ここが知りたいREACH規則

ここが知りたいREACH規則

EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介

2019.02.01

英国のEU離脱(BREXIT; ブレグジット)に関する情報から

英国のEUからの離脱日である2019年3月29日が迫ってきました。
 2018年11月の、英国のEU離脱の関する合意案1)が公表されていましたが、ご承知のように2019年1月15日の英国議会で否決されました。
 ECHAや英国からは、合意案が成立しないケース(no deal)で英国がEUを離脱した場合(合意なき離脱)、すなわち、2019年3月30日から英国離脱が適用される場合を想定して、気を付けなければならないことについての情報が提供されています。このコラムでは、これらの中から、REACHとCLPに関する事項の概要をご紹介したいと思います。

ECHAからは、専用ホームページやQ&Aなど多くの情報が提供されています2、3)。離脱後の2019年3月30日以降は、英国は日本などと同じく非EU国となります。したがって、英国拠点の輸入者や唯一の代理人(OR)で登録を行っている場合は、これらの登録は無効となりますので、この登録を根拠としてEU27カ国・EEAへは離脱日以降輸出ができなくなります。継続してEU27カ国・EEAへ輸出するためには、登録をEU27カ国・EEA拠点の企業で行っておかなければなりません。

他方、英国においても離脱に向けた準備として、REACHやCLPに関連する情報が提供されています4)、5)、6)。提供されている情報は、合意がない場合を想定した内容ですが、順守しなければならない事項の内容は合意の有無に関わらず、EU離脱後に対応が必要な事項であると言えます。

英国の離脱のための基本的な取り組み方は、「欧州連合(離脱)法2018年(European Union (Withdrawal) Act)」7)で制定されています。この法律では、EU由来の国内法はEUから離脱後も有効にすると規定されています(第2項)。したがって、現行のEUのREACH、CLP規則の内容は、英国の国内法として移行・制定されることになります。

これに沿って、EU-REACHをベースに、英国-REACH(以下、UK-REACH)に修正した草案8)が公表されています。この草案に対して、英国規制政策委員会(Regulatory Policy Committee)は、「目的に適う」とした意見9)を公表していますので、この内容で制定されるものと予想します。

UK-REACHでは、ECHAの機能はHSE(Health and Safety Executive;健康安全局)が担い、英国国内法とするために文言の修正が行われていますが、基本的な事項は、EU-REACHの内容を踏襲しています。ただし、離脱日以前に行った登録や届出などの離脱後の移行措置を第127条A~P項で規定がされています。その中で、日本の企業の方に関係する登録と成形品中のCLS物質の届出については、下記の移行措置が設けられています。

<登録に関して>

化学物質を製造・輸入する場合は、英国での登録が必要です。したがって、離脱以降は英国で登録していなければなりません。ただし、離脱以前に、EU-REACHで、英国を拠点とする企業により登録されている場合は、その登録は英国に移管されます。しかしながら、EU-REACH第10条で提出が規定されている情報については、下記のように所定の期日までにHSEに提出する必要があります。この場合、費用は発生しません。

  • 離脱60日以内に提出しなければならない情報
    第10条(a)の一部情報
    • (i)登録者情報
    • (ii)化学物質の情報
    • (iii)化学物質の用途、関連するばく露情報
    • (viii)(iii)、(iv)、(vi)、(vii)または(b)に基づいて提出された情報のいずれかが、製造者または輸入者により選任され、かつ適切な経験を有する評価者によるレビューを受けているかについての指摘
  • 離脱日2年以内に提出しなければならない情報
    第10条(a)の残りの情報
    • (iv)分類および表示
    • (v)物質の安全な使用に関する指針
    • (vi)附属書VIIから附属書XIまでの適用により得られる情報の調査要約書
    • (vii)附属書Iに基づき求められる場合には、附属書VIIから附属書XIまでの適用によって得られる情報のロバスト調査要約書
    • (ix)附属書IXおよび附属書Xに列記されている試験に関する提案
    • (x)1tから10tの量の物質については、附属書VIの6節に定めるばく露情報
    • (xi)CBIの申請

および第10条(b)化学品安全性報告書

<成形品中のCLS物質の届出>

EU-REACHでは、下記に該当するCL物質を含有する成形品については、ECHAに届出が必要です。

  • (a)CL物質が成形品の中に生産者または輸入者当たりで合計して年間1tを超える
  • (b)CL物質が成形品の中に重量比(w/w)0.1%を超える濃度で存在する

上記の届出を行った英国の企業は、離脱後60日以内に、ECHAに届け出た情報をHSEに提出する必要があります。

なお、ECHAへの情報提出のために設けられているREACH-ITに替わるシステムが英国においても設けられることになっています。

これまでは、新たにEUに年間1t以上の化学物質を輸出する場合、英国およびその他加盟国に関わらず、EU全体で一回の手続き(登録や届出など)で済みましたが、英国のEU離脱後は、英国およびその他加盟国それぞれで年間1t以上になれば、登録や届出などを英国とECHAそれぞれで行う必要があることになります。

CLPについても、REACHの場合と同じく、英国国内法が制定されます。その草案はまだ公表されていませんが、基本的にはCLPの内容を踏襲されると考えます。したがって、分類、ラベル、包装について、これまでEUへ輸出している場合とは、基本的に変更する必要はないことになると考えます。英国のCLPもHSEの所管となります。

参考資料
1)https://www.gov.uk/government/publications/withdrawal-agreement-and-political-declaration
2)https://echa.europa.eu/uk-withdrawal-from-the-eu
3)https://echa.europa.eu/advice-to-companies-q-as/general
4)https://www.gov.uk/government/publications/regulating-chemicals-reach-if-theres-no-brexit-deal/regulating-chemicals-reach-if-theres-no-brexit-deal
5)https://www.gov.uk/government/publications/classifying-labelling-and-packaging-chemicals-if-theres-no-brexit-deal
6)http://www.hse.gov.uk/brexit/scenario5.htm
7)http://www.legislation.gov.uk/ukpga/2018/16/pdfs/ukpga_20180016_en.pdf
8)http://www.legislation.gov.uk/ukdsi/2019/9780111178034/contents
9)https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/770416/RPC18-4313_1_-DEFRA_UK_REACH__Registration_Evaluation_Authorisation__restriction_of_CHemicals__-_IA_f__-_opinion.pdf

(林 譲)

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

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