「『企業は人なり』がわが社の原点だ」。長崎県を地盤にキヤノン製複合機などのOA機器販売やソフトウエア開発を手がけるイシマル。モノや情報サービスを提供する人材があってこその会社だけに、石丸利行社長は人づくりに大きな力を注ぐ。
同社の歴史は古く、1883年(明治16)にまでさかのぼる。福岡で南画家として知られた石丸春牛氏の孫である石丸国吉氏が、長崎市で筆・墨の製造販売したのが始まりだ。その後、文房具用品を扱う「石丸文行堂」となり、1973年に商事部門が独立してイシマルを設立した。
「事務用品の近代化を見てきた」と石丸社長。イシマルは扱う商材を広げたほか、人材を育ててソフトウエア開発に参入するなど、時代の変化に対応してきた。同社の人材育成術は社内教育だけでなく、外部の公的機関の効果的な活用にある。
受講者が中核社員として頭角表す
「私も受講生の一人です」と振り返るのは社内人事や教育を総括する高橋憲一常務だ。中小企業大学校を活用し、毎年30人程度の社員が営業管理者養成コースや単発の研修を受講している。「費用は民間企業に委託するのに比べて安く、管理者としてのノウハウを共通言語で学べる」と高橋常務は利点を強調する。「受講者は本当に勉強する人間を会社が選別している」とし、大学校で学ぶことは一種のステータスになっている。
大学校で学んだ社員は北九州支店長や本社の課長職など、同社の中核社員として頭角を現している。「常に議論のリーダーとなり、汗を流して知恵を振り絞っている」と周囲の社員への刺激にもつながっている。
21世紀ビジョンを策定
「世の中が変わる中、自社の問題点を洗い直さなくてはいけない。それが21世紀ビジョンだった」と石丸社長は語る。
新世紀を間近に控えた2000年、自社がどんなビジネスモデルで成長していくのか、道筋を示すために全社員から現状の改善点を募った。その後、部長級の社員が集まって課題や会社の使命を111時間にわたって議論した。「顧客とWIN−WINの価値づくりのために何をすべきか」と社員たちは頭を悩ませた。部長職の社員たちは自分たちの力不足を強く感じていたという。まずはリーダーが自ら変わる、その上で次代を担う若手社員の教育にも力を注ごうと決めた。
OA機器の販売業界は顧客の事業所統廃合などで市場環境は厳しい。高橋常務は「同業は淘汰(とうた)され、今はメーカー販社との競争が激しい」と悩む。それだけに「調達先のメーカーにおんぶにだっこではダメ。自立できる会社になるためにも人づくりしかない」と教育に手を抜かない。「義理人情だけで今は商売できない」とし、取引実績に合わせて訪問回数を変更するなど、データに基づいた営業手法を駆使する。最近では環境ビジネスを始めるなど、守備範囲は事務用品にとどまらず、オフィスの総合コンサルタントの印象が強くなっている。
01年にはデータセンターを開設した。地元中小企業は投資を最小限に抑えて、セキュリティ対策やホームページ作成などが可能になった。「『困ったときはイシマルに頼めば解決してくれる』。そんなパートナーでありたい」。石丸社長はそう決意している。
株式会社 イシマル
代表者 | 代表取締役社長 石丸利行 |
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所在地 | 長崎県長崎市田中町587-1 |
電話 | 095-834-0140 |
設立 | 1883年3月 |
資本金 | 5000万円 |
社員数 | 181人 |
主要事業 | 事務用品・OA機器などの販売、保守、点検、修理事業。ソフトウエア開発等 |

掲載日:2010年3月12日