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中堅・中小企業の改革物語 中堅・中小企業が、激動の時代を生き抜く為のヒントをコンサルタントの視点からお伝えします。


第8回 生産財メーカーF社の物語

1.5年間で、売上2倍戦略を展開する生産財メーカー

ここで紹介する企業は、売上2倍を5年間で達成しようという樹脂関連の生産財メーカーで、そのために、開発、営業、生産、購買、物流部門が一体となって推進している事例です。

売上2倍は、創業50周年を迎えるにあたって、大きな飛躍をするための目標で、次期経営者候補を徹底的に鍛えるための目標でもありました。ただ残念ながら、この目標を掲げた当初は、誰もがお題目と思い、本気で取り組もうとする人はいませんでした。経営企画部門が、何回かの合宿を企画し、その中で売上げ2倍検討会を開催しましたが、事業部長クラスでさえ本気で取り組むメンバーは少なく、ただ時間だけが経過していました。

そこでトップは、売上2倍目標を達成するために、市場環境、競合状況などを踏まえた施策を、企業内の全機能部門が知恵を出し、連携して推進していくために、売上2倍戦略を見える化し、関係者が一堂に会して成功への道筋を日常的に検討できるようにし、従来マネジメントスタイルを大きく変えることにしました。

2.販売・開発・生産一体での事業部別の売上2倍戦略の具体化

(1)事業部長のリーダーシップ発揮

F社には、6つの事業部があります。売上2倍戦略の検討では、各事業部を束ねる6人の事業部長が推進リーダーとなって、検討を進めていきました。F社全体として売上2倍を狙うわけですが、この売上目標を経営会議にて各事業部に割り付けし、各事業部長が責任を持つ目標としました
まず、各事業部が進めたのは売上2倍の方向性検討です。単に2倍と言っても、どちらの方向に進んでいけば2倍になるのか、漠然とアイデア出しをしていっても、当然2倍には到達しません。ここで検討したのは、売上倍増に向けての4つの方向性に分けて考える事でした。
4つの方向性とは、

① 既存製品を既存顧客に販売することで拡販を狙う

・既存顧客でのダントツシェアNo.1のために、競合製品との差別化QCD戦略(クオリティ・コスト・デリバリー)の具体化

② 既存製品を新規顧客(新規用途)に販売することで拡販を狙う

・既存顧客のライバルや既存顧客の関係会社などへ入り込むための、製品競争力(QCD)向上と営業戦略の具体化
・既存の製品を、別の用途として他の業種へ販売するための用途開発

③ 新規製品を既存顧客に販売することで拡販を狙う

・既存顧客の購買品を総棚卸しして、自社で供給可能なアイテム発掘(できれば、モジュール品として供給を検討する)
・顧客の将来戦略を先取りした製品の開発

④ 新規製品を新規顧客に販売することで拡販を狙う

・③の新製品を②の新規顧客へどう販売するかの営業戦略具体化
・自事業の強み(コア技術)をいかした完全新規事業立ち上げ

です。

事業部長は、開発、営業、生産のメンバーと4つの方向性について議論する中で、4つの方向性毎に「売上目標」を設定し、4つの方向性毎に戦略ストーリーをメンバーと具体化をしていきました。従来は、開発、営業、生産が一堂に会し具体的な戦略ストーリーを検討していく場は無かったので、事業部長としても大きなチャレンジでした。

(2)事業戦略展開表による戦略の具体化、見える化

上述で検討してきた、4つの方向性毎に明確化された売上目標と達成のための戦略ストーリーを、次のステップとしてさらに行動レベルまで具体化していく必要がありました。

そこで4つの方向性毎に、方向別目標→製品群別目標→顧客別目標→目標達成のための具体的施策(営業施策、開発施策、生産施策)、を議論し明確にしていきました。

この事業戦略展開表(事業部の目標をブレークダウンし、4つの方向性毎に設定した各顧客ごとの攻略作戦を明示した表)の作成により、戦略ストーリーが具体化し、各担当者の行動レベルに落ちていくわけです。また、この表により売上2倍の戦略が見える化し、トップからボトムまで戦略の共有化が飛躍的に進みました。この事により毎月行われる、経営陣との進捗状況検討会でも、戦略全体を見据えた中で個別議論が進められ、事業部の目標達成のためにトップが行動すべき事まで議論できるようになりました。

