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HOME > 経営をよくする > 中堅・中小企業の改革物語

中堅・中小企業の改革物語 中堅・中小企業が、激動の時代を生き抜く為のヒントをコンサルタントの視点からお伝えします。


第10回 会計を経営に活かす

1.会計は経営に役立つのか

「会計が経営に役立つのか」というのは社長の素直な疑問ではないでしょうか。本稿では会計を経営に活かすための定石を紹介します。

ぜひ、自社の状況を踏まえ、何をなすべきかを考えるヒントにしていただければと思います。

2.後の祭りにならないための「月次決算」

まず社長に不可欠なのが月次決算制度です。

決算期を過ぎ、税理士から初めて年度の業績を知らされるようでは問題です。決算期が終わった後に業績を知っても後の祭りです。

後の祭りにならないためには、年度途中で業績がどのような状況にあるのかを知らなくてはなりません。そのための仕組みが月次決算制度です。

(1)月次決算にはタイムリーな伝票処理が不可欠

月次決算構築のポイントは、正しいタイミングでのデータ入力ができるかにあります。

支払時ではなく、納品書や請求書が届いた時点でパソコンに情報を入力する必要があります。これにより、適正な月次決算ができるようになります。

経営に大きな問題が起きた時に、経営者が最も必要とするのが時間の余裕です。時間の余裕さえあれば、いろいろ手を打てたのに、時間の余裕がなく、場当たり的な対応しかできずに業績が大きく落ち込んでしまった。経営者なら誰しもが経験することです。正しい月次決算を行い、現在の状況をいち早く知ることがまず必要です。

(2)月次決算ができれば資金管理も可能となる

最も社長が経理で悩むのが資金繰りです。一体いつ、いくらお金が入ってくるのか、いくらお金が出ていくのか。当座預金の残高が底をつくのはいつなのか。経理担当が営業マンや取引先に電話をし確認しているようでは話になりません。

そんな資金繰りも適正な月次決算ができれば、いつでも会計システムから簡単に把握することが可能です。ただし、そのためには、得意先毎の入金条件や取引先毎の支払条件を明確にし、登録する必要があります。また、先に述べたように出荷データや仕入データ、さらには経費の請求書をタイムリーに入力する必要があります。

3.責任会計制度を構築し、利益意識を社内に徹底する

経営者であれば誰もが悩むのが、如何に従業員、特に管理職に利益意識を植え付けるかという問題です。この問題を考える時に、社長であるあなたの利益意識はなぜ高いのかを考えることがヒントになります。

なぜあなたの利益意識は高いのか。あなたの業績すなわち会社の業績は毎年定期的に報告され、業績について銀行や、場合によっては株主から厳しい注文をつけられます。 逆に、業績が良ければ役員賞与もいただければ、役員報酬のアップも可能です。そして何よりも自分の会社という意識があります。

ではどうすれば、管理職の利益意識を高められるのか?

そうです。同じ仕組みを作ればよいのです。組織をあたかも会社のように見做し、その業績を把握し、評価し褒賞する仕組みを作ればよいのです。そして、担当組織をあたかも自分の会社のように思ってもらうことです。このような仕組みを責任会計制度と呼んでいます。

(1)メーカーでは原価計算制度の導入が前提になる

特に、工場を持つ場合にネックになるのが原価計算制度です。工場と販売をあたかも独立会社のように見做し、製品の売買を行うことが必要になります。

もっともオーソドックスな方法は、製品の原価をできるだけ科学的に見積もり、この金額を工場と販売との社内仕切り価格に設定し、ベースとする方法です。

当たり前ですが社内価格は事前に決定する必要があります。事前に、製品ごとに、各工程でどんな作業をし、そのためにどんな材料がいくつ必要で、作業時間がどの程度かかるのかを把握します。これをベースに製品ごとの原価を事前に計算し社内仕切り価格のベースにするのです。

事前に原価を決め、実際に発生した原価と比較し工場の業績評価に使います。もちろん、工程ごとに減価差額は把握できますし、どんな原因で原価差額が発生したかを分析することも可能です。

また、製品の原価を事前に把握しますから、月次決算をスピーディーに行うことも可能なのです。このように、事前に製品原価を定めることは、会社にとって極めて有効です。しかし、そのためには、製品に関する基礎データの整備や、作業時間等の継続的な把握が必要となります。

(2)大事なのは飴と鞭の使い方

組織業績を明らかにしただけで、利益意識が高まるわけではありません。この仕組みをうまく使い、利益意識を高める工夫が必要です。その代表的な工夫が、利益分配制度です。

例えば、業績に応じ賞与を支給する仕組みを導入するのです。頑張れば収入が増えるわけですから、従業員は担当組織の業績に自然と興味を持ち、利益意識は高まります。

しかし、利益分配制度等のお金による動機づけには、大きな落とし穴があることに注意する必要があります。自分の所属組織の業績を重視するあまり、全体最適や他部門のことを考えずに行動する社員が増え、人間関係がぎすぎすします。下手をすると組織で最も大事な信頼関係が壊され、全体業績は悪化するという事態になりかねないのです。過度な利益分配制度は慎むべきです。

