ここが知りたいREACH規則

ここが知りたいREACH規則

EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介

2019.02.08

春節前の東アジア各国の動向

2019年は2月5日(火)が春節でした。中国、台湾、韓国などでは、その前後が祝日となり、本原稿が掲載される2月8日は中国・台湾ではまだ祝日の最中になります。
 さて、これら東アジアの国々では、春節前に化学物質法規制に関する動きがそれぞれありましたので、今回はその内容をご紹介します。

1.韓国

韓国については2019年1月1日から改正K-REACHがスタートしました。改正K-REACHについては、本コラム「韓国K-REACHの2019年の対応について」でも取り上げていますので参照ください。
 一方、労働災害の防止を目的とした「産業安全衛生法」も1月15日に全面改正1)されました。韓国では、産業安全保健法においても化学物質に関連する事項として「新規化学物質の申告」や「ラベル・SDSの作成・提供」などの義務が定められています。
 産業安全保健法の全面改正によって、化学物質に関連する内容としては、化学物質による労働災害の防止に向けて、国がSDSを把握するとともに、化学品の危険有害性に寄与する成分情報の提供先への開示の促進を図るため、2021年1月16日からSDSに関連する事項が強化されることになりました。

具体的には、SDSの提供は化学品の供給者にあることは変わりないものの、製造者・輸入者に対して作成したSDSを雇用労働部に提出することが新たに義務付けられました。また、SDSの成分情報の記載についても、本来記載しなければならない成分を営業機密として秘匿する場合には、雇用労働部の承認が必要になります。

また、1月31日には、産業安全保健法施行規則の一部改正2)が公表され、同日より、新規化学物質に対してK-REACHで登録を行えば、産業安全保健法による危険性・有害性調査報告書を提出したことと見做すことになりました。ただし、新規化学物質の製造・輸入量が100kg~1t未満の場合は2020年1月1日から適用される予定です。

2.台湾

台湾では主要な化学物質規制であり、2018年5月に改正法案が公表されていた「毒性化学物質管理法」が2019年1月16日に改正3)され、名称も「毒性および懸念化学物質管理法」に変更されました。なお、改正点の多くは1年後から施行される予定です。
 同法を所管する環境保護署は、今回の改正の主要項目として国家化学物質管理委員会の新設や事故防止および緊急時対応の強化など7項目をあげていますが、この中で最も企業への影響が想定されるのが、これまで規制対象であった毒性化学物質に加えて新設された「懸念化学物質」に関する内容です。
 懸念化学物質は、従来からの規制対象であった毒性化学物質以外に、その物質の特性や利用状況などから、人の健康や環境に悪影響をもたらすとして当局が指定する物質であり、その物質の製造・輸入・使用などの取扱いにあたって認可を受けることが必要となります。今回公布された「毒性および懸念化学物質管理法」には多くの下位規則が存在しています。そのため、環境保護署は今後30以上の下位規則の制改正を行う予定である4)と述べており、懸念化学物質の指定や具体的な運用については、下位規則で今後制定されることになります。同法の下位規則には新規および既存化学物質の登録の詳細を定めた「新規化学物質および既存化学物質資料登録弁法」もあり、同弁法については、2018年3月に改正案が公表されていました。上位の法律が改正されたことから、同弁法も近々改正されるものと思われます。なお、改正案の詳細は本コラム「台湾の化学物質登録制度について」を参照ください。

3.中国

最後に中国ですが、新たな動きとして生態環境部が「化学物質環境リスク評価および管理条例」案を公表5)し、意見募集を開始しました。
 生態環境部はこれまで「新規化学物質環境管理弁法」によって、新規化学物質に対する登記や事後管理を求めていましたが、今回の条例案では新規化学物質に加え、既存化学物質のリスク評価や管理を定め、新規および既存化学物質ともに、リスク評価およびリスク管理を実施する内容となっています。

既存化学物質に関しては、既存化学物質の製造・輸入、加工、使用企業に対して製造・輸入量等の年次報告を求め、その情報等をもとに生態環境部がスクリーニング評価や詳細調査等のリスク評価を実施します。その結果、人の健康や環境に不当なリスクがあり、リスク管理が必要であると判断した物質を「優先管理化学物質名録」に収載し、大気や水、海洋、土壌への排出を防ぐために関連法規制で規制対象とする、使用制限や製品含有規制を課すなどのリスク管理措置が検討され、「厳格制限化学物質名録」に指定されリスク管理措置が講じられます。
 さらに、リスク管理措置でもリスクを十分に管理できていない場合には、「禁止化学物質名録」に指定され、その取扱いが禁止されることになっています。
 同条例は現時点ではまだ法案段階であり、意見募集で寄せられた意見や今後の検討によって変更される可能性も十分ありますが、中国の化学物質規制が大きく変化する可能性がある動きと言えます。

以上、東アジア各国の春節前の新たな動きを概説しました。各国ともに、従来から化学物質規制は運用されていましたが、世界的な化学物質規制の動向や、それぞれの従来法規制の運用上の課題などを踏まえ、より強化されている状況です。今後も新たな動きがあれば、本コラムで取り上げてまいります。

(井上 晋一)

参考資料
1)産業安全保健法(2019年1月15日改正)
2)産業安全保健法施行規則
3)毒性および懸念化学物質管理法
4)環境保護署ニュースリリース
5)生態環境部通知

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

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