従来は営業と開発、営業と生産、開発と生産は対立しやすい構造にあったが、今回の展開では共通の敵が競合製品、競合企業となり、全社一体となって勝つための施策を検討する事が出来るようになってきたことも、大きな成果でした。

3.売上2倍事業戦略展開表と来年度事業戦略展開表

ここまでは、売上2倍に関する事業戦略展開表の作成に関してお話ししてきました。次にやるべき事は、この事業戦略展開表を年度の事業戦略展開表にばらすことです。5年後に2倍の売上げを目標にしているが、そのために来年はどこまで到達する必要があるのかを、検討しておくことが必要となります。そこでF社は、売上2倍の事業戦略展開表の検討を3ヶ月間で一旦区切り、そこまでに全体の20%程度の施策の具体化を完了させる目標で検討を進めてきました。事業部によりばらつきはありましたが、おおよそ各事業部とも20%程度の施策は具体化できたため、その施策を中心に来年度の事業戦略展開表を作成し、具体化をはかりました。

また、来年度の事業戦略展開表とあわせて、実行計画書と売上実績管理表を作成して、実施状況の管理も確実にできるようにしました。

実績管理では以下のポイントを特に管理しました。
①月次の売上目標と売上実績(顧客別の売上、シェア)
②当月までの累計売上目標と売上実績(顧客別の売上、シェア)
③当月以降から年度末までの売上予測(顧客別の売上、シェア)

特に③は、迅速な挽回策を実行するために重要な管理項目で、売上予測は、施策の実施状況、顧客の状況、競合の状況を勘案して、毎月ローリングで予測シミュレーションをしていきます。このことにより年度末での目標達成度を早い段階で把握でき、未達成が予測された場合に迅速な対応が可能となるわけです。

4.本活動をとおして、企業体質を変化させる

当初は、2倍など夢のまた夢、と考えていた目標が、3ヶ月間の営業、開発、生産一体での検討により夢ではなく、手に届く目標へと変わってきました。そして、この売上げ2倍戦略展開表をベースに、来年度の売上げ1.2倍目標への戦略ストーリーと事業戦略展開表が明確化された現在、担当者クラスから経営幹部まで2倍への手ごたえを感じてきています。

経営幹部が感じている、本活動での体質変化は、
①事業戦略展開表作成をとおして、営業、開発、生産他の部門が事業部として一体となって、競合に勝ちぬく体制を固めることができた。
②事業戦略展開表により目標と施策が戦略ストーリーに沿って見える化されたため、事業環境変化に追随するための変更箇所が明確で、迅速な対応が可能になった。
③事業部長が、「営業部長」から「本来の事業部長」に変革してきた。本マネジメントをとおして経営感覚が磨かれてきていることをみると、将来の経営幹部としての能力醸成におおいに役だっている。
④担当者クラスが各施策を実行するにあたり、その必要性を十分認識できるようになったため、自ら積極的に行動するようになった(自律化)。
⑤各事業部の戦略ストーリーが見える化されたため、ウイークポイントも明確になり、経営幹部も自らどんな行動をとるべきか考える事ができ、担当者クラス、ミドルマネジャークラス、事業部長クラスと一体感を持って事業運営ができるようになってきた。

本活動でF社は、目標管理、方針展開が形式的にしか出来ていなかったものから、大きくマネジメントを飛躍させました。常に競争にさらされている厳しい事業環境ではありますが、今後の海外展開含めて売上げ2倍の手ごたえを従業員は感じ取ってきています。まだ始まったばかりの活動ですが、新たな企業への飛躍を目の当たりにするのは、それほど遠い日ではないと従業員は感じています。

<本稿は筆者の見解に基づくものです>

筆者

石山 真実

石山 真実氏

株式会社 日本能率協会コンサルティング
経営コンサルティング事業本部 シニア・コンサルタント

工場の生産性向上を主軸に、自動車、自動車部品、電器、医薬、化学、食品など数多くの業種で成果をあげてきた。近年では、工場の総合的コストダウン活動、営業・開発・生産一体体制での売上向上活動を展開。また現場診断(生産性向上・原価低減の可能性診断、改革マネジメントレベル診断)についての、プログラム開発や実施経験も豊富。 人材教育では、「生産革新コース(IE士認定)」や「生産技術者コース(CPE認定)」の講師として、その実践的な内容は好評を得ている。「生産マイスター」の通信教育テキストやスクーリング開発の監修も実施。

出典:NEC運営サイト「N-town」<中堅・中小企業の改革物語>

掲載日:2014年10月10日

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