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HOME > 経営をよくする > 中堅・中小企業の改革物語

中堅・中小企業の改革物語 中堅・中小企業が、激動の時代を生き抜く為のヒントをコンサルタントの視点からお伝えします。


第15回 製造業E社の物語

今回は、ひとづくりに力を入れ、風土改革にも取り組んでいる老舗中小製造業をご紹介します。

E社は、今から遡ること100年以上前に創業した歴史ある企業です。地元地域の水道事業開始を皮切りに、水道用装置製造を開始し、現在では水道に特化した装置専門メーカーとして、水道事業の普及、維持管理といった我々の生活に不可欠なインフラを支えています。

水道事業というインフラを支える製品であるために、ひとつの製品に対する作り込みや、長期的視点に立った製品の連続性が求められます。しかしその一方で、事業体行政ごとの異なる要望に応え、製品開発を進めるフレキシブルな対応も求められるのが特徴です。

原点は「人」 こうして「ものトレ」がはじまった

このようなどちらかというと保守的な業界特性や、オーナーの強力なトップダウンの下、同社には真面目にコツコツ仕事をするという社風が長らく浸透していました。中途入社した現社長は「とにかく当時の社員は真面目一辺倒。一人ひとりは優秀で言われたことはきちんとやるのですが、私語や雑談なども少なくどこかものを言いにくい雰囲気があり、ストレスが溜まったり、仕事が楽しくないのではないかと心配しました」と当時を語ります。

また、ものづくりの観点から、とにかく“見て学べ”という職人気質もあったといいます。そんな状況に対し、自分の思っていることを率直に言葉に出し、もっと楽しく仕事ができないだろうか。とにかくものが言える職場へ、そして若い人がいきいきと働ける職場へ変えていくことに取り組みました。

社長から相談を受けてテーマ出しをするディスカッションの中、結局コストダウンにしても、品質改革にしても、原点は『人』にあるのではないかという話になりました。そこで現場力強化を図るために『ものトレ』を行うことになりました。「ものづくりリーダー育成トレーニング」、通称「ものトレ」です。

過去の反省を生かし「丁寧・着実」に

「ものトレ」は現場第一線監督者の候補生の育成を目的に、現場で発生している実際の問題を取上げ、講義と10回の実践研修を通じて、実成果と人材育成を同時に行うプログラムです。長年、ものづくり改革活動を行っていたものの、まだ自分たちが自力で問題課題解決をできるレベルには至っていませんでした。「これまでは、だいたいこんな問題だろうと曖昧な状態で対策を考えていました。そして、すぐ実施したり、成果を出さなければならないと急いでしまって、結果的に自走できるまでには身についていない状況でした」と受講生Aは語ります。

そこで今回の「ものトレ」ではある工夫を折り込んだものにしました。それはとにかく手取り足取りという「丁寧さ」です。IE(Industrial Engineering:経営工学)には基本的な手順や進め方がありますが、現状分析をきちんとして、何が問題なのかを洗い出すプロセスを一つひとつ丁寧にやっていくことに重点を置きました。そして、時間に余裕を持って宿題を出し、自分達で考える時間をしっかり設定しました。次の研修では本当に理解しているか、理解していないならもう1回同じ内容を繰り返すという方法を取りました。

「ものトレ」が生んだ成果と部門連携

実際取組んだ中で何より感じたのは「現状分析の大切さ」だと前述の受講生Aは話します。「改善計画発表会までの3ヶ月間で現状分析の手法を教わりました。やはりそこがしっかりしていないと、いくら改善案を出してもどれくらい成果があったか説明もできませんでした。」

現状分析では、ロスの構造を定量化することが特徴です。設備稼働率を例にとって説明すると、①生産予定がない為に稼働していない時間、②生産予定はあるが、材料待ちや設備故障により停止している時間、③設備が稼働しているが本来設備が持っている性能通りのスピードで運転できていないことによる増分時間、④不良品を生産している時間など、ロスが発生する要因ごとに定量化し、改善余地を把握することで、改善の重点対象とアプローチが見えてくるのです。

問題を正確に捉えることができれば、改善の7~8割は実施できたも同然です。「ものトレ」ではここに重点を置き、改善成果につなげています。

また、この活動で生まれたのが部門を超えた連携です。「例えばデータの見方はシステム部門へ、組立設備の仕組みは生産技術部門へ、納入品の仕様変更は購買部門へという風に、他部門に協力を仰ぎ、複数部門を巻き込んだ活動となりました。「これまでなんとなく部門間の壁を感じていましたが、プロジェクトとして推進することで、とても円滑に進みました」と受講生Bは話します。

結果的に、この活動で上司や他部門他部署との連携も図れ、コミュニケーション向上にもつながりました。

業界全体を見渡す幅広い視野を養ってもらいたい

社長は「ものトレ」の効果の一つに「プレゼンテーションの質の向上」をあげます。「具体的な数値で改善提案ができるようになったことは成長だと思います。合わせて「ものトレ」修了後は自分に自信がついたのだと感じています。私も気が付いた成長点は率直に褒めることを心がけていますが、それによって本人のやる気もさらに引き出せますし、その繰返しで仕事が楽しくなり、わくわくするような職場づくりにもつながっていくのではないかと思っています」

また、「今後は社内に籠っていないで、どんどん外に出て他社や世の中の状況も勉強して欲しいと思っています。そして、水道業界全体を見渡せるような幅広い視野を養ってほしいですね」と、社長は今後の成長への期待を語りました。

「ものトレ」を通じ、今、E社はものが言える職場、わくわくする会社へと変わりつつあります。基本を大切にする「まじめ」な姿勢、そこに新たな社風が加わって、未来を担う製品を生み出す素地となるに違いないでしょう。我々の生活インフラを支える企業として、水道事業への貢献に向け、E社の積極果敢なチャレンジが続いて行きます。

<本稿は筆者の見解に基づくものです>

筆者

茂木 龍哉氏

茂木 龍哉氏

株式会社 日本能率協会コンサルティング
サプライチェーン革新センター シニア・コンサルタント

生産、物流機能領域を中心に、在庫適正化、生産管理システム導入、オペレーションコストダウン等のコンサルティングを行う。サプライチェーンマネジメントの視点から、事業競争力強化につながる経営システム・生産システムの構築、需要予測精度向上、リードタイム短縮、アウトソーシング等にも取り組み、現場改善から経営改革に至るまでの幅広い場で改革・改善活動を支援している。また、製造業の人材育成にも積極的に取り組んでおり、自律的継続的改善ができる職場づくり、その為の教育プログラム開発など数多くのプロジェクトに参画している。

出典:NEC運営サイト「N-town」<中堅・中小企業の改革物語>

掲載日:2014年12月 1日

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