本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

スタートアップガイド

J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト

  • J-Net21とは
  • スタートアップガイド
中小機構
  • メルマガ登録
  • RSS一覧
  • お問い合わせ

HOME > 経営をよくする > 中堅・中小企業の改革物語

中堅・中小企業の改革物語 中堅・中小企業が、激動の時代を生き抜く為のヒントをコンサルタントの視点からお伝えします。


第6回 食品専門商社D社の物語~その1

1.ある食品専門商社D社の話

D社は食材を海外・国内各地から仕入れ、日本全国の小売店や問屋、また、弁当や惣菜のベンダーに卸している食品専門商社です。
この会社は食品専門商社として成長を続ける秘訣は2つあるとコンセプトに掲げています。それは、

1)圧倒的な価格競争力
2)豊富な品ぞろえ

です。日本の食文化は「高級志向」と「低価格志向」に二分化しており、問屋をやるのであれば安価な食材を品揃えし、価格競争力を持つことで「低価格志向」の市場で勝てると社長は睨んだのです。そのため、価格に徹底的にこだわることで、同一規格の食材を他社よりも5-10%程度安く卸すことを実現し、市場が縮小する中でも、毎年10%のペースで売上高アップを続けている成長企業です。

しかしながら、あまりに急激に成長した会社は高度化する顧客のニーズに対応しきれていないと感じ始めておりました。会社が大きく成長し、取引先が広がり、取り扱う品種や量が増えることで、在庫の管理が難しくなり、欠品や過剰在庫の問題も起こりました。

また、企業として守るべき安全・安心な商品を供給するという面においては、クレーム対応・クレーム削減に向けた管理体制が追い付かず、クレームの増加傾向に歯止めがかかりませんでした。結果として、欠品やクレームのために、お客様の信頼を失ってしまう事態が起こり始めました。

一般的に企業はQCD(Quality‐品質、Cost‐コスト、Delivery‐納期)の3つの競争力をバランスよく実現していなければなりません。このD社においては、C面は創業時から圧倒的な競争力を持っていましたが、それが故にD面、Q面については後手に回ってしまい、3つのバランスが崩れていたのです。それに気づいた社長はD面、Q面の強化を図るためにプロジェクトを立ち上げました。それぞれの改革テーマは次の2つです。

・D面:「適正在庫コントロールによる欠品撲滅と適正在庫の同時実現」
・Q面:「クレーム対応レベルの向上とクレーム削減」

そこで、第6回では「D面」の改革、第7回では、「Q面」の改革について紹介します。

2.D社の仕入れの実態

D社で取り扱っている食材は約1000種類あり、約7割を海外からの仕入れに頼っています。海外からの仕入れのため、発注から納入までのLT(リードタイム)が2~3ヶ月と長く、一回に発注する量もコンテナの単位にまとめなければいけないという制約があります。これら発注する量の計算とコンテナ単位へのまとめは手計算で行っており、非常に手間がかかります。

また、中国の食品工場から多く仕入れていることもあり、通関の遅れなどで納期遅れもしばしば発生している状況でした。

もともと、D社の在庫管理の基本ルールは全商品一律で月末に平均販売量の1ヶ月分の安全在庫が残るように発注することでした。

しかし、販売量が変動し在庫が少なくなってくると、都度追加発注を行なったり、あるいは在庫が過剰になると発注を止める、コンテナ単位にまとめるために、発注量を増やしたり減らしたりするというような調整を担当者ごとに行っていました。

その結果、在庫が過剰になることや商品によっては欠品が発生し、また欠品が発生することでお客様への対応や仕入れ先に追加発注などが発生し業務が混乱している状態でした。

欠品をなくし、在庫を適正にコントロールしていくためには、個々人に依存した発注のやり方を改める必要がありました。そこで、「シンプルで適切な発注ルールを作り、それをみんなで守ること」という方針のもと、改革に取り組みました。

3.シンプルで適切な発注ルールづくり!

