ここが知りたいREACH規則

ここが知りたいREACH規則

EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介

2018.09.21

REACH規則附属書XIV収載勧告草案が公表されました

2018年9月5日にECHAから、認可対象物質とするREACH規則附属書XIV収載する第9次の勧告草案が発表されました。2018年12月5日まで意見募集が行われています1)。今回のコラムではこの概要について紹介します。

今回の勧告草案は、2018年2月1日時点でのCL物質108物質を対象として、REACH規則の第58条(3)で規定されている項目で優先順位付けし、加盟国専門家委員会の意見を考慮して、ECHAにより選別された18物質です。今後は、寄せられた意見を考慮し、ECHAで附属書XIVに収載する認可対象物質の勧告が作成され、欧州委員会に提出されることになります。

表1には意見募集が行われている第9次REACH規則附属書XIV収載勧告草案の18物質を、また、表2に勧告草案作成の根拠となっている優先順位付けの検討結果2)(抜粋)をまとめました。

表1 第9次REACH規則附属書XIV収載勧告草案*
# 名称 EC番号 CAS番号 有害性 使用例3)
1 ビスフェノール A 201-245-8 80-05-7 生殖毒性
内分泌かく乱性(環境、ヒト)
エポキシ硬化剤
2 1,6,7,8,9,14,15,16,17,17,18,18-ドデカクロロペンタシクロ[12.2.1.16,9.02,13.05,10]オクタデカン-7,15-ジエン[anti-およびsyn-異性体、およびこれらのすべての組み合わせ混合物] - - vPvB 接着剤およびポリマーの難燃剤
3 4-ヘプチルフェノール(分岐、直鎖)を0.1w/w%以上含有する1,3,4-チアジアゾリジン-2,5-ジチオンとホルムアルデヒドと4-ヘプチルフェノール(分岐、直鎖)の反応生成物 - - 内分泌かく乱性(環境) 潤滑剤、グリース
4 ジオクチルスズビス(2-エチルヘキシルチオグリコレート)(DOTE) 239-622-4 15571-58-1 生殖毒性 ポリマー安定剤
5 ジオクチルスズビス(2-エチルヘキシルチオグリコレート)(DOTE)とオクチルスズトリス(2-エチルヘキシルチオグリコレート)(MOTE)からなる反応組成物 - - 生殖毒性 ポリマー安定剤
6 0.1%以上のミヒラーケトン(EC No. 202-027-5)またはミヒラー塩基(EC No. 202-959-2)を含有する4,4'-ビス(ジメチルアミノ)-4"-(メチルアミノ)トリチルアルコール 209-218-2 561-41-1 発がん性 印刷インク
7 ジオキソビス(ステアリン酸)三鉛 235-702-8 12578-12-0 生殖毒性 PVC安定剤
8 脂肪酸(C16~18)鉛 292-966-7 91031-62-8 生殖毒性 PVC安定剤
9 二酸化ホスホン酸三鉛 235-252-2 12141-20-7 生殖毒性 PVC安定剤、ゴム製造、鏡の裏面材
10 塩基性亜硫酸鉛 263-467-1 62229-08-7 生殖毒性 PVC安定剤、鏡の裏面材
11 フタル酸ジオキソ三鉛 273-688-5 69011-06-9 生殖毒性 PVC安定剤
12 水酸化炭酸鉛(II) 215-290-6 1319-46-6 生殖毒性 画家用塗料
13 塩基性硫酸鉛 234-853-7 12036-76-9 生殖毒性 鏡の裏面材
14 シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物(HHPA) 201-604-9
236-086-3
238-009-9
85-42-7
13149-00-3
14166-21-3
呼吸器感作性 エポキシ樹脂硬化剤
15 ヘキサヒドロメチルフタル酸無水物、ヘキサヒドロ-4-メチルフタル酸無水物、ヘキサヒドロ-1-メチルフタル酸無水物、ヘキサヒドロ-3-メチルフタル酸無水物およびこれらの異性体のすべての混合物(MHHPA) 247-094-1
243-072-0
256-356-4
260-566-1
25550-51-0
19438-60-9
48122-14-1
57110-29-9
呼吸器感作性 エポキシ樹脂硬化剤
16 四エチル鉛 201-075-4 78-00-2 生殖毒性 航空燃料添加剤
17 2-メトキシエタノール 203-713-7 109-86-4 生殖毒性 溶剤
18 2-エトキシエタノール 203-804-1 110-80-5 生殖毒性 溶剤

