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中堅・中小企業の改革物語 中堅・中小企業が、激動の時代を生き抜く為のヒントをコンサルタントの視点からお伝えします。


第11回 ヒューマンエラー

ヒューマンエラー対策プロジェクト立ち上がる

今回は、企業から病院、老人保健施設での食堂運営、給食サービスの提供を行っているG社の取り組みをご紹介します。その中で、病院における患者様の食事の予約管理から調理、配膳までのサービスを請け負って事業展開している部門のお話です。

事業運営や管理・監督を行っているのはその会社の社員ですが、現場で実際に食事を作ったり、患者様へ配膳する仕事は派遣社員やパートのかたが行っています。
とある地域で1ヶ月間に立て続けに4件、お客様からのクレームがありました。その内容は、すべて誤配膳、予約受付間違いなど人のミス、いわゆる、ヒューマンエラーに起因するものでした。幸いにも今回起こしたクレームが元で患者様に健康被害は発生しませんでした。

病院では、様々な病気を持った患者様が入院し、薬を服用しています。アレルギーを持っている患者様もいることでしょう。なかには、病気や薬、アレルギーの関係で口にしてはいけない食材がある患者様もいます。

その地域を統括するマネジャーは「このまま、この事態を放置しては、いずれ大きな事故につながるのではないか。今のうちに何か手を打たねばいけない」と危機感を感じて、早急に何らかの対策を打つべく、「ヒューマンエラー対策プロジェクト」を立ち上げました。

ポイントはヒューマンエラーリスクの見える化

プロジェクトを立ち上げるにあたり、マネジャーは、

・従来の再発防止型活動ではなく未然防止型活動に転換する。
・食事提供サービス業務に潜むヒューマンエラーのリスク(危険性)をリストアップ、共有する。
・食事提供サービス業務の実態を把握する。

の3つが今回のプロジェクトにおいて重要なことだと考えました。

病院において患者様に食事を提供するということは、一つ間違えば重大な事故につながりかねません。その意味では何か起こってから対策を講じる再発防止型の活動では限界があります。やはり、何か起こる前に対策を講じる、つまり、未然防止型の活動が求められます。

では、どのようにすれば何か起こる前に対策が打てるのでしょうか。それは、ヒューマンエラーのリスク(危険性)をリストアップすることです。食事提供サービス業務を詳細にながめて、どこにどんな人のミスが発生しうるかを検討、洗い出し、見える化するのです。その過程では食事提供サービス業務を改めて点検することとなり、その実態を把握することにつながります。ヒューマンエラーリスクを抽出する視点は後ほど触れたいと思います。

さらに、ヒューマンエラーリスクを見える化することで、以下のような効果も期待できます。

・ヒューマンエラーリスクに対する感度が高まる。
・食事提供サービス業務においてどこに気を付ければよいかが共有でき、ヒューマンエラーに対する意識が高まる。

ヒューマンエラーは現場で起きます。まず、現場の人たちのヒューマンエラーに対する感度を上げることが必要です。G社でも実際の業務は派遣社員やパートのかたが行っていますので、彼らの感度を高める必要があります。

ヒューマンエラーリスクを抽出する過程で、あらためて自分たちが行っている業務を見直して、どの作業でどんなミスをしそうかを一生懸命考えます。また、過去に自分が仕事をしている中で、うっかりミスをしそうになったこと、いわゆるヒヤリハットを思い出す人もいるでしょう。このような体験を通じてヒューマンエラーリスクを洗い出す視点が養われて感度が高まっていきます。

更に、一人ひとりが抽出したヒューマンエラーリスクを整理して、見える化し、みんなで共有すれば、職場全体で業務を行う上で気を付けるべきポイントが共有され、個人個人のノウハウが組織のノウハウになります。このように、ヒューマンエラーリスクを見える化する手法を「ヒューマンエラーリスクマップ」といいます。これも後ほど触れます。

ヒューマンエラーリスクを洗い出す視点はこれだ

ヒューマンエラーリスクを洗い出すためにはエラーのタイプを知ることが必要です。エラーのタイプを知るために「人の情報処理メカニズム」という見方をご紹介します。人が行う日常活動はもちろんのこと業務も細かく見ると「記憶する」「認知する」「判断する」「行動する」という4つの働きに分けられ、この4つの働きを使って、人は外界からの情報を得て、しかるべき行為をしています。

