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17.06.16

「水銀に関する水俣条約」の発効とRoHS指令への影響

「水銀に関する水俣条約(2013年10月10日)」1)の締約国数が日本を含めて50か国2)に達し、規定の発効要件が満たされ、50番目の批准書、承認書、加入書の寄託がされた2017年5月18日の90日後の2017年8月16日に発効することになりました3)
 「水俣条約」は、前文、条項35、附属書A~Eで構成されています。
 日本は、「水俣条約」を受けて、国内法として「水銀による環境の汚染の防止に関する法律4)」が、平成27年6月19日に公布されました。
 水俣条約の発効によりRoHS指令への影響を確認してみます。

1. 水俣条約による水銀添加製品の禁止

水俣条約の義務では、第4条の水銀添加製品の製造制限が企業に大きな影響があります。
「第4条(水銀添加製品)締約国は、附属書Aにおいて適用除外を定める場合又は第6条の規定に従って当該締約国が適用除外を登録した場合を除くほか、同附属書第一部に掲げる水銀添加製品について定める段階的廃止期限の後は、適当な措置をとることにより、当該水銀添加製品の製造、輸入又は輸出を許可しないものとする。」
 附属書A5)には、製造・輸出入が禁止される水銀添加製品と禁止時期が定められています。

(1)対象除外製品
 附属書Aによる適用除外は次です。

  • (a)市民の保護及び軍事的用途に不可欠な製品
  • (b)研究、計測器の校正及び参照の標準としての使用を目的とする製品
  • (c)水銀を含まない実現可能な代替製品によって交換することができない場合におけるスイッチ及び継電器(リレー)、電子ディスプレイ用の冷陰極蛍光ランプ(冷陰極管 Cold Cathode Fluorescent Lamp)及び外部電極蛍光ランプ(EEFL)並びに計測器
  • (d)伝統的な慣行又は宗教上の実践において使用される製品
  • (e)保存剤としてのチメロサールを含むワクチン

(2)対象製品と適用時期
 対象製品群は基準や要件はありますが次の製品が制限されます。

  • (a)電池
  • (b)スイッチ、リレー
  • (c)一般照明用コンパクト蛍光ランプ(CFLs)
  • (d)一般照明用直管蛍光ランプ(LFLs)
  • (e)一般照明用高圧水銀蒸気ランプ(HPMV)
  • (f)電子ディスプレー用冷陰極蛍光ランプ(CCFL)及び外部電極蛍光ランプ(EEFL)
  • (g)化粧品
  • (h)非電気式計測器

注:CFL Compact Fluorescent Light 小型蛍光灯で白熱電球の形状がある
LFL Linear fluorescent lamps 一般照明用直管蛍光ランプ
HPMV High pressure mercury vapour lamps 一般照明用の高圧水銀ランプ
     メタルハライドランプや高圧ナトリウムランプなどは含みません。
CCFL Cold Cathode Fluorescent Lamp 冷陰極管という細い蛍光管
EEFL External Electrode Fluorescent Lamp 外部電極蛍光ランプ

水銀ランプについては、一般社団法人日本照明工業会(JLMA)が詳しく解説6)しています。
 適用時期は2020年ですが、第6条により、この期限は、締結国の要請により、最大10年(2030年)まで、延長できます。
 なお、適用時期は製造、輸入の制限日で、それ以前から使用している蛍光灯などは継続使用できます。

2. 規制の前倒しと深堀り

国内法の「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」の施行令7)(政令第378号)で、規制の前倒し(水俣条約における廃止期限より早い時期の廃止)、深掘り(条約で求められる水銀含有量基準よりさらに低い含有量基準の設定)を定めています。

(1)深堀の例
 酸化水銀電池(ボタン電池)
 水俣条約:電池(水銀含有量2%未満のボタン形亜鉛酸化銀電池及び水銀含有量2%未満のボタン形空気亜鉛電池を除く。)
 施行令:電池の除外

  • イ:酸化銀電池(水銀の含有量が全重量の1%未満であって、ボタン電池であるものに限る。)
  • ロ:空気亜鉛電池(水銀の含有量が全重量の2%未満であって、ボタン電池であるものに限る。)

