ここが知りたいRoHS指令

ここが知りたいRoHS指令

電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介

2018.04.27

RoHS指令に関する新たな調査プロジェクト

RoHS指令については、2019年7月に4種のフタル酸エステル類の含有制限が開始されます。本コラムでもフタル酸エステル類に関する各種情報を紹介しており、多くの企業でもその対応を進められているところかと思います。
 2019年に追加されるフタル酸エステル類については、2012年に調査プロジェクトが開始され、優先的に評価すべき物質などを含む調査報告書や制限物質の特定・評価手法に関するマニュアル等1)や4種のフタル酸エステル類などの評価結果がとりまとめられました。その結果、2015年にRoHS指令附属書IIが改正されました。
 今回は、フタル酸エステル類に続く、次なる制限対象物質に関する新たな調査プロジェクト(パック15)が開始されましたので、その概要をご紹介します。

1. 調査プロジェクト(パック15)の概要

欧州委員会(EC)の委託を受けたOeko-Onstitutは2018年2月に新たな調査プロジェクト(パック15)がスタートしたことを発表2)しました。
 パック15では、大きく次の2つの内容を調査・検討することになっています。

  • パート1:制限対象物質
    制限対象物質について、既存の特定・評価手法を見直すとともに、見直し後の手法によって、将来的に制限対象物質とする可能性がある数物質の評価を行う。
  • パート2:適用除外用途
    適用除外用途について、適用除外用途の評価に関する手法を確立し、1種の新たな適用除外用途申請について評価を行う。

なお、パック15は2017年12月末から開始されており、18か月の調査期間の間に少なくとも3回のステークホルダーからの意見募集や3段階の中間報告などを経て、2019年6月末に完了予定となっています。

2. パート1 制限対象物質

RoHS指令第6条(1)では、定期的にECまたは加盟国の提案を受けて制限対象物質の見直しを行うことが定められています。2011年のRoHS指令の改正から約4年後の2015年にRoHS指令附属書IIの初回改正が実施されたこと、また加盟国から制限対象物質の追加に関する提案が2017年11月までになかったことを受けて、EC主導のもと、改めて制限対象物質の検討を開始することとしました。
 パック15では、2013年に作成された制限対象物質に関する既存の特定・評価手法について、RoHS指令の前文(10)や第6条(1)(2)の制限対象物質の見直しに関する基準を踏まえて、改めて手法の見直しが行われます。
 過去の調査報告書では、制限対象物質の特定・評価にあたって、電気電子製品の含有物質情報や廃電気電子製品の廃棄処理に関する情報の不足や、電気電子製品に不可欠なインジウムなどのレアメタルの扱い、リサイクル容易性、代替物質の利用可能性など評価手法について多くの課題が指摘されていたことから、今回の評価手法の見直しによって、改めてこれら課題についても検討されるものと想定されます。
 また、見直された評価手法を実践するために、2013年の調査報告書で制限対象物質の候補として優先順位付けされていた物質の中から次の7物質群が評価されます。

物質名 CAS番号
三酸化二アンチモン 1309-64-4
2,2'-ビス(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジブロモフェニル)プロパン(TBBP-A) 79-94-7
リン化インジウム 22398-80-7
中鎖塩素化パラフィン(MCCPs) 85535-85-9
ベリリウムおよびその化合物
硫酸ニッケル(II)およびスルファミン酸ニッケル 7786-81-4、13770-89-3
ジクロロコバルト(II)、硫酸コバルト(II) 7646-79-9、10124-43-3

これら7物質群に関しては、電気電子製品中の用途や使用量、廃棄時の排出可能性、代替可能性、含有制限による社会経済的影響等について、パック15の最初の意見募集が4月20日に開始されています。

なお、例えば「ベリリウムおよびその化合物」は、日本では労働安全衛生法の製造許可物質(含有濃度1%超の場合)や特化則第1類物質(含有濃度1%超、ただし合金は3%超)、化管法の特定第1種化学物質に指定されています

3. パート2 適用除外用途

パック15では、適用除外用途についても、RoHS指令第5条(1)の基準に基づき、既存の適用除外用途の更新や新たな適用除外用途の申請があった場合の評価方法の見直しを行ったうえで、見直した評価方法に基づき、2017年9月に受領したRoHS指令附属書IIIへの追加する新たな適用除外用途申請である「LED半導体チップで使用される発光材料中のカドミウム」について評価が実施されます。

新たな制限対象物質の追加については、検討が始まったばかりであり、最終的な結論まではまだ時間がかかります。また電気電子製品のグローバルなサプライチェーンを考えると、仮に追加が決定し、正式に官報で公表されたとしても、一定の猶予期間が設定されるものと想定されます。また、今回評価対象となっている7種の物質群については、CAS番号が特定されている物質はもとより、複数のベリリウム化合物についても、現在導入が進められている情報伝達ツール「chemSHERPA」の管理対象物質に収載されています。
 当面はフタル酸エステル類やchemSHERPAの導入など、直近の課題に確実に対応することが最優先ですが、パック15の進展に応じて、追加候補である上記7物質群について、情報伝達ツールなどで収集した含有化学物質情報を確認しておくことも必要であると考えます。

(井上 晋一)

1)RoHS指令制限対象物質の調査報告書
2)Oeko-Onstitut RoHS関連調査プロジェクト

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

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