・「認知する」:五感、主に見たり聞いたりして対象が何であるかを知り、その意味合いを認識する働き。
・「判断する」:認知した情報を含む各種情報から状況を理解し、次の行動を意思決定する働き。
・「行動する」:判断結果に基づき行動を起こす働き。
・「記憶する」:「覚える」「覚え続ける」「思い出す」という働き。

裏を返せば、これらの働きが適切に機能しなかった状態がヒューマンエラーであるということになります。

例えば、食事を患者様に配膳するために「(食事を運搬する)ワゴンに必要数の食事を準備する」という業務でヒューマンエラーを考えてみましょう。

・「認知エラー」:(必要数揃っていないにも関わらず)食事の数が揃っていると見間違える。
・「判断エラー」:(食事が揃っていると思い込み)配膳前に食事の数を確認しなくてもよいと誤った判断をする。
・「行動エラー」:食事の数が揃っているかの確認を抜かす。
・「記憶エラー」:食事準備の途中で電話が掛かってきて業務が中断し、その後、いくつ食事を準備したかをすっかり忘れてしまう。

このように考えていくと、業務内容さえ分かっていれば何か問題が起こっていなくてもヒューマンエラーリスクを洗い出すことが可能になります。

ヒューマンエラーリスクマップを作ろう

G社の「ヒューマンエラー対策プロジェクト」でもヒューマンエラーリスクマップを作ることにしました。

ヒューマンエラーリスクマップとは、縦軸・横軸に、「工程・業務を細分化した項目」「認知エラー、判断エラー、行動エラー、記憶エラーなどヒューマンエラーのタイプ」を置き、マトリクスの表にします。工程・業務を細分化した項目ごとに、ヒューマンエラーのどのタイプが発生しそうかを洗い出していきます。

エラーリスクが洗い出せたら、「発生度(どの程度の頻度で発生しそうか)」「影響度(エラーが発生した場合の被害の大きさ)」「検出可能性(エラーを発見できる可能性がどの程度あるか)」という視点からリスクの大きさを評価し、改善対象の優先順位を付け、対策を実施していきます。

G社では、一口に食事提供サービス業務といってもいろいろな工程があります。そこで、過去数年間で発生したヒューマンエラー起因のクレームを分析して、「食事の配膳準備、配膳」の工程が一番、クレームの発生件数が多いことから、この工程を手始めに改善検討を始めることにしました。

G社では、まだ活動に取り組んでいる最中です。「食事の配膳準備、配膳」工程のヒューマンエラーリスクの洗い出し、改善が一通り終わり、次は「調理」「食事の予約受付」という順で改善を進めていこうとしています。ちなみに、「食事の配膳準備、配膳」工程では改善を実施してから現在まで4ヶ月、クレームだけでなく、社内の業務品質トラブル発生ゼロを継続しているそうです。

ヒューマンエラー対策は、何か起こってから対策を打つ再発防止型ではいわゆる「モグラたたき的な」改善になりがちで、対策が後手後手に回ってしまいます。人の業務に関しては少なくとも何をどんな手順で行っているかは分かるはずです。それさえ分かっていれば、ご紹介しました視点でヒューマンエラーリスクを事前に洗い出し、何か問題が起こっていなくても対策を打つことが可能です。みなさまの会社や職場でもヒューマンエラーリスクマップに取り組んでみてはいかがでしょうか。

<本稿は筆者の見解に基づくものです>

筆者

大西 弘倫氏

大西 弘倫氏

株式会社 日本能率協会コンサルティング
経営コンサルティング事業本部 チーフ・コンサルタント

民間企業から官公庁、自治体、独立行政法人などの公共団体、医療機関まで幅広い業種に対して支援経験があり、IE(インダストリアル・エンジニアリング)をベースにした生産性向上、業務改善・効率化、全社コストダウン活動などのプロジェクトに従事している。
最近では、安全・安心ものづくりのための製造品質向上や顧客から信頼されるサービスを提供できる業務品質向上をねらいとしたヒューマンエラー防止のテーマに取り組み、ヒューマンエラーに強い職場づくりを目指す未然防止型改善活動のコンサルティングを推進している。

出典:NEC運営サイト「N-town」<中堅・中小企業の改革物語>

掲載日:2014年11月 4日

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