酸化水銀電池について、水俣条約では水銀含有量2%未満ですが、国内法では1%未満と厳しく制限(深堀)をしています。

(2)前倒しの例
 蛍光ランプは、水俣条約では2020年が期限ですが、国内法では2017年末に前倒しされています。
 産業界(事業者及び業界団体)にヒアリング調査を実施し、国内製造・市場流通の実態、水銀フリー代替品の有無や今後の代替可能性、適用除外の必要性等について聴取して決定したとしています。
 電池も2017年末に水銀使用製品が禁止されますが、すでに国内では概ね対応が済んでいるが、周知期間を考慮して決めたとしています。

3. EU RoHS指令などとの関係

水俣条約にはEU加盟国だけでなく、EUとしても2017年5月18日に“Approval(承認)”しています。承認と同時に、2017年5月24日のOfficial Journalで「5月17日付水銀規則(EU)No 2017/8528)」を従前の規則1102/2008に替えて公布しました。
 「水銀規則」では、水銀ランプの「深堀り」は行っていませんが、期限は2018年12月31日とする「前倒し」がされています。
 「深堀り」については、「加盟国は、必要に応じて、TFEU(Treaty on the Functioning of the European Union:EUの機能に関する条約)に従って、本規則に定める要件よりも厳しい要件を適用することができる。」としています。
 水俣条約の「水銀添加製品」とは、第2条(定義)で「意図的に添加された水銀又は水銀化合物を含む製品又は製品の部品をいう」とされています。EU RoHS指令の対象の構成部品ともなり、「水銀規則」では、電子ディスプレイおよび測定装置用のスイッチ、リレー、CCFL及びEEFLで、大型装置の部品や水銀フリーの交換用コーポネントが無い場合は、RoHS指令、ELV指令に従うとされています。
 RoHS指令の附属書IIIの除外の改定がPack99)で提案されています。2017年5月末時点ではPack9の結論は告示されていませんが、水銀ランプの除外があります。規制の前倒しと深堀りの確認をしてみます。

Pack9の最終報告書でも水俣条約とRoHS指令の除外の関連について言及しています。

水俣条約附属書A/水銀規則による制限 RoHS指令 附属書III案(Pack9)
灯口当たりの水銀含有量が5mgを超える30ワット以下の一般的な照明用のコンパクト型蛍光ランプ(CFLs) 1(a)
30W未満の一般照明用途 2.5mg
1(b)
30W以上50W未満 3.5mg
次のものに該当する一般的な照明用の直管蛍光ランプ(LFLs)
  • (a)電球当たりの水銀含有量が5mgを超える60ワット未満の三波長型蛍光体を使用したもの
  • (b)電球当たりの水銀含有量が10mgを超える40ワット以下のハロリン酸系蛍光体を使用したもの
2(a)
一般照明用途の直管型三波長蛍光ランプ
(1)管径9mm未満 4mg
(2)管径9mm以上17mm以下 3mg
(3)管径17mm超えて28mm以下 3.5mg
(4)管径28mm超え 3.5mg
(5)長寿命(25,000時間以上)型 5mg
一般的な照明用の高圧水銀蒸気ランプ(HPMV) 4(d)
Pack9では附属書IIIから削除(除外を認めない)
次のものに該当する電子ディスプレイ用の冷陰極蛍光ランプ(CCFL)と外部電極蛍光ランプ(EEFL)
  • (a)電球当たりの水銀含有量が3.5mgを超え、及び長さが500mm以下のもの
  • (b)電球当たりの水銀含有量が5mgを超え、及び長さが500mm超1500mm以下のもの
  • (c)電球当たりの水銀含有量が13mgを超え、及び長さが1500mm超のもの
3(a-c)
長さ 500mm以下 3.5mg
長さ 500mm超え1500mm以下 5mg
長さ 1500mm超え 13mg
但し
第5製品群 2021年7月21日まで
第8、9製品群 2021年7月21日まで
体外診断用医療機器(in-vitro) 2023年7月21日まで
第9製品群(産業用)2024年7月21日まで
4. EU以外のRoHS法の水銀ランプの除外要件

(1)中国RoHS管理規則 用途の除外案10)
 一般用途のCCFL、EEFLに関する除外規定はなく、特殊用途の500mm以下及び500mm超え1500mm以下は、無制限(无限值要求)となっています。
 中国は一般的に、国際標準が確定すれば、整合させるとしていますので、水銀関係も現状は案の段階ですので、国際調和されると思います。

