ここが知りたいREACH規則

ここが知りたいREACH規則

EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介

2019.03.29

REACHに関わる最近の情報から-認可対象物質のWTO TBTの通知とCL物質案への意見募集など-

気になります英国のEU離脱(ブレグジット)については、英国・EU合意案の採決は、英国議会で3月14日に行われ、6月末までの離脱延期を要請することが可決されました。ただし、3月20日までに政府が議会に問う3度目のブレグジット合意案採決が否決された場合は、長期間の離脱延期や5月の欧州議会選挙への参加が必要となる可能性を議会が承知するということの条件が付けられています1)。このような状況の中で、英国議会の下院議長は3月18日に、3月12日に否決された合意案と実質的に変わらない内容であれば、3度目の採決にかけることはできないとする声明を発表しています2)
 他方、3月21日に欧州理事会(EU首脳会議)は、英国のEU離脱(ブレグジット)延期要請に対しては、3月25日の週に英国議会が離脱協定案を承認すれば、5月22日までの延期を認めるが、その週に承認が得られない場合は4月12日までの延期とすることで合意しています3)

ブレグジットの行方は、混沌として、見通せない状況ですが、REACHの動きは止まることなく進められています。

今回のコラムでは、REACHにまつわる情報をいくつかご紹介します。

I.認可対象物質(附属書XIV収載物質)のWTO TBTの通知について

現在、附属書XIVに収載されている認可対象物質は43物質ですが、2019年2月15日に表1に示します12物質を追加収載するための規則案がWTO TBT通知されています4)

表1中の#は附属書XIVに収載される場合の通し番号です。60日間のコメントを受け付けています。公布は2019年10月が予定されており、公布20日後に発効します。認可申請の期限は発行後、#44~46は18カ月後、#47~49は21カ月後、#50は24カ月後、#51~54は27カ月後、#55は36カ月後になっています。
 認可を申請していなければEU域内で使用できなくなる日没日は、それぞれ認可申請期限の18カ月後です。これらの物質は、すでにECHAから欧州委員会へ勧告されていながら附属書XIVへの収載が見送られていた物質です。いつ勧告が出されていたかを備考欄に示しています。第5次勧告からは#55の1物質、第7次勧告からは5物質、第8次勧告からは6物質が収載されています。今回の収載案では#55の呼吸器感作性物質が含まれていることに着目すべきではないかと思います。

第8次の勧告までにCL物質のうち91物質が勧告されていましたが、今回の規則案の対象である12物質を除くと、あと36物質が残っていることになります。なお、この36物質のうち18物質は第9次としてすでに勧告されています5)

表1 2019年2月15日にWTO TBT 通知された附属書XIV収載物質案
# 物質名 EC番号 有害性 主な用途 備考
44 1,2-ベンゼンジカルボン酸ジへキシルエステル, 分岐および直鎖 271-093-5 生殖毒性1B シーラント、潤滑剤、可塑剤 第7次勧告
45 フタル酸ジへキシル 201-559-5 生殖毒性1B 可塑剤 第7次勧告
46 フタル酸ジC6‐C10アルキルエステルフタル酸ジエステル:フタル酸ジヘキシル(EC No.201-559-5)0.3wt%以上を含むフタル酸、デシル、ヘキシル、オクチルジエステル混合物 271-094-0
272-013-1
生殖毒性1B 可塑剤等 第8次勧告
47 リン酸トリス(ジメチルフェニル)(リン酸トリキシリル) 246-677-8 生殖毒性1B 耐火流体、
油圧用流体
第7次勧告
48 過ホウ酸ナトリウム;過ホウ酸,ナトリウム塩 239-172-9
234-390-0
生殖毒性1B 洗濯用洗剤、食器洗い機用漂白剤 第7次勧告
49 ペルオキソメタホウ酸ナトリウム(過ホウ酸ナトリウム) 231-556-4 生殖毒性1B 洗濯用洗剤、食器洗い機用漂白剤 第7次勧告
50 5-sec-ブチル-2-(2,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)-5-メチル-1,3-ジオキサン [1], 5-sec-ブチル-2-(4,6-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)-5-メチル-1,3-ジオキサン [2] [[1] および [2]あるいはその任意の組み合わせの個々のすべての立体異性体を包含する](「KARANAL」)
(413-720-9)
vPvB 香料 第8次勧告
51 2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール(UV-328) 247-384-8 PBT、vPvB 紫外線吸収剤 第8次勧告
52 2,4-ジ-tert-ブチル-6-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール(UV-327) 223-383-8 vPvB 紫外線吸収剤 第8次勧告
53 2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(tert-ブチル)-6-(sec-ブチル)フェノール(UV350) 253-037-1 vPvB 紫外線吸収剤 第8次勧告
54 2-ベンゾトリアゾール-2-イル-4,6-ジ-tert-ブチルフェノール(UV-320) 223-346-6 PBT、vPvB 紫外線吸収剤 第8次勧告
55 ジアゼン-1,2-ビスカルボキサアミド(C,C'-アゾジ(ホルムアミド))(ADCA) 204-650-8 呼吸器感作性 発泡剤 第5次勧告
II. CL物質(認可対象候補リスト収載物質)案への意見募集

