電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2018.12.07
EU 医療機器規制(Medical Devices Regulation:MDR 2017/745/EU)1)が2017年5月5日の官報(OJ:Official Journal of the European Union)で告示されました。
MDRは、医療機器指令((Medical Devices Directive:MDD 93/42/EEC)2)および能動埋込み医療機器指令(Active Implantable Medical Devices:AIMD 90/385/EEC)3)を置き換えた規則です。発効日は、告示20日後、施行は2020年5月26日です。
MDRは規則(Regulation)ですので、指令と異なり、企業を直接的に拘束します。また、MDRは欧州連合の機能に関する条約(the Treaty on the Functioning of the European Union)の第114条および第168条4項により制定されています。
第114条は、加盟国法の平準化条項で、制定手順は議会と理事会は通常立法手続きにより経済社会評議会と協議し、加盟国の法律、行政措置を平準化(同じ)にする措置です。
通常立法手続きで欧州委員会が提出した法案を、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会が共同で採択します。
第168条4項は、「理事会と議会は、医薬品および医療機器の品質および安全性に関する高い基準を設定する措置」を決定できるとしています。したがって、医療機器については、加盟国の国状により規制の差異を認めずに、EU主導での域内共通規制となります。
MDDからMDRに改定の背景には、医療機器に関する「純度の低い工業用シリコーンを使用して乳房インプラントを製造した」などの問題が起きたことなどで、患者の安全性と医療機器の品質を向上させ、業界の透明性を高め、トレーサビリティを向上させる狙いがあります。
医療機器に関する化学物質管理も厳格になっていますが、どこまでどのように対応すべきかが悩ましいところです。
MDRの要求を整理してみます。
MDRは、10章、123条、附属書17で構成されています。
MDRは、人の健康および安全を高度に守るため、NB<Notified bodies:NB(適合性評価機関)>および当局による適合性評価、上市後の監視等を強化しています。MDRは、日米欧加豪が参加した医療機器規制国際整合化会議(Global Harmonization Task Force:GHTF)およびGHTFの後身である国際医療機器規制当局フォーラム(International Medical Device Regulators Forum:IMDRF)が発行したガイダンスを用いて制定されていますので、国際整合が取られています。
前文第32文節で、製造する医療機器の生産プロセスで上市後の経験などが考慮されることを保証するため、全製造業者は、機器のリスクおよび種類に見合った品質マネジメントシステムおよび上市後調査システムをもつことが望まれています。さらに、機器に関連するリスクを最小限にし、事故の予防のために、リスクマネジメントのシステムや市場安全性是正処置報告(注1)のシステムを確立することが望まれています。
また、MDR は上市前だけでなく、上市後においても上市後調査(注2)、市場調査、固有機器識別子(Unique Device Identification:UDI)、登録要件が含められ規制が強化されています。
このように、MDRはPDCAサイクルを回して、人の健康および安全を高度に守ることを目的としています。
注1:市場安全性是正処置(用語の定義)
製造業者による上市した機器に関する重大な事故のリスクを予防又は低減するための技術的または医学的に実施する是正処置
注2:上市後調査(用語の定義)
是正または予防措置を迅速に適用する必要性を把握するため、体系的な手順を制定して、上市または使用が開始された機器から得られた知見の収集およびレビューをする。同時に、情報を最新に保つために製造業者が他の事業者と協力して行う。
MDRは全123条ですが、本テーマに関連する条項は次項などです。
適用は、発効日から6か月後、または2020年5月26日のいずれか遅い日から適用しなければならない。
適用外は次になります。
医療機器は、意図する目的を考慮して、適用される附属書Iに規定されている一般的安全性および性能の要求事項に適合しなければならない。
情報サービス<指令2015/1535第1条第1項(b)>によりEU域内に設立された自然人または法人に提供される機器は本規則に適合させなければならない。
欧州委員会は、次項の場合に、各加盟国が指定した専門家で構成されるMDCG(the Medical Device Coordination Group:医療機器調整グループ)に助言を求める。
その後、以下について実施規則によって共通仕様を採択します。
MDRは、整合規格(harmonised standards)とCSにより、CEマーキングのための決定768/2008/EC、規則765/2008/ECの手順で、適合性を確保することになります。RoHS(II)指令などのニューアプローチ指令にないCSが順法基準になっています。
なお、MDRの前身のMDDの整合規格にISO13485(EN ISO13485:2016 Medical devices - Quality management systems - Requirements for regulatory purposes(ISO 13485:2016)が指定されています。EN ISO 13485:2016は、ISO9001(2008)に医療機器固有の要求事項を盛りこんだセクター規格です。
ISO9001は2015年版に改版されており、EN ISO 13485:2016と条項番号が異なりますが、仕組みで順法保証をするうえでは、自社マネジメントシステムとの調和での、乖離は生じないと思います。
製造者に対する要求事項は多くありますが、主要事項をまとめると以下になります。
第10条の製造者の義務は、仕組みで保証する必要があり、そのための品質マネジメントシステム要求は「附属書IX(品質マネジメントシステムおよび技術文書の評価に基づく適合性評価」で、明確になっています。
これらをISO13485に調和させます。
MDRの品質システムはCAS(Compliance Assurance System)とも言えます。
附属書Iに、医療機器の一般安全性および性能に関する要求が23項目あります。要旨を紹介します。
内分泌かく乱化学物質の暫定基準に関する解説5)が環境省にあります。
ベネフィット・リスク評価は難しいものがあります。
MDRの化学物質管理は、交流1,000V以下、直流1,500V以下で稼働すればRoHS指令などのニューアプローチ指令が適用され、電気・電子製品でなくてもREACH規則は適用されます。逆には、MDRの化学物質管理は、RoHS(II)指令と同じ考え方で、管理することが望まれていることになります。このことは、RoHS(II)指令での対応の具体化を考えるときにMDRが参考になるとも言えます。
1)https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32017R0745
2)https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/ALL/?uri=celex:31993L0042
3)https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A31990L0385
4)https://ec.europa.eu/health/scientific_committees/emerging/docs/scenihr_o_047.pdf
5)http://www.env.go.jp/chemi/end/endocrine/5column/c-28.html
(松浦 徹也)
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