ここが知りたいREACH規則

ここが知りたいREACH規則

EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介

2018.06.01

REACH規則における認可対象候補物質の追加の動き

前回のコラム1)では、人の健康や環境への影響について高い懸念がある物質(Substance of Very High Concern:SVHC)の特定に関するロードマップ年次報告書についてご紹介し、認可対象候補リストに収載された物質〈CL(Candidate List)物質)〉として181物質の推移や収載の根拠なった有害性などについて紹介しました。
 CL物質は毎年2回追加されていますが、4月に2物質をCL物質に収載する委員会決定が初めて官報公示2)、3)されました。
 本コラムでは改めてこれまでのCL物質の追加提案から収載に至る経緯について改めて整理します。

1.CL物質の追加提案から収載までの流れ

CL物質の追加提案~収載までの手続きについては、REACH規則第59条で定められています。CL物質の追加手続きは、欧州化学物質庁(ECHA)や加盟国からの提案意向(Intention)の提出から開始されます。提案意向の際には、提案書の提出時期(現状は2月または8月)が示され、その提出日までに提案書が作成されます。
 その後提出された提案書は、提出時期ごとに翌月頃(3月または9月)に45日間の意見募集が行われます。ここでCL物質の追加に関わるような意見が寄せられなければ、ECHAによってCL物質に追加されます。一方、CL物質の追加に関わるような意見が寄せられた場合には、寄せられた意見を踏まえて、加盟国委員会(MSC)で検討が行われることになります。この加盟国委員会の検討の結果としては、次の3つのパータンがあります。

(1)全会一致で追加に合意した場合
 加盟国委員会が全会一致で追加に合意した場合には、ECHAによってCL物質に追加されます。

(2)全会一致で追加しないことに合意した場合
 CL物質収載の根拠となるREACH規則第57条のSVHC特定基準(a~f)に合致すると判断できるだけの十分な情報がない、SVHC特定基準に合致しないなど、加盟国委員会が全会一致で追加しないことに合意した場合には、CL物質には追加されません。なお、その際のMSCの意見書はECHAのウェブサイト4)に掲載されます。

(3)全会一致に達しなかった場合
 加盟国委員会の意見が全会一致に達しなかった場合には、CL物質への追加はひとまず見送られます。

この場合、加盟国委員会は多数派意見と少数派意見を欧州委員会(EC)に提出し、ECが加盟国委員会の意見を踏まえてCL物質の追加要否を決定することになります。なお、全会一致に達しなかった物質に対する意見書はECHAのウェブサイト5)に掲載されます。

2.追加提案数と収載数の推移

2008年の第1次追加から2018年1月の第18次までのCL物質追加提案のうち、新規物質の追加に関する追加提案数および収載物質数を表1に示します。
 18回のうち7回で追加提案物質数と収載物質数に差があり、これまで16物質が提案されたものの、その時点ではCL物質の追加に至らなかったことになります。

表1:第18次までの提案および収載物質数の推移
  (1)追加提案物質数 (2)収載物質数 差分(1)-(2)
第1次 16 15 1
第2次 15 15 0
第3次 8 8 0
第4次 11 8 5
第5次 7 7 0
第6次 20 20 0
第7次 11 11 0
第8次 54 54 0
第9次 10 6 4
第10次 7 7 0
第11次 4 4 0
第12次 6 6 0
第13次 2 2 0
第14次 7 5 2
第15次 4 1 3
第16次 6 4 2
第17次 1 1 0
第18次 8 7 1
合計 197 181 16

このうち、第1次(1物質)、第3次(3物質)、第9次(4物質)の計8物質は、上記の「(2)全会一致で追加しないことに合意した場合」であり、CL物質には追加されませんでした。
 一方、第14次以降の8物質は傾向が異なっており、うち3物質(第14次、第15次、第18次それぞれ1物質)は提案したものの、加盟国が提案を取り下げたものであり、残りの5物質は「(3)全会一致に達しなかった場合」です。

3.全会一致に達しなかった物質のその後

加盟国委員会において、全会一致に達しなかった5物質については、加盟国委員会の意見を踏まえて、ECが再検証を行います。現在のECによる検討状況は表2の通りです。

表2:全会一致に達しなかった物質とECによる検討状況
  物質名 CAS番号 ECによる検討状況
第14次 ヘキサン‐1,6-ジオールジアクリラート 13048-33-4 2016年11月:認可対象候補物質リストに収載しない委員会決定を官報公示6)
第15次 3‐ベンジリデンカンファー 15087-24-8 2018年1月:認可対象候補物質リストに収載する委員会決定案を公表
フタル酸ジシクロヘキシル(DCHP) 84-61-7 2018年4月:認可対象候補物質リストに収載する委員会決定を官報公示2)
第16次 1,3‐ジオキソ‐1,3‐ジヒドロイソベンゾフラン‐5‐カルボン酸(TMA) 552-30-7 2018年4月:認可対象候補物質リストに収載する委員会決定を官報公示3)
4‐tert‐ブチルフェノール 98-54-4 ECで検討中
4.次回のCL物質の追加

CL物質の第19次追加の候補として、次の8物質が3月に提案されており、すでに意見募集は終了しています。6月に開催される加盟国委員会の合意状況によって、6月末~7月初めにCL物質に追加される予定です。
 なお、4月にCL物質への追加が決定した「フタル酸ジシクロヘキシル(DCHP)」および「1,3‐ジオキソ‐1,3‐ジヒドロイソベンゾフラン‐5‐カルボン酸(TMA)」の2物質ですが、現時点ではCL物質に追加されていません。ECHAは、これら2物質の追加は、現在検討が進められており、6月に決定する予定の第19次追加にあわせて、6月末~7月初め頃にCL物質に追加する予定であることを発表7)しています。

物質名 CAS番号
ベンゾ[ghi]ペリレン 191-24-2
デカメチルシクロペンタシロキサン(D5) 541-02-6
八ホウ酸二ナトリウム 12008-41-2
ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6) 540-97-6
エチレンジアミン 107-15-3
7439-92-1
オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4) 556-67-2
水素化テルフェニル 61788-32-7

加盟国委員会で合意に達しなかった物質についての委員会決定が4月に初めて公表され、CL物質への追加が見送られた物質も改めて追加されることが示されました。ただし、今回のように直近の定期追加に合わせて、正式追加されるのであれば、従来通り年2回定期的にCL物質の状況を確認しておけば、抜け漏れはないものと思われます。
 なお、本コラムでは、CL物質の新規追加について紹介しましたが、CL物質の提案の中には、ビスフェノールA(CAS番号80-05-7)や4種のフタル酸エステル類(DEHP、BBP、DBP、DINP)など、すでに収載されているCL物質について、新たに別のREACH規則第57条のSVHC特定基準(a~f)を追加する場合もあります。

(井上 晋一)

1)コラム(2018年5月25日)
2)EU官報(EU)2018/636
3)EU官報(EU)2018/594
4)ECHA 加盟国委員会によるその他の合意
5)ECHA加盟国委員会によるSVHC意見
6)EU官報(EU)2016/2091
7)ECHA ECHA Weekly

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

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