ここが知りたいREACH規則

ここが知りたいREACH規則

EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介

2018.10.12

化審法「低生産量・少量新規」審査特例制度に用いる用途別環境排出係数の告示

「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(以降「化審法」と略称)」の新規化学物質の事前審査制度における「低生産量・少量新規」の審査特例制度は平成29年に改正1)され、平成31年から施行されます(2017年7月21日コラム参照)。
 この施行のための用途分類ごとの「排出係数」に関する省令2)が、平成30年9月14日に公示され、平成31年1月1日から施行されます。用途分類ごとの「排出係数」は表1の通りです。

表1 用途分類ごとの排出係数
用途番号 用途分類 排出係数
101 中間物 0.004
102 塗料用、ワニス用、インキ用、複写用または殺生物剤用溶剤 0.9
103 接着剤用、粘着剤用またはシーリング材用溶剤 0.9
104 金属洗浄用溶剤 0.8
105 クリーニング洗浄用溶剤 0.8
106 その他の洗浄用溶剤(104および105に掲げるものを除く。) 0.8
107 工業用溶剤(102から106までに掲げるものを除く。) 0.4
108 エアゾール用溶剤または物理発泡剤 1
109 その他の溶剤(102から108までに掲げるものを除く。) 1
110 化学プロセス調節剤 0.02
111 着色剤(染料、顔料、色素、色材等に用いられるものをいう。) 0.01
112 水系洗浄剤(工業用のものに限る。) 0.07
113 水系洗浄剤(家庭用または業務用のものに限る。) 1
114 ワックス(床用、自動車用、皮革用などのものをいう。) 1
115 塗料またはコーティング剤 0.01
116 インキまたは複写用薬剤 0.1
117 船底塗料用防汚染剤または漁網用防汚染剤 0.9
118 殺生物剤(成形品に含まれるものに限る。) 0.04
119 殺生物剤(工業用のものであって、成形品に含まれるものを除く。) 0.2
120 殺生物剤(家庭用または業務用のものに限る。) 0.4
121 火薬類、化学発泡剤または固形燃料 0.02
122 芳香剤または消臭剤 1
123 接着剤、粘着剤またはシーリング材 0.02
124 レジスト材料、写真材料または印刷版材料 0.05
125 合成繊維または繊維処理剤 0.2
126 紙製造用薬品またはパルプ製造用薬品 0.1
127 プラスチック、プラスチック添加剤またはプラスチック加工助剤 0.03
128 合成ゴム、ゴム用添加剤またはゴム用加工助剤 0.06
129 皮革処理剤 0.02
130 ガラス、ホウロウまたはセメント 0.03
131 陶磁器、耐火物またはファインセラミックス 0.1
132 研削砥石、研磨剤、摩耗材または固体潤滑剤 0.1
133 金属製造加工用資材 0.1
134 表面処理剤 0.1
135 溶接材料、ろう接材料または溶断材料 0.03
136 作動油、絶縁油または潤滑油剤 0.02
137 金属等加工油または防錆油 0.03
138 金属材料または電子材料 0.01
139 電池材料(1次電池または2次電池に用いられるものに限る。) 0.03
140 水処理剤 0.05
141 乾燥剤または吸着剤 0.09
142 熱媒体 0.08
143 不凍液 0.08
144 建設資材または建設資材添加剤 0.3
145 散布剤または埋立て処分前処理剤 1
146 分離または精製プロセス剤 0.1
147 燃料または燃料添加剤 0.004
199 輸出用のもの 0.001

本改正が施行されますと、一定数量以下の新規物質の製造・輸入の事務手続きが、これまでに比べて簡素化され、事業活動が活発化されることが期待できます。ここでは、これまでの「低生産量・少量新規」の審査特例制度の問題点や改正の背景などについて紹介します。

化審法における新規化学物質の事前審査制度では、事業者から提出された分解性、蓄積性および長期毒性などの試験データをもとに新規化学物質の特性を判定し、規制措置が講じられています。
 化審法における新規化学物質の事前審査および事前確認制度のまとめを表2に示します。

表2 化審法新規化学物質の届出手続きのまとめ
手続きの種類 条項 手続 届出時に提出すべき
有害性データ
その他提出資料 総量上限 数量調整
通常新規 法第3条
第1項
届出
→ 判定
分解性・蓄積性
人健康・生態影響
用途・予定数量等 なし なし
低生産量新規 法第5条
第1項
届出
→ 判定
申出
→ 確認
分解性・蓄積性
(人健康・生態影響の有害性データもあれば届出時に提出)
用途・予定数量等 全国
10t以下
あり
少量新規 法第3条
第1項第5号
申出
→ 確認
用途・予定数量等 全国
1t以下
あり

(経産省「改正化審法概要」(平成30年2月22日)I-3を一部参照し作成)

