本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

スタートアップガイド

J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト

  • J-Net21とは
  • スタートアップガイド
中小機構
  • メルマガ登録
  • RSS一覧
  • お問い合わせ

HOME > 経営をよくする > 中堅・中小企業の改革物語

中堅・中小企業の改革物語 中堅・中小企業が、激動の時代を生き抜く為のヒントをコンサルタントの視点からお伝えします。


第16回 南アジア製造拠点の工場マネジメント

タイの日系企業において「工場マネジメント」が立ち行かないとき、工場を支えるべく送り込まれた日本人海外赴任者はどんな問題を抱えているのか。今回はタイに進出した日本の中堅・中小製造業の事例を通して話を進める。

不意打ちの海外赴任

海外拠点へ派遣する人材選びに中堅・中小企業は苦労する。商社や銀行、大手メーカーのように、現地語を勉強させさえすれば十分なコミュニケーションがとれる語学堪能な人材がいる会社はほんの一握りである。国内の現場に詳しいというだけで自分の意思なしに赴任を命じられる人が大部分なのではないか。

そして、いざ現地へ行ってみると品質不良と出荷ミスの山、現場は休みが多く生産が回らない、何から手をつければ良いのか、目が回るような状況下に立たされることが少なくない。言葉の通じない人とのコミュニケーションの辛さに加え、少ない日本人同士の人付き合い含めて、精神的に参ってくる。

赴任前に、海外拠点のあるべき姿や、課題仮説、自身の役割を整理し、優先順位をつけて仕事を進めなければ、ただただ現地の課題解決に流されるだけにならざるを得ない。

形だけの朝ミーティング

ある設備部品をつくるX社では品質不良が毎日5パーセント発生し、日々遅延する出荷対応に追われていた。この会社では日本人マネージャー(工場長)が、毎朝1時間以上、製造・設備・品質・出荷等、計10人の管理者達と、前日の実績数字を並べたボードを見ながら、課題を共有する。きちんと工場で管理すべき指標が明確に展開されており、工場マネジメントの仕組みが形としては整えられている。

しかしながら、毎日の話し合いが必要なほどの課題が山積みになっているのはなぜだろうか。実態をひも解いてみると不思議な点が見つかってくる。

考えさせないことが正なのか?

会議の中で、現場の人達はただ問題の事象を話す。それに対し日本人マネージャーがどう解決するかを話す。日本人マネージャーに、「彼らに考えることはさせないのですか?」と聞くと、「言ってもやらないからね。いつ何をして欲しいのか、細かく指示を出しておかないと、手戻りが発生するから。」と答える。

自分がやらないとだれがやる

日中、何か不良が出ると、日本人マネージャーにすぐ現場から声がかかり急行する。日本人マネージャーは手際よく設備を確認し不良の原因を突き止めて調整をする。毎日こうだという。現場には、決められた品質基準や品質基準の達成に向けたオペレーション指導書などは見当たらない。長年やれば分かるものだと日本人は言う。

タイ人のプライド

日本人マネージャーがタイ人の管理者へ「ヘルメットを着用しろと何回いえば分かるのか」と叱った。タイ人は屁理屈をこねて自分は悪くないと主張している。日本人マネージャーも更に上から言い返す。隣にいたタイ人がこっそりと、「こんな怒られかたをしたら、2年は根に持つ。」と教えてくれた。皆の前で一人を怒ることはタブーなようだ。

問題の背景

現場を知らない現地管理職

大学卒は現場を知らなくとも管理職に就く。現場を支えるのは中卒・高卒の方だ。現場作業者はいくら優秀でも上に上がれない。賃金差は10倍違う。また、管理職はより給料のもらえる会社へと次々に転職をして自分の価値を高めていく。

そんな彼らは生産現場において機能しないことも多い。生産現場の基本知識、設備の動かし方も分からず、ただ日本人のいうことを下へそのまま指示をするだけが常態化していた。

現場とのコミュニケーション

最初からタイ語を話せる日本人なんていない。通訳を挟むと時間がかかってイライラする。自分の言いたいことを伝えるだけで精いっぱい。相手の言うことを聞く時間もない。きちんと現場からの報告が上がる仕組みや組織が構築されていない。

国民性の差

日本人は現場を信用せずに、ただコントロールしようとする傾向がある。よその国から来たひとに突然仕切られると誰だっていい気はしない。さらにタイ人の性質を知らないがため火に油を注ぐような行動もとってしまう。タイ人の協力が得られないと工場は立ち行かなくなる。

その国の習慣、人の性格など、目に見えないルールを頭に入れておくことは工場マネジメントの必要条件である。相手の特徴をよく理解したマネジメントが行われていない。

一歩ずつの前進が会社を良くする

一方Y社は、きちんと日本式のやり方が根付いた会社だった。現場の人たちが一丸となって品質不良発生メカニズムを考え、改善へ向けて力を合わせていた。週に一度はタイ人管理者のタスクを洗い出し、何に悩んでいるのかを共有し、一つ一つ解決する。何年も同じことを続けていた。急がず丁寧に、相手を理解して一緒に進めていくことで上手くいっていたのではないかと思う。

サワディーカーの笑顔

経営層も現場も笑顔でサワディーカー(こんちには)、と手を合わせて挨拶する。単純に笑顔でいられることは気持ちが良いし、彼らは常にポジティブな気持ちで仕事を進めている様子だった。

東南アジアの人達に見習うべき所はたくさんある。大学卒業レベルの人は英語が出来るのは当たり前、留学や海外での仕事経験のある人もいる。仕事の進め方もコミュニケーションもグローバルスタンダードを身につけている。現場で働く人達も、手先は器用で日本の現場と比較しても生産性は劣っていない。目的をもって何かを成し遂げようとする熱い気持ちを持っている人も多い。

今後も東南アジアは成長し、その恩恵を日本はどのようにうけるのか。彼らの仕事の進め方を真似したり、アイディアをいただくことも大いにありうるのではないか。

<本稿は筆者の見解に基づくものです>

筆者

沼田 千佳子氏

沼田 千佳子氏

株式会社 日本能率協会コンサルティング
サプライチェーン革新センター コンサルタント

2008年、株式会社日本能率協会コンサルティング入社。生産現場の改善、生産管理システム構築、在庫適正化、物流コスト低減等、サプライチェーン全体の捉えた改革支援を行っている。クライアントの現場担当者と共に課題整理を行い、課題に対する改革案検討から実施までの推進を行う。

出典:NEC運営サイト「N-town」<中堅・中小企業の改革物語>

掲載日:2014年12月16日

前の記事次の記事


このページの先頭へ