(3)怖い叱るマネジメントの蔓延

責任会計制度という武器を手にすると、社長の仕事は楽になります。責任会計制度が、どこに問題があるのかを、毎月、明らかにしてくれるからです。そんな月次決算資料を目にしたあなたは、怒りの矛先を業績の悪い組織の管理職に向けます。

一度や二度なら我慢できますが、特定組織で業績不振が毎月続きだすと、さすがの社長も堪忍袋の緒が切れて、怒鳴りだします。

それを見ていた管理職はあんなに怒鳴られてはかなわないと担当部署の業績に目を光らせ、利益意識は徹底されていきます。

ところで、ここで困った現象も発生し始めます。怒鳴られた管理職は、これと同じことを組織でやりだすのです。業績の悪い部下を見つけ叱り始めるのです。課の業績が振るわず、おれが社長に怒鳴れるのは、部下であるお前の頑張りが足らないからだと。

こうして利益意識は徹底されるのですが、叱るマネジメントが組織に蔓延するのです。部下にしてみれば自分の業績が悪いのはわかっている。どうすれば良いのかを具体的に教えてくれというのが本音です。

4.事後の結果管理から事前のプロセス管理へ

このような矛盾から抜け出すには、会計情報を結果管理にだけ使うという発想から抜け出す必要があります。業績は出てきた結果です。結果で叱るのは簡単なことです。経営者や管理職は安易な道に逃げているだけです。

どうしたら業績が上がるのか。業績を良くするにはどうすれば良いのか。そのために会計情報を活用することが求められます。そんな会計情報を意思決定に活用する為の方法に先行損益管理があります。

(1)先行損益管理の奨め

月次決算をしていれば、前月の月次決算が終了する、当月の初旬に決算会議を開催すると思います。通常は、そこで先月の業績結果が報告され、業績結果に基づき怒鳴られる管理職が決まります。

確かに過去を振り返ることも重要ですが、より重要なのは将来の業績づくりです。どうすれば本年度の利益目標を達成できるかです。そこで、各管理職に当月、来月、再来月の担当部署の業績を予測させるのです。

例えば、支店であれば売上、想定される売上原価や販売費及び一般管理費はいくらか、その結果利益はどうなるかを3か月先まで予測させます。そのうえで、各月の目標達成に向けどんな活動をすべきかを発表させるのです。終ったことではなく、未来に目を向け検討を行うのが狙いです。

(2)先行損益管理で利益予測能力を高める

単純な仕組みですが、この仕組みにより管理職の利益予測能力が高まります。例えば、当月の利益予測を当月の初旬に行いますが、この予測が外れるようでは、管理職の予測能力は極めて低いことになります。毎月、今後3か月の利益予測を繰り返すことにより、利益予測能力は高まります。

(3)事前管理を徹底する

また、2か月後、3か月後の利益予測と目標とのギャップを知り、ギャップ解消に向けたアクション計画を立案することがコントロールの質を高めます。数値による結果コントロールから、活動計画に基づくプロセスコントロールにマネジメントの質が変化するからです。

結果が出なかったのは何故か。まずアクション計画を実施したかどうかが問われます。アクションを実施したにもかかわらず、当初、予測した結果が得られないとしたら、アクション計画に問題があったことになります。

終った結果に基づき、叱るマネジメントは誰にでもできます。その対策を立案する時点で、どんなアドバイスができるかが社長に問われることになります。

5.目指すは将来視点で自ら考え行動する組織

月次決算や責任会計制度を導入し、先行損益管理制度を導入することにより利益意識を持ち、年度目標必達に向け先を考え、行動する癖がつきます。ただし、新たな問題が生じます。利益意識は高くなるが短期利益志向になるという問題です。

「担当組織の業績が悪化する為、新入社員はいらない」「成果がいつ出るかもわからない活動なんかに時間をさけない」「そんな時間があったら当期の業績をあげるために活動をしろ」という話になり、将来の成長と発展に向けた課題解決が進まないのです。

これからが社長の出番です。社長は将来のことを考え、管理職の意識を短期志向から中長期志向に切り替え、そのための仕事に巻き込むことが重要な仕事になります。

目指すは、管理職が将来視点から自ら考え、行動する組織です。このような組織作りに成功すれば、あなたの会社の経営基盤は盤石となります。

<本稿は筆者の見解に基づくものです>

筆者

飯田 真悟氏

飯田 真悟氏

株式会社 日本能率協会コンサルティング
経営コンサルティング事業本部 シニア・コンサルタント

公認会計士のスペシャリティーを活かし、管理会計制度の構築支援、経営診断、中期計画策定の策定支援からホワイトカラーの生産性向上まで幅広いコンサルティング業務に従事。さらにアカウンティングやファイナンスの研修を身近な事例から分かり易く講義することで好評を得ている。

出典:NEC運営サイト「N-town」<中堅・中小企業の改革物語>

掲載日:2014年10月27日

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