従い、2018年3月3日のミーティングで、水性玩具用材料のホルムアルデヒド含有制限を決定し、10mg/kgを勧告しています。

改正案の本文第1条は、以下のエントリーが追加されています。

第1条
物質名 CAS No. 制限値
ホルムアルデヒド 50-00-0 1.5mg/l(移行限度) ポリマー製玩具用材料中
0.1ml/m3(放出限度) 樹脂結合木材玩具用材料中
30mg/kg(含有限度) 繊維製玩具用材料中
30mg/kg(含有限度) 皮革製玩具用材料中
30mg/kg(含有限度) 紙製玩具用材料中
10mg/kg(含有限度) 水性玩具用材料中

第2条において、加盟国は官報公示後、最遅18カ月までに指令に従って必要な法令を採用、公布することを要求されています。そして、当該法令を官報公示後、18カ月プラス1日後から適用しなければなりません。
 また、加盟国は本指令でカバーされる領域で採択した国内法の法令条文を欧州委員会に通達しなければなりません。

本指令は、欧州官報で発行後、20日目に発効するとなっています。(第3条)
 TBT通報において、提案されている採用日は、2019年第2四半期、施行日は2020年第4四半期となっています。

<参考>
 玩具以外にも、ホルムアルデヒドの合成木材からの放出基準あるいは繊維製品からの溶出量基準等については、各国で定められています。
 参考例として、以下に米国の合成木材の放出基準と一般財団法人ニッセンケン品質評価センターの繊維製品からの溶出基準を掲載いたします。

米国の「Electronic code of Federal Regulations」§770.102)ホルムアルデヒド排出基準(Formaldehyde emission standards)は、ASTM E 1333-14(incorporated by reference, see §770.99)においては、ホルムアルデヒドの基準放出量は以下になっています。

  • (1)ベニヤで作られているハードウッド合板  0.05ppm
  • (2)中密度ファイバーボード         0.11ppm
  • (3)薄型中密度ファイバーボード       0.13ppm
  • (4)パーティクルファイバーボード      0.09ppm

また、一般財団法人ニッセンケン品質評価センターによれば、繊維製品においては「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律施行規則」(厚生省令第34号)によって試験方法と基準値3)が決められています。
 当該基準値は、乳幼児製品(生後24カ月以内)については、おしめ、おしめカバー、よだれ掛け、下着、寝衣、手袋、靴下、中衣、外衣、帽子、寝具に対して、吸光度差A-A0の値が0.05以下、または試料1g当たりのホルムアルデヒドの溶出量が16μg以下としています。
 また、一般用品については、下着、寝衣、手袋および靴下(生後24カ月以内の乳幼児用のものを除く)、足袋ならびにカツラ、ツケマツゲ、ツケヒゲまたは靴下留めに使用される接着剤について試料1g当たりのホルムアルデヒドの溶出量が75μg以下となっています。

(瀧山 森雄)

1)http://ec.europa.eu/growth/tools-databases/tbt/en/search/?tbtaction=search.detail&Country_id=EU&num=635&dspLang=EN&basdatedeb=&basdatefin=&baspays=HUN&basnotifnum=30&basnotifnum2=&bastypepays=&baskeywords=&CFID=787642&CFTOKEN=206469a43052a489-BA2F4196-923A-B42D-1976DD87A2952495
2)https://www.ecfr.gov/cgi-bin/text-idx?SID=640c5047197d9f145161e29807967089&mc=true&node=se40.34.770_110&rgn=div8
3)https://nissenken.or.jp/service/safety_formaldehyde.html

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

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