ここが知りたいRoHS指令

ここが知りたいRoHS指令

電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介

2018.09.07

GCC RoHS規則とUAE RoHS規則(その1)

2018年3月28日にGCC(Gulf Cooperation Council:湾岸協力会議) RoHS規則(Gulf Technical Regulation for Prohibition of Hazardous Substances in Electrical and Electronic Equipment)がWTOに通告1)、2)されました。
 2017年4月15日にGCC 加盟国のUAE RoHS規則(電気および電子機器における制限された有害物質の濃度管理の首長法(2017年度閣僚決定第10号))3)が公布されています。
 UAE RoHS規則はドラフトの段階の概要を、2015年9月のコラムで紹介していますが、GCC RoHS規則案とUAE RoHS 規則について解説します。

1. GCCとは

GCCは、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビアの6カ国で構成され、イラク、イエメン、ヨルダン、モロッコが加盟を希望しています。GCCは、加盟国間の「経済、金融、貿易、通関、観光、立法、行政における共通規制の確立」、「鉱工業、農業、水利用、畜産資源の科学技術的進歩」や「科学研究センターの設立」などを目的としています。

2. GCC RoHS規則の基本要求

GCC RoHS規則は、GCCからGCC加盟国に宛てた技術規則で、The Gulf Cooperation Council Standardization Organization(GSO)が発行します。
 GCC RoHS規則は、電気・電子機器の有害物質使用制限に関するGSO技術規則(ドラフト)CDT-180024としてWTO通告がされました。
 基本的な要求内容は、EU RoHS(II)指令と同じで、電気・電子機器に特定有害物質(10物質群)の含有を制限し、適合マークの貼付が要求されます。
 構成は前文47文節、条項8章33条、附属書7文書からなっています。

第1章 一般的な要件 第20条 電気・電子機器の取扱いリスクの加盟国への提示手続き
第1条 定義 第21条 加盟国のセーフガード手続き
第2条 適用範囲と目的 第22条 情報交換-Gulf緊急情報交換システム
第3条 市場要求と安全目的 第23条 行政上の要求事項への不適合
第4条 自由移動 第6章 GSOの手続き
第2章 経済主体の責任 第24条 改正および適用措置
第5条 製造者の責任 第25条 委員会の手続き
第6条 公式代理人の責任 第7章 行政規定
第7条 輸入者の責任 第26条 報告
第8条 ディストリビューターの責任 第27条 透明性と機密性
第9条 輸入者または販売業者の製造者としての責任 第28条 措置の動機
第3章 電気・電子機器の適合 第29条 罰則
第10条 GCC標準規格への適合の推定 第8章 最終規定
第11条 国際標準規格への適合 第30条 そのほかの関連する技術規制
第12条 GCC標準規格適合品登録 第31条 加盟国の国内法への転換
第13条 輸入品の適合性確認 第32条 旧規則の廃止
第14条 追跡システムの一般原則 第33条 発効日
第4章 適合性評価 附属書I 対象電気・電子機器
第15条 リスク分析 附属書II 第3条で規定する禁止物質および均質材料中の最大許容濃度(重量比)
第16条 適合性評価の実施 附属書III 適用除外用途
第17条 試験報告書 附属書IV 医療機器および制御機器の適用除外用途
第5章 加盟国の義務と権限 附属書V 「型式検査」による電気・電子機器の適合性評価手順
第18条 予防原則 附属書VI 製造者適合宣言
第19条 市場監視の組織化の一般義務 附属書VII 輸入者適合宣言

(1)目的(第2条)
 「このガルフ技術規則(Gulf Technical Regulation)は、人の健康と環境を保護するために電気・電子機器に有害物質の使用を禁止し、環境リサイクルや廃電気・電子機器の適切な処分について規制する。」が目的で、EU RoHS(II)指令と同様の理念となっています

