ここが知りたいREACH規則

ここが知りたいREACH規則

EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介

2018.03.02

REACHにまつわる話(73)-認可物質(附属書XIV収載)の状況について-

現在、認可対象となる附属書XIVは、43エントリーです。附属書XIVに収載の物質を“43物質”と言われる場合がありますが、ヘキサブロモシクロドデカン、4‐ノニルフェノール、クロム酸類等グループで収載されているケースがありますので、ECHAの表示に倣ってこの様に記載します1)

今回は、これまでの附属書XIVへの収載状況についてまとめた結果をご紹介します。

附属書XIVに収載する認可対象物質を特定する、手続きはREACH規則の第57~59条で規定されています。
 その手続きを簡単に示しますと下記の通りです。

  • 欧州委員会の要請によりECHAおよび加盟国による附属書XV規定の提案書の作成
  • 提出された提案文書をウエブ上に公開、関係者から意見募集
  • 意見が出されなかった物質は認可対象候補物質リスト(CL)に収載。意見が出された物質は、ECHA加盟国専門委員会で検証し、全会一致で合意された物質をCLに収載。
  • 全会一致の合意が得られなかった物質は欧州委員会に送付され、コミトロジー手続きで、CL収載が妥当な場合は官報に公示される。
  • CLに収載された物質について、加盟国専門委員会の意見に配慮して、PBT(vPvBを含む)、分散的な用途、生産量を考慮し、優先順位をつけて、附属書XIVに収載を勧告する物質案を作成し、ウエブ上その案を公表、利害関係者から、認可要件から免除する用途について、意見募集を行う。これらの結果をもとに、欧州委員会に附属書XIVに収載すべき物質の勧告案を送付する。
  • 欧州委員会は、ECHAが認可申請された場合の事務処理容量を考慮し、附属書XIVに収載する物質を決定し、官報に公示する。

2017年7月28日付のコラムに、上記i~ivの解説をしていますので、こちらもご参照ください。

これまでに、上記v~viで検討された物質数の推移を表1にまとめました。

表1:附属書XIVへの収載を検討された物質数の推移
ECHA
からの勧告
欧州委員会への
収載勧告提案物質数
附属書XIVに
収載された物質数
欧州委員会で収載
されなかった物質数
第1回目 7 6 1
第2回目 8 8 -
第3回目 13 8 5
第4回目 10 9 1
第5回目 5 1 4
第6回目 15 11 4
第7回目 (9) - -
第8回目 (7) - -
合計 58+(16)=74 43 15

合計の数値で58は第1回目~第6回目までの合計、( )内の数値は、第7回、第8回目で提案されている欧州委員会で検討段階の数。

上記の表の欧州委員会で提案されたが、欧州委員会で附属書XIVに収載をしていない物質を表2にまとめました。

表2:ECHAから勧告されたが欧州委員会で附属書XIVに未収載の物質
物質名 EC No. 勧告
1 短鎖長塩素化パラフィン(炭素数10~13) 287-476-5 第1回目
2 塩化コバルト(II) 231-589-4 第3回目
3 炭酸コバルト(II) 208-169-4 第3回目
4 酢酸コバルト(II) 200-755-8 第3回目
5 硝酸コバルト(II) 233-402-1 第3回目
6 硫酸コバルト(II) 233-334-2 第3回目
7 N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC) 204-826-4 第4回目
8 アルミノシリケート系RCF - 第5回目
9 ジアゼン-1,2-ビスカルボキサアミド
(C,C`-アゾジ(ホルムアミド))(ADCA)
204-650-8 第5回目
10 N,N-ジメチルフォルムアミド(DMF) 200-679-5 第5回目
11 ジルコニア系RCF - 第5回目
12 ホウ酸 233-139-2 第6回目
13 三酸化ホウ素 215-125-8 第6回目
14 四ホウ酸二ナトリウム(無水物) 215-540-4 第6回目
15 七酸化四ホウ素化二ナトリウム(水和物) 235-541-3 第6回目

なお、第7回目は2016年11月、第8回目は2017年2月にECHAから欧州委員会の勧告案が提出されています。このコラムでも意見募集が行われた草案のご紹介をしていますが、表3、表4に勧告案を示します。第7回目の勧告案2)では、草案から2物質が削除されています。