D社の発注方法は、上記のとおり、発注日は個々人でバラバラ、また、発注量の決め方も統一されておらず、「不定期不定量」の発注方式になっていました。これを「定期不定量」に改めることを決めました。

まずは不定期だったものを毎月1回の定期とし、発注担当者が発注する日を決め、適切な発注量の決め方を定めました。

発注量については、全品目一律で1ヶ月の在庫を保有するような発注方法でしたが、D社の商品は、1000種類と多品種であり、その販売量も常に変動するため、1ヶ月の在庫を持っていても、欠品になる商品もあれば、逆に過剰在庫になる商品も出てきてしまいます。そこで、商品ごとに安全在庫量を設定する方法に変えました。たとえば、販売量のバラツキの大きい商品の場合、安全在庫を厚めに持っておき、平均よりも多く売れたときに欠品が起こらないように対応します。逆に毎月ほぼ平均的に販売量が推移をする場合は安全在庫の設定は少なくて良いので安全在庫はぎりぎりまで少なくし、平均的な量の発注で対応するということになります。

このような安全在庫の基本的な考え方に基づき、販売実績から統計的に算出するルールを決めるとともに、商品特性別に安全在庫の欠品許容率の設定を行いました。通常欠品率をゼロにしようとすると、安全在庫は極端に多くなり、在庫が増えることになります。しかし、D社では在庫削減も同時に実現する必要があるのです。

そこで、定番等月販量が多い売れ筋品は欠品許容率を低くすることで安全在庫量を増やし、月販量が少なく代用品を充てることで欠品による顧客への影響を最小限にできる商品は、欠品許容率を高くして安全在庫量を減らすことで、全体の在庫量を少なくするのです。

その方針に従い、在庫管理システムから売上量・仕入量・在庫量のデータを月別・商品別に抽出し、過去の傾向から統計的に商品ごとの発注量を算出できるようにしました。

2つ目に海外仕入品に頼っているD社で考えなければいけないこととして、1000種類それぞれの発注する量を算出後、仕入先別にコンテナ単位に発注量をまとめることがあります。コンテナ単位にまとめるために、どの商品をどのくらい増減させるかを自動的に計算して、発注量を決められるようにしました。従来はこれらを手計算で行っていたために非常に時間を要していましたが、システムで自動的に算出できるように改良し、結果的に発注業務の効率化にもつながりました。

上記のルールに基づき、仕入担当者は発注日を確実に守り、計算された発注量にて発注を行っています。これまでは不定期の発注であり、仕入先と取り決めた納入LTより短い納期での発注も見られました。これでは、仕入先も納期を守ることが難しくなり、結果として欠品につながるケースも目立っていました。つまりD社自身が仕入先との約束を守れていないこともあったのです。D社自身が納入LTを守った発注を確実にすることで、納期遵守率の向上のために仕入先への働きかけもできるようになりました。

このようなシンプルなルールを決め、それを確実に守ることにより、欠品は定番商品ではほぼなくなり、在庫は従来の約30%削減をすることができました。また、業務の混乱も解消し、効率化も実現しています。

次回は、Q面:「クレーム対応レベルの向上とクレーム削減」について紹介致します。

<本稿は筆者の見解に基づくものです>

筆者

角田 賢司

角田 賢司氏

株式会社 日本能率協会コンサルティング
経営コンサルティング事業本部 チーフ・コンサルタント

IEをコア技術として収益向上のコンサルティングに取り組んでいる。これまでに、自動車(部品)、化学プラント、樹脂成型、建材、食品等、多くの業種で収益向上の支援を実施。支援内容としては現場の生産性向上、品質向上をはじめとし、調達コストダウンや在庫削減等、複数テーマを同時に展開、マネジメントの支援を行う。近年は製造業のグローバル化に伴い、タイ・中国などの製造拠点支援として、生産性向上や品質向上の成果実現と併せ、マネジメントの仕組みづくり、ローカル人材育成も実践している。

出典:NEC運営サイト「N-town」<中堅・中小企業の改革物語>

掲載日:2014年9月29日

前の記事次の記事


このページの先頭へ