電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2012.09.14
EU RoHS(II)の施行日が近づき、FAQ案が出されてRoHS(II)も現実になってきました。FAQ案のなかでの論点である「大型」「大型工具」「大型装置」の解釈と「CEマーキング」対応について本コラムで解説しました。
最近は、RoHS(II)の「ケーブル」に関する質問が多く寄せられてきています。FAQ案の中の「ケーブル」に関する論点を整理してみます。
ケーブルは、第3条1項の電気電子機器(EEE)の定義に該当するか、または第3条5項のケーブルの定義(250v未満で機器に電源コンセントとの接続、機能拡張や2つ以上の機器の接続のための機能)に該当すれば、RoHS(II)の規制の対象になります。ケーブルは、「適切に機能を発揮するために電流と電磁界に依存しており、そのような電流と電磁界を移送するために使用」されますので、ほとんどのタイプのケーブルはこの定義に該当すると思われます。
ケーブルは次の2分類があります。
内部ケーブルはEEEの内部の個々のコンポーネントを接続しますが、それ自体が第3条5項の「ケーブル」に該当しません。
内部ケーブルは、EEEに本来的に備わるものとされています。そのEEEがRoHS(II)の適用範囲であれば、他の電子部品と同様に特定化学物質の非含有義務があります。
外部ケーブルは第3条5項の定義に合致すれば適用されます。外部ケーブルは「EEEと一体となっている場合」「単体で販売される場合」「コネクターが付いていない場合」があり、「RoHS(II)の適用範囲になる場合」「CEマーキングの義務がある場合」や「適用時期の違い」などがあります。
(1)特殊ケーブル
SCARTケーブル、HDMIケーブル、ファイバー・ケーブル、ネットワークケーブルなどの特殊なケーブルは、例えば音声、データ、映像などを移送するのに使用されます。これらは、すでにRoHS(I)の規制の対象になっており、したがってRoHS(II) の規制の対象になります。
これらケーブルは、カテゴリー3または4の製品群になります。
(2)EEEと一緒に上市される外部ケーブルの扱い
i.基本
ケーブルの中には、EEEと一緒に販売されるか、EEEに接続されるものもあります。もしケーブルがEEEに接続されていれば、このケーブルは内部ケーブルと同様に、EEEと同じ要件を満たさなければなりません。したがって、EEEがRoHS(II)の規制の対象になっている場合、これに接続されているケーブルも同じく対象になります。
ii.移行期間中のEEEと一緒に上市される外部ケーブル
EEEがRoHS(II)の規制の対象になるが、RoHS(I)の規制の対象ではなく移行期間中にある場合、同じ要件がケーブルにも適用されます。
iii.RoHS(I)およびRoHS(II)の規制の対象にもならないEEEと一緒に上市される外部ケーブル
EEEが規制の対象外であればケーブルにも適用されますので、ケーブルも規制の対象外です。
要約しますと、ケーブルがEEEと一緒に販売されるか、EEEに接続されている場合には、RoHS(II)を順守することを求められている場合は、ケーブル自体もRoHS(II)を順守しなければなりません。
ただ、ケーブルがEEEと一緒に上市された場合は、そのケーブルがあたかもEEEに接続されているかのように、EEEと同じ要件と同じ方法で従わなければなりません。
(3)単独の製品として個別に上市される外部ケーブルの扱い
ケーブルを単独または単体のEEE として上市する場合は適合宣言を行ない、CEマークをつける必要があります。
i.コネクターが両端についている外部ケーブル
両端にコネクターがついている延長コード、ケーブル・ローラー、ケーブルつきのマルチタップなどの「既製の」ケーブルは電流の移送のための単一または多様な用途のケーブルとなりカテゴリー2の製品群になります。USBケーブルのような比較的単純なケーブルもカテゴリー2の製品群になります。
ii.コネクターがどちらか一端または両端ともについていない外部ケーブル
EEEのコンポーネントやパーツは、通常はRoHS(II)の直接規制の対象にはなりません。コネクターがどちらか一端または両端ともについていない外部ケーブルは、例えば、照明器具と接続するために容易に使用することができます。
このため、第3条5項のケーブルの定義に該当し、第4条1項の規制にかかわることになります。したがって、コネクターがどちらか一端または両端ともについていないケーブルは、RoHS(II)の規制の対象になり、カテゴリー11の製品群になります。
なお、個別に上市されるケーブルで、定格電圧が250ボルトを超えるものは、RoHS(II)の規制の対象にはなりません。
適用除外は、RoHS(II)の附属書に示されており、ケーブルも適用されます。
RoHS(II)の適用除外の最大有効期間 | ||||
---|---|---|---|---|
適用除外 | 附属書IIIによる適用除外 | 附属書IVによる適用除外 | ||
EEEのカテゴリー | 期間終了日が 特定されている |
期間終了日が 特定されていない |
期間終了日が 特定されている |
期間終了日が 特定されていない |
カテゴリー1から7までと10 | 2011.7.22から 特定の日まで |
2011.7.22から2016.7.21まで | 対象外 | 対象外 |
カテゴリー8と9 一般 | 2014.7.22から 特定の日まで |
2014.7.22から2021.7.21まで | 2014.7.22から 特定の日まで |
2014.7.22から2021.7.21まで |
カテゴリー8 体外診断用 | 2016.7.22から 特定の日まで |
2016.7.22から2023.7.21まで | 2016.7.22から 特定の日まで |
2016.7.22から2023.7.21まで |
カテゴリー9 工業用 | 2017.7.22から 特定の日まで |
2017.7.22から2024.7.21まで | 2017.7.22から 特定の日まで |
2017.7.22から2024.7.21まで |
中国RoHS管理規則は源流管理であり、最終製品だけでなくサプライチェーン全体を対象としています。対象製品は「分類注釈」として発行されていますが、このなかに「電子電線ケーブル」が入っています。
自発認証実施規則の製品目録の電子コーポーネント製品群に「電子電線ケーブル」が収載されています。中国RoHS管理規則は源流管理ですので、内部ケーブル、外部ケーブルの両方に適用され、含有マークまたは非含有マークまたはRoHSマークの対象となります。
(松浦 徹也)
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