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中堅・中小企業の改革物語 中堅・中小企業が、激動の時代を生き抜く為のヒントをコンサルタントの視点からお伝えします。


第13回 銀行との正しい付き合い方

経営コンサルティングの仕事に携わって10年以上が経過しました。元銀行出身、ということもあり、資金繰りが厳しい会社を支援させて頂く機会が多数ありました。厳しい資金繰りを脱するには、もちろん本業の業績回復・キャッシュフローの改善がなければなりません。
一方、それだけでは不十分で、資金の出し手である銀行とどう付き合っていくか、も重要なポイントとなります。

いわゆる「失われた10年」(「20年」という人もいますが…)を通じて、企業のバランスシートは相当に“筋肉質”へと変わったと思われるなか、その“筋肉質”への流れに乗り遅れてしまった企業も少なくありません。
結局のところ、この流れに乗り遅れてしまった企業を支援させて頂くことになるのですが、共通して感じたことは、銀行との付き合い方が下手、という点です。

銀行とどのように付き合っていくか、これは古くて新しいテーマなのかもしれません。資金のやりくりに苦慮している、銀行対応が大変、という方にはぜひご一読頂ければと思います。

「銀行からの融資が前提…」という考え方自体を捨てる

そもそもの話、となってしまうのですが、資金調達や銀行取引でお悩みの会社は、借金をすること自体をビジネスの前提条件としてしまっています。こういう企業の経理担当とお話しすると、「借金、全部返済する必要はないでしょ?」というお言葉が返ってきます。

もちろん、私は融資がもっている利点を否定するつもりは毛頭ありません。昔から融資は「時間を買う」と言われています。いま資金がなくとも、融資を受けることによって事業を拡大することができるのです。また、融資はよく「テコ」の力がある、と言われます。難しく表現すれば「財務レバレッジ」という言葉になるのですが、融資を受けることで一気に事業規模を拡大させることも可能です。

ですが、ここでやはり大原則である「借りたものは返さなければならない」に立ち戻って頂きたいと思います。さらに、将来には不確定要素がたくさんあります。いま事業が順調できちんと返済ができていても、それが将来も続くとは限りません。抱える負担は少ない方が良いに決まっています。

したがって、借金をすでに抱えてしまっている企業でも、「必ず無借金にしてみせる!」というスタンスを、まずはもって頂きたいのです。

銀行にいくら支払っているのか?

そして、融資に伴うコストにもぜひ着目して頂きたいと思います。端的には借入に伴う支払利息がコストとなります。加えて、信用保証協会を利用する際の保証料や担保権設定に伴う諸費用、収入印紙等の租税公課も見逃せません。

しかし、融資に伴う最も大きなコストは、やはり支払利息になります。ですが、この支払利息をあまり意識しない経営者・経理担当も少なくありません。一つの原因は、元金の返済と利息の支払いを「ぶっこみ」で管理してしまっていることにあるようです。

会計的に言えば、元金返済は貸借取引ですが、利息の支払いは損益取引です。つまり、利息の支払いは業績に直結するのです。それにも関わらず、支払利息負担を軽視してしまうのは、元金返済・支払利息ともに銀行口座から同時に引き落とされることから、資金繰上はその総額ばかりに関心が向かってしまうため、のようです。

損益計算書の営業外費用、「支払利息」の金額をじっと見つめて下さい。中堅・中小企業であっても、利息だけで年間数千万円支払っている企業も少なくありません。その数千万円、人件費に直すと何人分でしょうか?もし設備投資にまわしたら何が買えましたか?

まずは「持たない」から始める

それでは、どうすれば銀行からの融資に依存しない財務体質になれるのか、を考えていきます。まずは、「持たない」ことです。具体的に言えば、貸借対照表の資産の金額をいかにして減らすか、をぜひ考えてほしいと思います。

総論で言うと簡単なのですが、現実として「持たない」に取り組むことは相当厄介です。ある会社の事例ですが、借金過多で資金繰に窮したため、まずは保有している資産の売却を進めようとしました。借金と資産が両建てになっている、つまり借金して不要不急の不動産や株式を保有している状態だったので、資産売却は当然の流れです。

ところが、相当な抵抗にあいました。最後は理屈・損得ではなく、心理的な抵抗です。「資産を保有していないと、銀行から融資を受けられない」「資産的背景がないと、会社としての信用が損なわれる」というものでした。こういう企業の貸借対照表をみると、資産と負債が両建てで膨れ上がっています。

私はこういう貸借対照表をみると「昭和のバランスシート」と呼んでいます。経済成長やインフレが前提となっている経営環境ならば、資産を保有していればその資産価値が上昇していきます。しかし、この成熟した日本経済において、そのような資産価値の上昇が見込めるはずもありません。

ちなみに、このような考え方の企業は、銀行にとっては格好のセールス対象です。業績がそこそこ安定していれば、どんどん貸し出せるわけですから…。
まずは、「持たない」から始めましょう。保有資産の大小が企業の信用を左右した時代は終わっています。財務体質を強固にする第一歩は、「持ち物」を減らすスリム化から、です。

銀行との「お付き合い」に深入りしない

経営者や経理担当と話していると、よく「銀行とのお付き合いだから…」という言葉を耳にします。これは、何も夜の宴席の話ではなく、銀行取引の延長線上にある保険・リース・各種金融商品、等といったものです(業法上、銀行本体が直接的にセールスできない)。銀行との取引を円滑にしようと、融資を受けているとこのような「お付き合い」に乗ってしまう企業もかなり多いのではないでしょうか?