勧告草案では、すべての物質に対して認可申請期限は公布後18,21あるいは24ヵ月後にするとして日没日(認可申請などをしていなければ、この日以降EU域内では使用・上市できない日)は申請期限の18ヵ月後となっています。また、認可の除外用途などについての記載はありません。

表2 優先順位付け検討結果(抜粋)*
# 名称 評点 特記事項
有害性 使用状況 生産/輸入量 合計
(中間値)
1 ビスフェノール A 7 10 12 29 工業的、専門家使用量:年間1,000~10,000tと推定
2 1,6,7,8,9,14,15,16,17,17,18,18-ドデカクロロペンタシクロ[12.2.1.16,9.02,13.05,10]オクタデカン-7,15-ジエン[anti-およびsyn-異性体、およびこれらのすべての組み合わせ混合物] 13 7 9 29  
3 4-ヘプチルフェノール(分岐、直鎖)を0.1w/w%以上含有する1,3,4-チアジアゾリジン-2,5-ジチオンとホルムアルデヒドと4-ヘプチルフェノール(分岐、直鎖)の反応生成物 7 15 6 28  
4 ジオクチルスズビス(2-エチルヘキシルチオグリコレート)(DOTE) 1 7 9~12 17~20
(19)
MOTEとのグループ化
5 ジオクチルスズビス(2-エチルヘキシルチオグリコレート)(DOTE)とオクチルスズトリス(2-エチルヘキシルチオグリコレート)(MOTE)からなる反応組成物 1 7 12 20 DOTEとのグループ化
6 0.1%以上のミヒラーケトン(EC No.202-027-5)またはミヒラー塩基(EC No.202-959-2)を含有する4,4'-ビス(ジメチルアミノ)-4"-(メチルアミノ)トリチルアルコール 1 12 6 19  
7 ジオキソビス(ステアリン酸)三鉛 1 7 15 23 鉛化合物のグループとして優先
8 脂肪酸(C16~18)鉛 1 7 15 23 同上
9 二酸化ホスホン酸三鉛 1 7 15 23 同上
10 塩基性亜硫酸鉛 1 7 9 17 同上
11 フタル酸ジオキソ三鉛 1 7 0~6 8~14
(11)
同上
12 水酸化炭酸鉛(II) 1 5 3 9 同上
13 塩基性硫酸鉛 1 0~5 0~3 1~9
(5)
同上
14 シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物(HHPA) 1 5 12 18 MHHPAとグループとして優先
15 ヘキサヒドロメチルフタル酸無水物、ヘキサヒドロ-4-メチルフタル酸無水物、ヘキサヒドロ-1-メチルフタル酸無水物、ヘキサヒドロ-3-メチルフタル酸無水物およびこれらの異性体のすべての混合物(MHHPA) 1 5 12 18 HHPAとグループとして優先
16 四エチル鉛 1 5 12 18 鉛化合物として優先
17 2-メトキシエタノール 1 5 12 18  
18 2-エトキシエタノール 1 7 6~9 14~17
(16)
2-メトキシエタノールとのグループで優先
i 水酸化カドミウム 1 5 12 18  
ii パイロクロア、アンチモン鉛イエロー(別名:C.I.ピグメントイエロー41) 1 10 6 17  
iii カドミウム 1 6 9 16  
iv 酸化カドミウム 1 5 9 15  

*公表の優先順付けのデータでは、評点の合計点の大きいものから記載されています。本表の物質の列記順序は、比較を容易にするために表1と同じにしています。#i~ivは勧告草案に収載されなかった物質です。

表1,2の#1~18は、意見募集の勧告草案の番号に付されている番号です。また、表2の#i~ivは、筆者が付した番号です。

順序は逆になりますが、まず表2の内容について説明します。表2の評点は、優先順序付けのためのルールによって算出されたものです。前記しましたが、附属書XIVへの収載は、REACH規則58条(3)で下記の事項を考慮して、優先的に行われます。