現在、認可対象候補リストには、197物質が収載されていますが、2019年3月13日に、表2に示します3物質が提案され、2019年4月29日まで意見募集がされています6)(表中の#は筆者が付した番号です)。
 #1と#3はすでに登録されており、この登録情報から懸念がある物質として提案されています。#2は未登録ですが、すでにCL物質として指定されているグリコールエーテル類と類似の性質があること、これらの物質が#2に代替される可能性があることなどを考えての予防的な提案と言えます。

表2 意見募集が行われているCL収載物質
# 物質名 EC番号 有害性 主な用途
1 トリス(4-ノニルフェニル、分岐および直鎖)亜リン酸エステル、0.1%以上の4-ノニルフェニノール(分岐および直鎖)を含有 - 内分泌かく乱性
(57f 環境)
フッ素ポリマーの加工助剤
2 2-メトキシエチル酢酸エステル 203-772-9 生息毒性
(57c)
(未登録。すでにCL物質のグリコールエーテルの代替の可能性があるため)
3 2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(ヘプタフルオロプロピオオキシ)プロピオン酸、その塩およびそのハロゲン化アシル(それらの異性体単独および混合物) - 重大な影響の可能性(57f 環境および人) ポリマー酸化防止剤

また、p-tert-ブチルフェノール(以下、PTBP)について、2016年にドイツからCL物質とする提案書が出されていました。しかし、ECHAの加盟国委員会での検討では、3カ国が有害性情報の試験データの信頼性が低いなどの理由でCLへの収載に反対しました。そのため、2017年にECHAは、REACH規則第59条第9項に従い、加盟国委員会の意見を付してCLへの収載可否の決定を、欧州委員会へ付託していました。
 欧州委員会は、3ヵ国以外の大多数の加盟国が内分泌かく乱性の有害性があることに合意していることから、有害性情報の試験データの信頼性が低いという疑問に同意せず、この物質の内分泌かく乱性のデータは、WHO/IPCS(World Health Organization/International Programme on Chemical Safety)の定義7)に該当するとして、CL物質として収載すべきとし、その委員会施行決定案を2019年2月7日にWTO TBT通知をしています8)

III. 制限提案について

2019年3月26日現在、表3に示す制限提案文書が公表され、意見募集が行われています9)

表3 意見募集されている制限提案
# 物質名 EC番号 制限提案報告書への
意見提出最終期限
1 コバルト塩類(硫酸、硝酸、塩酸、炭酸、酢酸) - 2019年6月19日
2 N,N-ジメチルフォルムアミド 200-679-5 2019年6月19日
3 フォルムアルデヒドおよびフォルムアルデヒド放出剤 - 2019年9月20日
4 マイクロプラスチック - 2019年9月20日
5 オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6) 209-136-7
208-764-9
208-762-8
2019年9月20日

個々の制限案の詳細な内容については省略しますが、#4について少し触れておきます。
 ご承知のとおり、マイクロプラスチックの問題はわが国でも検討されていますが、EUにおいては、プラスチックによる環境問題に対して積極的に規制化を進めています。制限提案文書では、小さい粒子のプラスチックを含有する成形品の上市を制限する内容になっています10)
 また、EU域内での循環社会の構築を目的に、プラスチック使用量を低減するための義務を課す指令を立案し、その指令案をWTO TBT通知しています11)
 この指令案は、使い捨てのプラスチック製品、オキソ分解性プラスチック製の製品、およびプラスチックを含む漁具に適用され、包装廃棄物指令(94/62/EC)および廃棄物枠組み指令(2008/98/EC)と矛盾する規制を定めている場合は、この指令案の規制が優先されることになっています。
 このようにEUでは、プラスチックの使用の低減や制限を強化するための法規制が進められており、その対応の準備をしておくことが必要になると考えます。

参考資料
1)https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/03/7d424300c370175d.html
2)https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/03/ff67fa5c094ac7b7.html
3)https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/03/a8042b8953e93a9f.html
4)http://ec.europa.eu/growth/tools-databases/tbt/nview.cfm?p=EU_643_EN
5)http://j-net21.smrj.go.jp/well/reach/column/180921.html
6)https://echa.europa.eu/substances-of-very-high-concern-identification
7)http://www.who.int/ipcs/publications/new_issues/endocrine_disruptors/en/
8)http://ec.europa.eu/growth/tools-databases/tbt/en/search/?tbtaction=search.detail&Country_ID=EU&num=641&dspLang=en&basdatedeb=01/11/2018&basdatefin=24/03/2019&baspays=&basnotifnum=&basnotifnum2=&bastypepays=CE&baskeywords=
9)https://echa.europa.eu/restrictions-under-consideration
10)https://echa.europa.eu/documents/10162/0724031f-e356-ed1d-2c7c-346ab7adb59b
11)http://ec.europa.eu/growth/tools-databases/tbt/en/search/?tbtaction=search.detail&Country_ID=EU&num=642&dspLang=en&basdatedeb=01/11/2018&basdatefin=24/03/2019&baspays=&basnotifnum=&basnotifnum2=&bastypepays=CE&baskeywords=

(林 譲)

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

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