概要は以下のとおりです。

  • (1)通常の新規化学物質の場合、当該新規化学物質の製造、輸入数量に制限なく事前審査を受けたうえで製造、輸入が可能となります。
  • (2)年間の製造、輸入数量が一定量以下の場合は、「低生産量新規」または「少量新規」の特例制度を活用して事前審査を受けずに製造、輸入することができます。
  • (3)ただし、同一の新規化学物質について、複数の事業者が「低生産量新規」「少量新規」の利用を申出た場合には、その物質の製造、輸入予定数量の合計が上限値を超えないように国が数量の確認を行い、物質ごとに数量調整を行って事業者に通知することとなっています。
  • (4)したがって、上記の特例制度を利用している事業者は、毎年度、国に対して申出を行って製造、輸入できる数量の確認を受ける必要があります。
  • (5)特例制度における製造、輸入数量の上限値は以下のとおりです。
    「低生産量新規」の場合、上限値は物質ごとに年間10tで、同一物質に対して複数の事業者から申出があり、全国で年間10tを超える場合は、全国で10tに調整されます。もし、同一物質に対して「少量新規」にも申出があった場合は「低生産量」と「少量新規」を合わせて、全国で10tとなります。
  • (6)「少量新規」の場合は、上限値は物質ごとに年間1tで、同一物質に対して複数の事業者から申出があり、全国で年間1tを超える場合は、全国で1tに調整されます。

上述のとおり、新規化学物質審査の特例制度は、製造、輸入数量で全国上限枠が設けられていて、申出事業者が複数の場合、数量調整が行われますが、経済産業省の説明資料3)によりますと下記のような問題が顕在化しています。
 ―数量調整の増大による、数量確認の不確かさにより、化学メーカーの直接的な損失ばかりか、サプライチェーン全体のビジネスの消滅、生産拠点の海外移転を誘因し、研究・開発拠点の移転にも至るとの懸念が増していました。具体的には下記のような問題がありました。

  • 予定数量に満たない数量しか確認されず、減らされた分だけビジネスの規模が縮小し、少量・高価な新規化学物質を製造・販売する国内中小化学メーカーにとって、特に大き な痛手となっていた。
  • 数量調整により、サプライチェーン全体にわたってビジネスが消滅し、これによって海外企業連合に市場を譲る事例も起こっていた。
  • 数量調整によって予見可能性が低下することによるビジネスの不確かさを避けるため、化学メーカーと化学物質の譲渡先である電気・電子メーカーが海外に生産拠点を移している。

制限枠設定による上記課題を回避するため、人の健康や生態に影響を与えない範囲で、全国上限枠を「製造、輸入数量」の合計値から「環境排出量」換算に変更するための法令改正が行われました。現行の「低生産量新規」の全国合計で年間10tおよび「少量新規」の全国合計年間1tの制限の算出方法を改め、「用途分類別の排出係数」を導入して、「環境排出量」で管理されます。すなわち、平成31年1月1日以降は、「低生産量新規」および「少量新規」は、年間の上限が新規物質ごとに特定された用途の係数を乗じた「環境排出量」により管理されるようになります。

以下に複数事業者からの申出に対する現行法および新法令での相違につき具体例を示します。
 3社が同一新規化学物質を電気・電子材料用途で「少量新規」によりそれぞれ1t製造、輸入を申出た場合、現行法では全国数量調整により各社の数量確認後の数量は333kgとなりますが、施行後は全国数量調整において各社の届出数量1tに電気・電子材料用途の係数0.01が乗じられて10kgとなり数量調整は不要になります。
 なお、届出は一用途ごとに行うことになります。ただし、1つの届出で複数の用途で届出を行うことも可能ですが、このような場合は、排出係数の大きいものを使用して環境排出量が算出されます。

環境排出量の算出の必要性から審査特例制度の申出においては、用途を証明する書類「用途証明書4)」の添付が義務付けられることとなります。 「用途証明書」とは以下のものとなります。

  • 用途証明書の例
    • (1)事業者間で締結している売買契約書、品質保証書、納品書など
    • (2)用途を限定特記したSDSに、申出物質の使用者が署名捺印した書類
    • (3)用途確認書
  • 用途証明に必要な記載事項
    • (1)用途証明書の宛先(社名、部署、担当責任者氏名)
    • (2)新規化学物質(または製品) の名称、用途番号および用途分類
    • (3)使用者(社名、部署、担当責任者氏名、住所)

1)http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/193/pdf/s031930521930.pdf
2)https://kanpou.npb.go.jp/20180914/20180914h07349/20180914h073490004f.html
3)http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/information/H29kaiseikasinhou_seminar.pdf
4)http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/todoke/youtosyoumeisyo.pdf

(瀧山 森雄)

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

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