ここが知りたいREACH規則

ここが知りたいREACH規則

EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介

2018.03.30

REACH規則の制限に関する市場調査結果(REF-4とRAPEX)

REACH規則の制限に関連する市場調査結果として、執行情報交換フォーラム(以下、フォーラム)」による「REACH EN FORCE」プロジェクト第4回(REF-4)の最終報告書1)が2月に公表されました。
 また、EUおよび欧州経済領域(EEA)市場から危険な製品を排除することを目的に、EU委員会を通じた参加国内での迅速な情報交換を行うための「RAPEX」の2017年報告書2)も3月に公表されました。
 今回はこれらの概要をご紹介します。

1. REF-4報告書

REACH規則の76条(f)に基づき、REACH規則の執行権限を有する加盟国当局が連携して執行状況の調査を行うために、欧州化学物質庁(ECHA)に「執行情報交換フォーラム(以下、フォーラム)」が設置され、各種の執行調査が実施されています。
 2016年に実施された「REACH EN FORCE」プロジェクト第4弾(REF-4)では「制限」が取り挙げられ、2月13日に最終報告書が公表されました。

REF-4では、REACH規則の制限対象となる附属書XVII収載物質のうち、次の14物質が選定され、27ものEU加盟国およびEEA参加国が、物質17製品、混合物1,009製品、成形品4,599製品の合計5,625製品について制限されている化学物質の含有状況が調査されました。
 調査は、加盟国当局による含有分析やスクリーニング分析によって実施され、一部は企業が提供した試験報告書や安全データシート(SDS)が確認されています。
 調査の結果、調査した全製品の18%にあたる1,014製品が附属書XVIIに定められたいずれかの制限条件に違反していることが示されました。

附属書XVII
No
物質 調査製品種 調査製品数 違反割合
5 ベンゼン 接着剤 531 0.8%
6 アスベスト繊維類 成形品 213 13.6%
23 カドミウムおよびその化合物 プラスチック材料、ろう付け合金、宝飾品 1,791 9.9%
27 ニッケルおよびその化合物 宝飾品、ボタン、ファスナー等の金属部品 1,026 8.1%
32 クロロホルム 接着剤 481 5.2%
43 アゾ色素およびアゾ染料 繊維および皮革成形品 461 1.1%
45 ジフェニルエーテルオクタブロモ誘導体 物質、混合物、成形品 25 0%
47 六価クロム化合物 皮革製品、セメント 690 10.4%
48 トルエン 一般消費者向けの接着剤、スプレー塗料 563 3.7%
49 トリクロロベンゼン 物質、混合物 17 0%
50 多環芳香族炭化水素(PAH)類 一般消費者向け成形品 385 7.8%
51 フタル酸エステル類 玩具および育児用品 700 14%
52 502 9.2%
63 鉛およびその化合物 宝飾品 1,173 6.7%
その他加盟国が独自に選定した項目 489 74%

附属書XVIIのNo別では、違反割合が最も高いのは、「No.51 玩具および育児用品中のフタル酸エステル類」の14%であり、次いで「No.6 成形品中のアスベスト繊維類」が13.6%、「No.47 皮革製品中の六価クロム」が10.4%となっています。なお、14種の制限に加えて加盟国が独自に選定した項目の違反割合が顕著に高くなっていますが、これは英国が実施した「No18a 測定機器中の水銀化合物」に起因しており、英国は小規模企業や個人によるオンライン販売されている製品を対象に調査したためです。
 一方、製品形態別の違反割合は、物質が53%、混合物が10%、成形品が20%であり、また、原産国別に違反割合を見ると、原産国不明製品の違反割合が39%と最も高く、次いで中国製が17%、EU製が10%となっています
 これらの違反製品については、書面による勧告や販売停止命令といった行政措置に加え、一部の企業については、罰金や刑事告訴といった制裁措置が課されています。

このような結果から、報告書では、調査対象が少ないため、REF-4の調査だけではEUで流通している製品の全体像とは言えないものの、調査結果として高い違反割合(18%)が示されたことは、EU域内に制限に違反した製品が相当量流通しているものと想定しています。制限のような含有化学物質の順守状況は製品を目視するだけでは確認できません。そのため、順守率向上の唯一の方策は、サプライチェーン内の各企業が購入する製品の含有化学物質情報を入手するとともに、サプライチェーン内で制限違反製品は取引しないといった合意を形成することといった各企業の責任を強化していくことであると結論付けています。また、当局は税関等との連携を強化しながら、継続して市場調査を実施する必要があると述べています。

今回はREF-4の結果をご紹介しますが、2017年11月には「成形品中のCL物質に関する届出および情報伝達」をテーマとしたパイロットプロジェクトが、また2018年1月には「混合物の分類とラベル・SDS」をテーマとしたREF-6も開始されています。

2. RAPEXの2017年通知概要

2017年の通知件数は2,201件であり、2016年の2,044からは若干増加しています。この通知の内訳として、「製品カテゴリー」「リスク」「原産国」のそれぞれの上位は次のような構成であり、概ね2016年の結果と同様となっています。

製品カテゴリー リスク 原産国
第1位 玩具(29%) けが(28%) 中国(56%)
第2位 自動車(20%) 化学物質(22%) EU・EEA(26%)
第3位 衣類・繊維製品(12%) 絞扼(17%) 不明(7%)
第4位 電気製品(6%) 電気ショック(10%) トルコ(3%)
第5位 育児用品(5%) 火災(6%) 米国(3%)

化学物質リスクに起因する通知は全体の22%を占めており、EU当局の含有化学物質に対する関心の高さが伺えます。化学物質リスクに起因する通知内容の大半はREACH規則の制限に違反している内容であり、REF-4でも違反割合が高かった「No.51 玩具および育児用品中のフタル酸エステル類」や「No.47 皮革製品中の六価クロム」、「No.23 プラスチック材料や宝飾品中のカドミウムおよびその化合物」が多くなっています。

REACH規則附属書XVIIによる制限対象は適宜追加されており、直近では、2018年1月にオクタメチルシクロテトラシロキサン(CAS番号:556-67-2)およびデカメチルシクロペンタシロキサン(CAS番号:541-02-6)が追加3)され、いずれかの物質を0.1wt%超含有する洗い流すタイプの化粧品の上市が2020年1月31日以降禁止されます。
 REF-4やRAPEXでは、EU市場においても制限違反製品が流通している状況であることが示されました。このような状況から、より一層当局の監視が厳しくなる、またそれに伴い、EU企業からのEU域外企業への要請も拡大することも想定されます。
 そのため、必要に応じて、制限と自社製品の関わりを確認した上で、執行フォーラムが提示している制限対象物質の分析手法4)等も参考にしながら、対応を図ることが求められます。

(井上 晋一)

1)REF-4最終報告書
2)RAPEX統計および報告書
3)附属書XVIIの改正(2018年1月10日)
4)制限対象物質の分析手法

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

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