(2)インドRoHS法(E-Waste(Management)Rules, 2016)11)
 EU RoHS指令に準拠した内容になっています。

  • 1(a)一般照明用30W未満のCCFL 2.5mg
  • 2(a)一般照明用途の直管型三波長蛍光ランプ
    • <1>管径9mm未満 4mg
    • <2>管径9mm以上17mm以下 3mg
    • <3>管径17mm超えて28mm以下 3.5mg
    • <4>管径28mm超え 3.5mg
    • <5>長寿命(25,000時間以上)型 5mg
  • 4(d)高圧水銀蒸気ランプ(HPMV)
    条件なしで除外を認めています。

(3)ベトナム RoHS法(No30/2011/TT-BCT)12)

  • 1.1 一般照明用30W未満の電球型蛍光ランプ  2012年12月31日以降 2.5mg
  • 2  一般照明用途の直管型三波長蛍光ランプ 2011年12月31日以降
    • <1>管径9mm未満 4mg
    • <2>管径9mm以上17mm以下 3mg
    • <3>管径17mm超えて28mm以下 3.5mg
    • <4>管径28mm超え 3.5mg
    • <5>長寿命(25,000時間以上)型 5mg
  • 4.4 高圧水銀蒸気ランプ(HPMV)
    2015年4月13日以降は除外を認めない

(4)タイ RoHS(工業規格 MorOorKor 2368-255113)
 2008年の規格ですので、水俣条約は反映されていません。

  1. 小型蛍光灯  5mg
  2. 直管蛍光灯
    (1)ハロリン酸塩 10mg
    (2)通常寿命管三リン酸塩 5mg
    (3)長寿命管三リン酸塩 8mg
  3. その他のランプ

(5)EEU(ユーラシア経済同盟)RoHS法
  一般照明用30W未満のCCFL 2.5mg
  一般照明用途の直管型三波長蛍光ランプ

  • <1>管径9mm未満 4mg
  • <2>管径9mm以上17mm以下 3mg
  • <3>管径17mm超えて28mm以下 3.5mg
  • <4>管径28mm超え 3.5mg
  • <5>長寿命(25,000時間以上)型 5mg

  高圧水銀ランプ(HPMV) 条件なしで除外
 EEU RoHS法は2017年5月19日のコラムをご参照ください。

(6)シンガポール RoHS案14)
 蛍光灯は対象製品に含まれていません。

水銀ランプの規制は、各国で「深堀と前倒し」がされていますが、HPMVを除いて調和されているようです。

(松浦 徹也)

1)http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000070111.pdf
2)http://www.mercuryconvention.org/Countries/tabid/3428/language/en-US/Default.aspx
3)http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/int/mercury.html
4)http://www.env.go.jp/chemi/tmms/law/meppl_01_houritu.pdf
5)http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/int/annexa.pdf
6)http://www.jlma.or.jp/kankyo/suigin/index.htm
7)http://www.env.go.jp/chemi/tmms/law/meppl_03_sekourei.pdf
8)http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32017R0852&from=EN
9)https://circabc.europa.eu/sd/a/eda9d68b-6ac9-4fb9-8667-5e561d8c957e/RoHS-Pack_9_Final_Full_report_Lamps_Alloys_Solders_June2016.pdf
10)http://www.cnca.gov.cn/cnca/zwxx/ggxx/images/2011/08/29/
140F191E56C03123653A745F46D46D2D.doc

11)http://www.moef.gov.in/sites/default/files/EWM%20Rules%202016%20english%2023.03.2016.pdf
12)https://thuvienphapluat.vn/van-ban/Thuong-mai/Thong-tu-30-2011-TT-BCT-Quy-dinh-tam-thoi-gioi-han-ham-luong-cho-phep-hoa-chat-127827.aspx
13)http://irrigation.rid.go.th/rid5/download/CDNum1-2552%20(E)/fulltext/TIS2368-2551.pdf
14)https://docs.wto.org/dol2fe/Pages/FE_Search/FE_S_S009-DP.aspx?language=E&
CatalogueIdList=134224,133949,133703,133513,133265,133180,133120,133051,131801,130724&
CurrentCatalogueIdIndex=5&FullTextSearch

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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の 見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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