しかし、このような「お付き合い」がその企業の本業と直結することはごく稀なことで、大概は一過性の無駄な出費です。また、「担当者に恩を売っておけば…」という心理も働くようですが、融資審査がどんどん厳正になっていく昨今、このような「恩」の効果は皆無と言っていいでしょう。

銀行とのコミュニケーションを密にする

これまでと真逆のことを言うようですが、ここで言うコミュニケーションは業績報告を指しています。つまり、銀行に対して情報開示をきちんと行う、ということを意味しています。

融資を受けていれば、年に1回、決算書を提示していると思いますが、それだけでは不十分です。業績の報告は、少なくとも半期に1回、できれば四半期に1回、きちんと経営トップが直接銀行へ説明すべきです。

加えて、経理担当の方は月次で、月末の〆終了後、できるだけ速やかに、下記の3つの資料を銀行に提出すべきです。

(1)月次試算表
(2)月次資金繰表(実績6ヵ月、予定6ヵ月程度)
(3)銀行別の借入・預金残高

良い情報も悪い情報も含めて、数字で経営状態を開示することで、銀行は大いに安心します。企業側としては、「銀行に悪い情報は知らせたくない」という心理が働くようですが、悪い情報であっても原因・対策をきちんと説明すれば、逆に「しっかりしている」と好印象を銀行に与えることができるようです。

また、この情報開示は副次的な効果があります。中堅・中小企業、特にオーナー企業においては、定期・定例的にきちんと業績を見つめなおす機会は稀のようです。つまり客観的に自社の現状を認識することが難しく、どうしても独りよがりになってしまう、ということです。対外的に自社の現状をきちんと説明すること自体、企業の自律性、つまりガバナンスを強化する機能があるように感じられます。

銀行側のロジックを知る、そのためにも客観的なアドバイスを受ける

上述のようにきちんと銀行対応をしていても、業績低迷から資金繰に窮してしまうことは起きえます。そのような場面に遭遇すると、銀行側は急に態度を硬化させてくるので、企業側はうろたえてしまうことも少なくありません。

まず、銀行はなぜ態度を硬化してくるのか、そのロジックを知る必要があります。銀行には「自己査定」という作業があります。これは、融資した資金がきちんと回収できるかどうか、半年に一度、融資先の経営状態をチェックする作業です。もし融資先の業績が悪化し、回収不可能となる可能性が高まると、「自己査定」の基準に則って銀行は対応を迫ってきます。

その「自己査定」の内容を説明したいのですが、あまりに膨大な情報量なので、ここでの説明は割愛せざるをえません。ですが、一つ申し上げたいことは、そのような状況に出くわした場合は、客観的な第三者からアドバイスを受ける、ということです。

資金繰に窮してからコンサルティングの依頼を受けることが多々あるのですが、経営トップからは「そんなこと知らなかった」「これまで誰も教えてくれなかった」というお言葉を必ずと言っていいほど聞いています。 私としては、世の中にこのようなアドバイスをする存在自体が少ないことを残念に感じていますが、銀行対応に困った際は、とにかく速やかに客観的な相談相手を探すことをお勧めします。

銀行対応に関わるコンサルティングを通じた経験を色々と書かせて頂きました。経営にとって資金の調達面は「守り」の部分になるでしょうが、その「守り」があるからこそ、事業という「攻め」を考えられるものだと思います。攻守ともに盤石の姿勢で、安定した事業運営が実現することを願ってやみません。

<本稿は筆者の見解に基づくものです>

筆者

横山 隆史氏

坂田 英之氏

株式会社 日本能率協会コンサルティング
経営コンサルティング本部 シニア・コンサルタント

政府系金融機関で法人向け融資・審査業務に従事した後、JMAC入社。経営戦略/事業戦略、財務戦略の領域でコンサルティング活動を行っている。これまでの主なコンサルティング実績としては、業績不振企業・事業の収益構造・バランスシート再構築、M&Aにおける構想立案・実行支援・機能統合推進、中期経営計画策定支援等がある。その他、財務・会計、投資評価実務、経営/事業戦略、マーケティング、問題解決、等といった分野の研修にも取り組んでいる。

出典:NEC運営サイト「N-town」<中堅・中小企業の改革物語>

掲載日:2014年11月17日

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