(2)対象製品(第2条 附属書I)
 対象製品は、用語の定義(第1条)で、交流1,000V、直流1,500V以下で稼働する電気・電子機器で、具体的には附属書Iに11製品群に区分し、各製品群の対象製品がリストされています。
 リスト収載製品のみが対象製品と思える記述になっていますが、例えば第1製品群(大型家電)では、“Other large appliances used for refrigeration, conservation and storage of food(そのほかの食品の冷凍、保存、保管に使用される大型機器”“Other large appliances used for cooking and other processing of food(そのほかの調理、食品加工大型機器)” など、特定の製品群にだけ“Other”があります。
 なお、対象製品リストは英語版には収載されていませんが、アラビア語版に英語で記載されています。ほかの部分でも、アラビア語版に英語で記載されている場合は、英語版には記述が割愛されています。

(3)対象外製品
 対象外製品はEU RoHS(II)指令と若干の表現の差異はありますが、軍事用や宇宙機器などa)からi)までの9項目です。EU RoHS(II)指令の除外対象となっている(e)大型固定設備と(k)パイプオルガンが対象外リストに収載されていません。

(4)適用時期
 (i)発効(第3条)
 2017年7月22日から附属書Iの全製品、修理、再使用、更新またはアップグレードに必要な予備部品やケーブル(定格電圧250V以下)を含めて、均質物質単位で、附属書IIの特定有害物質の非含有が要求されています。
 2017年7月22日はすでに経過していますが、アラビア語版では紫色でマーキングされており、承知していることがうかがえます。

(ii)DEHP、BBP、DBPおよびDIBPの含有制限(附属書II)
 2021年7月22日から医療機器、産業監視および制御機器を含めて適用されます。
 2019年7月22日以前に上市された電気・電子機器、および21年7月22日より前に上市された医療機器、産業監視および制御機器の修理、再使用、機能の更新または容量の更新のためのケーブルまたは予備部品は適用されません。
 医療機器、産業監視および制御機器以外の電気・電子機器は2019年7月22日となり、EU RoHS(II)指令と同じ内容になります。

(5)用途の除外
 附属書IIIにすべての製品群を対象とした用途の除外が示され、附属書IVに医療機器、産業監視および制御機器を対象とした用途の除外が示されています。
 除外内容は、EU RoHS(II)指令の除外より細かで期限も細やかに決めています。
 附属書IIIは26項目でEU RoHS(II)指令より項目が少ないのですが、記載されている項目は同じ内容です。
 附属書IVは、43項目で、最初の20項目はEU RoHS(II)指令の附属書IVと同じですが、21項目以降はGCC RoHS規則独自の内容です。
 例えば、
 26. 継続的に通常の運転および保管条件が-20℃以下の温度での用途の鉛: (a)プリント回路基板上のはんだ (b)電気・電子部品の終端コーティングおよびプリント回路板のコーティングなど
 この対象は医療機器、産業監視および制御機器だけとなりますが、疑念が残ります。

