ここが知りたいREACH規則

ここが知りたいREACH規則

EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介

Q
2018年10月12日更新
Q.526 ナノ形状の二酸化チタンを0.1%以下含有した消臭剤をアメリカに輸出する計画です。消臭剤には二酸化チタン以外は天然物しか入っていません。法規制対象となるのでしょうか。

貴社製品のようなナノ形状の二酸化チタンを含有した消臭剤をアメリカに輸出する場合に対象となる可能性のある法規制は、以下の通りです。

1.アメリカに輸出する際の規制

ナノスケール物質を米国へ輸入する場合、有害物質規制法(TSCA)第8条(a)による報告義務が要求されます。
 2017年1月12日、米環境保護庁(EPA)は、TSCAに基づき、ナノスケールで製造または加工される特定の化学物質に関する報告および記録保持の義務を定める最終規則1)を公告しました。この中で、これらの化学物質の製造(輸入を含む)する者、加工する者は、規定された情報をEPAに報告することを求めています。
 報告を求められる情報としては、報告者が知っている、または十分に確認可能な範囲において、特定の化学的特性、生産量、製造方法あるいは加工方法、ばく露と放出に関する情報、環境と健康に対する影響に関する既存情報が含まれています。
 最終規則の発効日以前の3年間に報告対象となる化学物質を個別の形状で製造あるいは加工した者は、最終規則の発効日後1年以内にEPAに報告することが求められています。また、最終規則発効日以降に対象物質を製造あるいは加工しようとする者は、製造あるいは加工の少なくとも135日前までに、EPAに対して報告することが求められます。
 なお、最終規則において報告対象となる化学物質は以下のように規定されています。ただし、この指標は対象となる化学物質を特定するためのものであり、ナノスケール物質の定義を確立するものではありません。

  • 25°Cの標準大気圧で固体であり、少なくとも1次元において1~100nmの間のサイズで弱凝集または強凝集を含めた粒子として製造または加工されている。
  • 少なくとも1つ以上の独特で新規な特性を示すように製造または加工されている。
  • 弱凝集および強凝集を含め、1~100nmのサイズをもつ粒子の重量含有率が1%未満であるよう製造あるいは加工された化学物質は報告対象としない。

貴社製品の場合、ナノ形状の二酸化チタンの含有は0.1%以下であるため、報告対象とはならないと考えられます。

また、アメリカにおいて消臭剤は化粧品として分類されています。アメリカで販売する化粧品に関する重要な法律としては、連邦食品、医薬品および化粧品法(FD&C法)2)および適正包装表示法(FPLA)3)があります。
 医薬品、生物製剤、医療機器などとは異なり、化粧品および成分は、着色料添加物を除いて、アメリカ 食品医薬品局(FDA)の市販前承認を必要としていません。一般に、着色添加物および規制によって禁止または制限されている成分を除き、製造者は化粧品の処方に任意の成分を使用することができます。ただし、化粧品会社は、製品や成分の安全性についての法的責任を負うと規定されており、FDAは、法律を遵守していない製品、または法律に違反している企業や個人に対して執行措置を求めることができます4)。また、製品の表示内容としては、商品名のような製品を特定する文言、製造・包装・販売などの事業者名および所在地、製品の内容量、使用上の注意事項や警告、成分などを英語で表示することが求められています。表示方法や表示位置などについてはFDAによる化粧品における表示ガイド5)により確認することができます。

現時点では二酸化チタンのナノ物質は、禁止や制限物質にはリストされていません。ただし、化粧品にナノ物質を使用するためのガイダンス6)が発表されているため、その安全性に対する評価を検討し、その安全性が十分に立証されていない場合、「警告―本製品の安全性は確認されていません。」"Warning ―The safety of this product has not been determined. "という警告表示を行うことが必要です。

2.アメリカに輸出し、カルフォルニア州で販売する場合

プロポジション65(安全飲料水および有害物質施行法)7)はカルフォルニア州の州法であり、がん、先天性障害またはそのほかの生殖障害を引き起こすおそれのある化学物質を特定しています。その化学物質を含有し、ばく露する可能性がある製品をカリフォルニア州で販売する場合、警告表示を行うことを義務付けています。法規制の概要と警告内容については、2017年3月17日付けコラムならびに2018年7月21日付けコラムを参照ください。

プロポジション65の対象となる物質リスト8)において、二酸化チタンは「二酸化チタン(大気中に浮遊し、呼吸により取り込まれる大きさの非結合の粒子)」"Titanium dioxide(airborne, unbound particles of respirable size)"と表記され、毒性タイプががんとして収載されています。しかし、最大許容量レベルを示すセーフハーバーレベルは設定されていません。この場合、予想されるばく露レベルががんを引き起こさないと証明できなければ、警告表示を行うことが求められます。したがって、貴社製品における二酸化チタンのばく露レベルががんのリスクがないと判断できる明確な根拠がない場合、警告表示を行う必要があると考えられます。消臭剤の特性として、物質が大気に放散される点についても十分に考慮する必要があると考えられます。

二酸化チタンをはじめとしたナノ形状の物質は、バルク状態時よりも形状がごく小さくなることにより、特有の物性を示すことが知られています。従来の材料にはない優れた性質を有する新素材が得られることから、現在ではさまざまな製品用途に用いられています。

一方で現状、ナノ形状の物質における人の健康や環境に対する影響に関する知見は十分に得られておらず、各国のさまざまな研究機関で動物研究や実態調査が行われています。今後新たな知見が得られ、その影響評価次第では、規制化の動きが進むと考えられます。アメリカにおける規制に関しても、消費者製品の使用に伴う人の健康や安全に対する不当なリスクから国民を保護することを目的としている米国消費者製品安全委員会(CPSC)や前述のFDAにおいては、ナノ形状の物質における対応については検討段階にあるため、今後の動向を注視することが肝要です。

1)https://www.federalregister.gov/documents/2017/01/12/2017-00052/chemical-substances-when-manufactured-or-processed-as-nanoscale-materials-tsca-reporting-and
2)https://www.fda.gov/RegulatoryInformation/LawsEnforcedbyFDA/FederalFoodDrugandCosmeticActFDCAct/default.htm
3)https://www.ftc.gov/enforcement/rules/rulemaking-regulatory-reform-proceedings/fair-packaging-labeling-act
4)https://www.fda.gov/Cosmetics/GuidanceRegulation/LawsRegulations/ucm074162.htm
5)https://www.fda.gov/cosmetics/labeling/regulations/ucm126444.htm
6)https://www.fda.gov/Cosmetics/GuidanceRegulation/GuidanceDocuments/ucm300886.htm
7)https://oehha.ca.gov/proposition-65
8)https://oehha.ca.gov/proposition-65/proposition-65-list

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

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