愛知県東海市は、豊かな海に囲まれた知多半島の付け根に位置する。温暖な気候の東海市は農作物の栽培もさかんで、フキの生産量は全国1位。ここでダイニチ食品は漬物や総菜などの製造を手がけている。東海市周辺の消費者には親しみあるブランドだ。近年は知多半島産の野菜を多く使用した"地産地消"の製品開発に力を入れている。
2009年に創立50周年を迎えた同社。社員一人ひとりが自分の長所を磨き「小さいながらもきらりと光る会社」(鈴木保社長)が目標だ。企業が光るには、人の成長があってこそという持論を持つ鈴木社長は「人の成長には自らを省みて気づき、行動することが欠かせない」と語る。
しかし、漬物の製造は朝早くから始まり、工場も365日休み無く稼働している。その中で自身を省みるのは難しく、仕事もマンネリ化してしまいがち。そこで「異業種と触れあい、日々の仕事の進め方や部下の指導などについて新たな刺激を受けてほしかった」(鈴木社長)との思いから、中小企業大学校の受講を決めた。
異業種との交流で意識に変化
同社は09年に経営管理者養成コースなどを受講。経営管理者養成コースを受講した高島義光営業部長は「毎日仕事に追われる中での受講を、最初は面倒だなと思った」と正直な感想を語る。
高島部長が受けたゼミは講師1人で受講者は6人。グループワークを多用し、受け身にならない形式だ。研修では、一緒に受講する異業種企業の視点が大きな刺激となったという。「次第に講義に熱が入り、積極的に参加するようになった」(高島部長)と、意識の変化も生まれた。
しかし、ある業界で常識とされることは、別の業界から見れば非常識に見える点もある。「講義をより良いものにするには、異文化を尊重し合ってそこから学ぶという姿勢を持つことが重要」(同)という。
中小企業大学校を受講するのは中小企業ばかりだ。「規模の大小や業種の違いこそあれど、部下の育成などでぶつかる壁は同じ。悩むのは自分だけではないのだと心強かった」(同)という。そこで出会った人との交流が、後々ビジネスに結びつくという思わぬ収穫もあった。
鈴木社長も、高島営業部長の受講後の姿勢について「受講をきっかけに、自分が次代を担う人材を育てるのだという意識が高まっているようだ」と笑顔を見せる。「まだ変わり始めたばかり」(鈴木社長)と言いつつも、その変化に目を細める。
新たな展開を模索
近年、食の欧米化で漬物市場は逆風下にある。全国の漬物製造会社は、ここ10数年で半数が倒産や淘汰(とうた)の波にのまれた。「かつて漬物は食卓のお供だった。このままでは、日本の伝統的な食文化が失われてしまう」と鈴木社長は懸念する。
こうした状況を打破すべく、若い人にも受け入れられる漬物の開発を模索中だ。学校給食に漬物を取り入れてもらうなど、漬物を食べる機会を作ってもらおうと余念がない。今後について「受講で受けた刺激でさまざまな提案をし、若い人主導で新しい展開を切り開いていってほしい」と期待を込める鈴木社長。中小企業大学校の受講は、新たな戦略を描くきっかけにもなりそうだ。
ダイニチ食品 株式会社
代表者 | 代表取締役社長 鈴木保 |
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所在地 | 愛知県東海市富木島町東広52 |
電話 | 052-604-1403 |
設立 | 1959年11月 |
資本金 | 5000万円 |
社員数 | 180人 |
主要事業 | 漬物、総菜、つくだ煮の製造販売 |

掲載日:2010年3月12日