(6)製造者の義務(第5条)
 製造者の義務の概要は以下に示しますが、輸入者にも一部適用されます。

  1. 製造者は、本規則の要求事項に適合しない電気・電子機器を上市してはならない。
  2. 電気・電子機器を上市するとき、製造業者は、電気・電子機器の設計および製造が第15条(3)の基本要件に従っていることを確認し、必要な証拠を提供しなければならない。
  3. 製造者は、第16条に従ってリスクを分析し、必要な証拠を提供しなければならない。
  4. 製造者は、第16条に従って適合性評価を実施し、必要な証拠を提供しなければならない。
  5. 指定された要件を満たす電気・電子機器の適合性が確認された場合は、製造者は第13条第1項に規定する適合性を有する製造者宣言を発行しなければならない。
  6. この記録は、電気・電子機器の上市後10年間維持するものとする。
  7. 製造者は、規格機関の適合追跡システムを順守し、第14条に従って必要なすべての情報を提供しなければならない。
  8. 製造者は、連続生産の適合性の継続性を確保するための手順が適用されることを保証しなければならない。 電気・電子機器は、設計または特性の変更、GCC標準仕様または技術仕様の変更を考慮に入れて適合性を確認する。 GCC標準仕様またはISO標準に準拠し管理システムで管理する。
  9. 製造者は、必要に応じて、電気・電子機器のサンプルで、消費者の健康と安全および環境を保護するためにリスク評価する。 電気・電子機器の販売、苦情の調査、記録の保管、適合していない電気・電子機器、電話による苦情と製造者の対応をディストリビューターに通知しなければならない。
  10. 製造者は、すべての電気・電子機器に型式番号が記載されていることを確認しなければならない
    • バッチ番号、シリアル番号、またはこれらのデバイスおよび機器の定義に関するそのほかの標識
    • この情報は、電気・電子機器または電気機器の包装にも記載する必要がある。
    • 登録商標は、電気・電子機器に表示する。
  11. 製造者は、登録された商号と住所、連絡を取ることができる住所を明記しなければならない。 電気・電子機器のすべての必要な情報は不可能な場合を除き、電気・電子機器または電気・電子機器の包装、または付随する資料にアラビア語または英語またはその両方で表示する。
  12. 製造者は、電気・電子機器にアラビア語の安全に関する指示書が添付されていることを確認する。指示書はアラビア語で提供する必要がある。
  13. 製造者は電気・電子機器が、GCC技術規則に適合しない場合または不適合が発生するリスクがある場合は、リコールしなくてはならない。
  14. さらに、直ちに上市国の管轄国家当局に次を通知しなければならない。
    • 電気・電子機器名、それぞれの上市国での不適合数
    • 不適合と是正措置に関する詳細
  15. 製造者は、加盟国の管轄国内当局の要請があれば、アラビア語での電気・電子機器の適合性を検証するために必要な情報および文書を提出する。アラビア語での提供が可能でない場合は英語で提供することができる。
  16. 製造者は、当局が要求する場合は常に、加盟国の管轄国家当局と協力しなければならない。

(7)そのほかの主要規制
 そのほか、次に示しますように、EU RoHS(II)指令などのEUのニューアプローチ指令と同じ考え方の規制内容になっています。

(i)GCC標準規格への適合の推定(第10条)
 第3条の要件を満たしていることが証明された電気・電子機器は、本規則の要件に適合するGCC標準規格に含まれる試験、測定または評価の方法を用いて検討されるものとする。 有効なGCC標準のリストについては、GSOのWebサイト4)を参照する。

(ii)リスク分析(第15条)
 製造者は、電気・電子機器を上市する前に、電気・電子機器の製造に使用される材料に起因するリスク、ならびに危険へのばく露確率の評価をしなければならない。

(iii)適合性評価の実施(第16条)
 製造者は、附属書Vに従って適合性評価を実施し、電気・電子機器を上市する前に、必要な証拠を提供しなければならない

(iv)検査(第17条)
 附属書Vの適合性評価手順に記載されている試験の報告書は、ILAC(International Laboratory Accreditation Cooperation:国際試験所認定協力機構)認定試験所やIECEE (IEC電気機器安全規格適合性試験制度)のCB(Certification Body)スキームによって発行されなければならない。
 製造者の内部ラボを使用し検査したテストレポートを構成し発行するためには、試験所は製造者から独立し、試験する電気・電子機器の設計、製造、供給、設置、使用または保守に関与してはならない。
 製造者は、本条の要求事項に関する試験報告書を発行した試験所に関する情報を、要請に応じてGCCおよび市場調査機関に提供しなければならない。

次回は、関連する「GCCの適合性評価の概要」と「GCC RoHSとUAE RoHSの関係」について、解説します。

(松浦徹也)

1)http://ec.europa.eu/growth/tools-databases/tbt/nview.cfm?p=ARE_407_EN
2)https://www.gso.org.sa/wp-content/uploads/2017/11/Draft-of-GSO-Technical-Regulation-on-the-Restriction-of-the-use-of-Hazardous-Substances-in-electrical-and-electronic-equipment-CDT-180024.pdf
3)http://www.esma.gov.ae/Documents/Restriction%20on%20Hazardous%20Substances.pdf
4)https://www.gso.org.sa/store/?lang=en

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

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