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中堅・中小企業の改革物語 中堅・中小企業が、激動の時代を生き抜く為のヒントをコンサルタントの視点からお伝えします。


第18回 中堅・中小企業の幹部研修

最近の研修事情

一時の景気の冷え込みで低調だった社員研修も、今需要は増加傾向にあるようです。以前は研修を受けても実務に役に立たないとか、忙しくて一日潰していられないという社員の声もあり、企業の人事部も研修に遠慮気味でした。

ところが最近の若い社員からは「もっと研修をしてほしい」といった要望や、昔あんなに嫌がっていたベテランさえも「もう少し若手に教育したほうが」という声が上がっています。嬉しい反面、喜んでいられないのは、上司に余裕がなくて部下指導の機会が少ない不満の表れかも知れませんし、上司にとっても指導不足を研修に転嫁する嫌いがあるのかも知れません。

しかしながら研修に期待する傾向については結構なことであり、確かにいやいや参加している受講者も減ったような気がします。

また最近の研修は、研修講師のみなさんの競争と努力によって、楽しい雰囲気のものがずいぶんと増えてきました。講師の退屈させない頻繁な問いかけ、自己紹介から始まる笑顔の絶えないグループ討議、演出抜群のプレゼン(寸劇もあり)等々、研修の場は劇場化された空間であり、講師も参加者もその場のキャストとして演じる流れができあがっています。

終了後はみなさん演じ切った満足感のある表情をしています。もちろん技術研修などでは昔ながらの堅いものも健在ですが、全体的には柔らかい流れにあると思います。

カウンセリング型研修

さて、そういうことでマネジャー研修に戻りますが、社内研修では業務上の問題解決を図る、アウトプットにつながる研修が喜ばれます。受講者は個別にテーマを設定して、数カ月間にわたり議論と実践ワークを繰り返しながら課題の解決を図ります。一人ひとりテーマは違うため、進め方は個別の個人指導となります。

全体の流れの中では集合教育や発表も行われますが、大半は講師と参加者が一対一で向き合う家庭教師型の形です。2時間程度の面談を月1~2回実施することが通常ですが、大手企業の場合は、人数の関係で一対一とはいかず、数人が集まっての勉強会方式を取ることもあります。

この形式は劇場型ではなく、カウンセリング型になります。テーマ決めから始まり、分析手法による現状把握、問題解決に向けて様々なフレームワークの活用と実施プランづくり、日常業務の中での実践トライになります。講師とはトライの結果を踏まえながら作戦会議を重ねていきます。一対一ですので作戦会議は密談的になります。

テクニカルな議論の後の実践検討では、「このように説明すると相手は乗ってきた。」「価格提示はここから始めよう。」「専務に根回しした方がいいかな。」など、我流のゲーム理論を交えながら話は進んでいきます。当然講師との人間関係も親密になりますので、社内における難しい状況や人間関係の問題、愚痴や不満の噴出、意見が衝突することもあります。回数が進むにつれて、悩みを聞く時間比率が大きくなっていきます。

事例

ではここで少し事例をご紹介します。ある中堅化学品メーカーで行ったマネジャー研修での参加者の事例です。最初に担当役員から渡された参加者のプロフィールをご覧いただきます。

営業部課長 勤続18年 43才

プロフィール

プロパーで一貫して営業畑を歩む。熱血タイプでアフターファイブも仕事絡みで部下に説教をして、やや疎まれている部分もある。かといって、ざっくばらんなところもあり、顧客からは親近感をもたれている。事務処理がルーズなアナログ人問。知識はある。

目つきの鋭い強面の課長でした。テーマは新製品の拡販。新製品は売上成績につながりづらく営業マンが嫌がる傾向にあり、いつも活動が難航しがちなので、組織的に開拓活動することを課題に挑戦。男気から自ら志願。

いつもなら部下一喝で突っ走るところを、自ら苦手な販促資料を作り、拡販ルートの調査分析と顧客セグメント毎の戦略を立て、関係者を説得しながら、試行錯誤を重ねて受注につなげていきました。

本人はどうすれば恫喝と説教ではなく部下や関係者が動いてくれるのか、毎回面談の半分はその話題でした。しきりに悩んでいましたが、協力への感謝の気持ちを伝える効果を会得した模様。強面が緩んで評判も上々ということでした。

生産部課長 勤続15年 51才

プロフィール

一段上の管理職を期待したいが、単刀直入な物言いで、いい意味でも悪い意味でも職人気質で煙たがられる。気分屋で周囲に余計な気を使わさせ、高圧的に接して部下を萎縮させたりもする。この点は本人も認識しているが、本人曰く「器が小さい」と言ってお茶を濁している。過去同僚と折り合いが悪く、相手が辞めたケースが二例あり。

いかにも工場の主のような雰囲気。倉庫から溢れんばかりの製品在庫の削減に取り組んで頂きました。過去の受注データから理論在庫を計算式で割り出し、過剰在庫分について生産計画を調整しながら削減。生産の平準化も進める。

最初は少し難しいかと思いましたが、実は理系学部出身のプライドが芽生え、生産管理システムのロジックとデータを自ら修正して、ほぼ放置されていた生販在管理を生き返らせました。他の受講者や社長からも見直され、本人もすっきりした様子です。態度まで修正できたのかは不明ですが、実力を認められるチャンスは大切です。

まとめ

中堅・中小企業の人材問題は簡単ではありませんが、研修により育成を期待する部分も決して少なくありません。管理者の経営感覚を磨く、マネジメント能力を向上させるとなると、知識とマネジメント手法を修得しながら、実践でトライする流れをつくるひと工夫が必要になるようです。

懸念するのは日常にはそのような流れが意外と少ないのかもしれません。トップが指揮をして、ミドルはアドリブを効かせていくような、共鳴しあうマネジメントにつながるきっかけになれば幸いです。

<本稿は筆者の見解に基づくものです>

筆者

亀ヶ森 昌之氏

亀ヶ森 昌之氏

株式会社日本能率協会コンサルティング
プロダクションデザイン革新センター長 シニアコンサルタント

企業マネジメントとオペレーション改革を中心にコンサルティングを行っている。中堅・中小企業における管理者育成にも力を入れており、ワークショップスタイルによる企業内研修の実績多数。著書「新社会人のための経営企画のしごと」(JMAM)

出典:NEC運営サイト「N-town」<中堅・中小企業の改革物語>

掲載日:2015年1月 5日

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