  • (a)PBTまたはvPvBを優先(表2中の評点割り付けでは「有害性」)
  • (b)幅広い分散的は使用を優先(表2中の評点割り付けでは「使用状況」)
  • (c)高生産量を優先(表2中の評点割り付けでは「生産/輸入量」)

上記の各事項について表3~5に示す区分で評点を割り付け4)、それらの合計点で優先順位付けが行われています。

表3 優先順位付けのための「有害性」の評点の割り付け
有害性 区分 評点
CMR 1
内分泌攪乱性 7
PBTまたはvPvB 13
PBTまたはvPvBと少なくとも他の一つの有害性 15
表4 優先順位付けのための「使用状況」の評点の割り付け
使用状況 区分 評点
無し ゼロ 0
工業的使用 5
専門家使用 10
消費者使用 15
表5 優先順に付けのための「生産/輸入量」の評点の割り付け
生産/輸入量 区分 評点*
生産無し ゼロ 0
年間10トン未満 極めて少ない 3
年間10トン以上100トン未満 6
年間100トン以上1,000トン未満 9
年間1,000トン以上10,000トン未満 12
年間10,000トン以上 極めて多い 15

*生産/輸入量については、成形品に使用されている場合はそのライフサイクルを考慮して、年間10t以上については2ポイント、10t未満については1ポイントの加算。

各評価の区分に当たっては、登録情報のデータを参照しています。さらに、川下ユーザーからの情報や成形品中のCL物質の届出情報も考慮されています。
 附属書XIVへの収載を勧告の優先順位を決めるにあたっては、単に評点の合計点だけでなく、物質の類似性なども考慮して検討されています。

今回の勧告草案では、評点の合計点が18を区切りにし、ECHAの今後の事務処理容量を考慮して、物質を選定していると判断できます。ただし、18点あるいは18点未満であっても、用途が共通している類似物質はグループ化して検討されています。グループ化して検討された物質は、鉛含有物質(#7、8、9、10、11、12、13、16)、有機スズ化合物(#4、5)、酸無水物(#15,16)やエチレングリコールのモノエーテル化合物(#17、18)です。

#1ビスフェノールAは、登録情報から年間100万t以上の製造・輸入量があるとのことですが、多くはポリカーボネートやエポキシ樹脂に使用されています。ポリマー使用する場合は認可の対象外ですが、年間1,000~10,000t程度がポリマー以外の用途に使用されており、これらの用途を認可対象にしようとするものです。今回の意見募集の資料では主な使用としてエポキシ樹脂の硬化剤があげられています。
 なお、ビスフェノールAについては、附属書XVIIのエントリー#66で制限物質となっています。2020年1月以降、0.02重量%含有する感熱紙は上市できなくなります。また、#4,5の有機スズ化合物については、すでに附属書XVIIのエントリー#20で、0.1%以上含有する織物や履物などに含有することが制限され、鉛含有化合物についても、附属書XVIIのエントリー#30や#63などで制限されています。
 #14、#15については、第7次の勧告草案にありましたが、意見募集の結果、優先度が低いとして、それ以降の勧告では取り下げられていたものです5)

なお、欧州委員会への勧告は、第7次は2016年11月、第8次は2018年2月に行われていますが、現状これらの勧告を踏まえた附属書XIVの改正には至っていません。

1)https://echa.europa.eu/-/public-consultation-on-18-substances-proposed-for-authorisation-under-reach
2)https://echa.europa.eu/documents/10162/13640/prioritisation_results_cl_substances_sept_2018_en.pdf/57d8dcbe-a339-4de2-dfcd-10fa7252b44e
3)https://echa.europa.eu/documents/10162/23821863/news_annex_ninth_authorisation_list_recommendation_pc_en/8d8a6ad4-86b2-2840-321e-8a963eb0e685
4)https://echa.europa.eu/documents/10162/13640/gen_approach_svhc_prior_in_recommendations_en.pdf
5)https://echa.europa.eu/recommendation-for-inclusion-in-the-authorisation-list

(林 譲)

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

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