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HOME > 経営をよくする > 中小企業大学校の上手な使い方 成長企業にみる人材育成

中小企業大学校の上手な使い方 成長企業にみる人材育成


後継者研修で経営の基礎を習得

株式会社 一ノ蔵

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低アルコール酒を保存する新倉庫

宮城県を代表する日本酒メーカーの一ノ蔵は、県北部に位置する旧松山町(現大崎市)の丘陵地帯に蔵を構える。創業は1973年(昭48)。県内4つの酒蔵が一つに統合し、新たな蔵を立ち上げたという経緯を持つ。酒造りでは手づくりの仕込みを堅持する一方、低アルコール酒開発や農業など新事業にも積極的。伝統と進取の精神が混合した社風が強みだ。

「強い信頼関係で結ばれた家族的な良さと、新しいことに挑戦する企業としての良さが融合している」と、自社の社風を表現する松本善文社長。同社では創業4家の人間が順番に社長に就いており、創業時の社長だった松本善作氏を祖父とする松本社長は6代目となる。

松本社長は大学の醸造学科を89年に卒業後、社会経験を積むために大手スーパーに就職した。青果担当としてサービス業を6年間経験した後、95年に一ノ蔵に入社する。
 将来の後継者を嘱望されて家業に入ったが、経営に関してはまったくの素人。そこで、当時副社長だった櫻井武寛氏(現会長)の勧めもあり、95年の10月から中小企業大学校東京校の「経営後継者研修」に参加した。

同研修は企業の後継者を対象に、1年間(現在は10カ月間)にわたり開講された。前半の座学形式の授業から、後半のゼミナールや企業訪問実習まで、経営の基礎をしっかりと教え込まれた。また、現在でも相談ができる講師の先生や、異業種の後継者たちと知り合えたことは大きな財産になった。「1年間で世界が変わった」と松本社長は振り返る。

松本社長が大学校を利用して以降、ほかの創業家の若手幹部候補も東京校の長期コースを活用した。鈴木整常務と三浦博光執行役員の2人は「経営管理者研修」、浅見周平執行役員は松本社長と同じ「経営後継者研修」を受講した。入社1年目の05年に受講した鈴木常務は「経営企画から財務まですべてが網羅されていて、実践的なことを勉強できた」と話し、04年に受講した三浦執行役員も「自社と子会社の財務諸表合計10期分を分析する課題を通じ、自社の成長の軌道や課題を把握できた」と成果を語る。

また同社では、大学校で学んだ内容は社内にフィードバックし、自社のスキルアップ研修などに活用しているという。

伝統を時代によって進化・低アルコールの発泡性清酒「すず音」

「伝統産業は、時代によって進化していかないと継承されない」-。大学校での研修の後半、京都の織物デザイナーを訪問した際に聞いたこの言葉を、松本社長は今でも大切にしている。消費量が頭打ちとなっている日本酒業界にも同じことが言えると考えるからだ。
 一ノ蔵は創業以来、新たな日本酒の開発に積極的に取り組んできた。それを象徴するのが、アルコール度数5%程度の発泡性の清酒「すず音」の商品化だ。

すず音の発売は98年。開発を担当したのは3代目社長の鈴木和郎氏。鈴木氏は当時課長だった松本社長に、すず音の販売を一任した。松本社長はアルコールに強い方ではなく、酒に弱い人の気持ちがわかると見込まれたのかもしれない。松本社長自身も低アルコール酒の将来性に大きな期待を持っていた。

すず音の販売戦略を練る中で、大学校で学んだ経験が生きた。発売から5、6年が過ぎ、順調に販売量が伸びていたころ、松本社長は「今後さらに拡大させるには何をすべきか」という戦略の再考を試みた。その際、大学校で学んだSWOT(スウォット)分析やブレーンストーミングなどの手法を活用し、現状の分析と今後取り組むべき方策を見いだした。

その結果、現在では低アルコール酒の年間販売量は約100万本、売上高に占める割合も14%にまで成長した。既存の日本酒の消費量が低迷する中、新たな柱ができた意義は大きく、会社の成長を支えた。10年8月には温度管理の難しい低アルコール酒のための倉庫を新設。倉庫の一部分には小規模な仕込みを行えるテストプラントも備え、新製品開発にさらに力を入れる考えだ。

主力製品「無鑑査本醸造」をリニューアルへ

一方で、伝統的な日本酒を取り巻く環境は厳しさを増している。若い世代を中心に日本酒離れが止まらないことに加え、リーマン・ショック以降の不況は、同社のように手づくりの酒にこだわるメーカーにとって大きな打撃となっている。
 そんな中で同社は、新製品開発に加え、既存の主力製品のリニューアルにも取り組むことを検討している。

同社の主力製品は77年に発売した「無鑑査本醸造」。国の監査によって等級や酒税が決められていた当時の級別制度を否定し、良質な酒を安く市場に供給した同製品は、一ノ蔵の名前を全国に広めるきっかけになった。

リニューアルでは原料の見直しを行うほか、無鑑査の意味を説明したラベルの文章も変更する予定だ。「今は級別制度は廃止されているため、『無鑑査』の意味も時代とともに変えていく」(松本社長)という。77年の発売以来、無鑑査のリニューアルは初めてとなる。震災の影響で延期となっているが「全国の皆様から頂いている応援にお応え出来るよう、品質に磨きをかけ、より良い商品にしていきたい」(同)と力を込める。

企業データ
株式会社 一ノ蔵
代表者 代表取締役社長 松本善文
所在地 宮城県大崎市松山千石字大欅14
電話 0229-55-3322
設立 1973年1月
資本金 1億5000万円
社員数 160人
主要事業 清酒製造業

掲載日:2012年5月31日

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