表3:第7回目の附属書XIV収載勧告提案物質
物質名 EC No. 有害性 主な用途
1 1,2ベンゼンジカルボン酸ジへキシルエステル,
分岐および直鎖
271-093-5 生殖毒性 シーラント、潤滑剤、可塑剤
2 フタル酸ジへキシル 201-559-5 生殖毒性 可塑剤
3 りん酸トリス(ジメチルフェニル)
(リン酸トリキシリル)
246-677-8 生殖毒性 耐火流体、
油圧用流体
4 過ホウ酸ナトリウム;過ホウ酸,ナトリウム塩 239-172-9
234-390-0
生殖毒性 洗濯用洗剤、食器洗い機用漂白剤。
5 ぺルオキソメタホウ酸ナトリウム
(過ホウ酸ナトリウム)
231-556-4 生殖毒性 洗濯用洗剤、食器洗い機用漂白剤。
6 四塩基性硫酸鉛 235-067-7 生殖毒性 電池電極材、PVC安定剤
7 三塩基性硫酸鉛 235-380-9 生殖毒性 電池電極材、PVC安定剤
8 オレンジ鉛(四酸化鉛) 215-235-6 生殖毒性 塗料顔料
9 一酸化鉛(酸化鉛) 215-267-0 生殖毒性 ガラス原料、安定剤原料
表4:第8回目の附属書XIV収載勧告提案物質3)
物質名 EC No. 有害性 主な用途
1 5-sec-ブチル-2-(2,4-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)-5-メチル-1,3-ジオキサン [1], 5-sec-ブチル-2-(4,6-ジメチルシクロヘキサ-3-エン-1-イル)-5-メチル-1,3-ジオキサン [2][[1]及び[2]或はその任意の組み合わせの個々のすべての立体異性体を包含する](「KARANAL」) (413-720-9) vPvB 香料
2 1-メチル-2-ピロリドン(NMP) 212-828-1 発がん性 高温乾燥塗料溶剤、
塗膜剥離剤、電子部品工程洗浄剤、合成用溶剤、抽出剤
3 2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール(UV-328) 247-384-8 PBT、vPvB 紫外線吸収剤
4 2,4-ジ-tert-ブチル-6-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール(UV-327) 223-383-8 vPvB 紫外線吸収剤
5 2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(tert-ブチル)-6-(sec-ブチル)フェノール(UV350) 253-037-1 vPvB 紫外線吸収剤
6 2-ベンゾトリアゾール-2-イル-4,6-ジ-tert-ブチルフェノール(UV-320) 223-346-6 PBT、vPvB 紫外線吸収剤
7 フタル酸ジアルキル(C6‐C12)エステル:フタル酸ジヘキシル(EC No.201-559-5)0.3wt%以上を含むフタル酸、デシル、ヘキシル、オクチルジエステル混合物 271-094-0
272-013-1
生殖毒性 可塑剤等

第7回目の勧告案での特徴は、生殖毒性の物質のみが提案されています。また、第8回目の勧告案では、#2の発がん性、#7の生殖毒性物質以外は、難分解性・蓄積性・毒性(PBT)、極めて高い難分解性・極めて高い蓄積性(vPvB)の有害性の物質です。

なお、第8回までのECHAでは収載勧告の検討において、制限の検討に移されたdeca-BDEを含めて10物質の勧告提案を見送っています。すなわち、これまでに、ECHAでは2018年1月に追加された7物質を含めて認可対象候補リスト物質(CL物質)181エントリーの内、84エントリーが検討されています。
 ECHAで勧告を見送った物質や欧州委員会で収載しなかった物質も含めて、附属書XIV未収載のCL物質が附属書XIVに何時収載されるかは気になるところです。

一方で、認可制度の大きな目的である、より安全な物質への代替については注意が必要です。
 認可制度は、REACH規則の第VII編「認可」で規定され、第55条の条文「認可の目的及び代替についての考慮」は、下記の通りです。

REACH規則第55条:
「本篇の目的は、極めて高い懸念のある物質によるリスクが適切に管理され、経済的及び技術的に実用可能であれば、物質が適当な代替物質又は代替技術で代替されることを確保しながら、域内市場が良好に機能することを確実にすることにある。この目的のため、認可を申請する製造者、輸入者及び川下使用者はすべて、代替の利用可能性を分析し、そのリスクや代替の技術的、経済的実現可能性を考慮しなければならない。」(環境省仮訳より)

この目的達成のために、ECHAでは組織的に高懸念物質(SVHC)を代替するための活動を推進しています。2018年1月には「EUにおけるより安全な化学物質への代替を促進する新しい戦略」4)を発表しています。具体的な活動計画として、次の4項目を掲げています。

  1. サプライチェーンの能力強化
    代替の機会と挑戦の情報交換の開始し、懸念物質のより安全な代替物質の研究、評価、採用を促進する協業の構築。
  2. 代替イニシアチブのための資金調達と技術支援
    代替関連プロジェクトに関連する利用可能な資金調達および技術サポートをマッピングし、企業が情報にアクセスしやすくすることによる意識の向上。
  3. ECHAの化学物質データの効率的な使用
    ECHAの化学物質データベースは、代替すべき物質に関連する危険性とリスクを適切に理解することにより、持続可能な代替を支援する貴重なツールである。この戦略では、代替のためにデータの使用を促進するためにいくつかのプロジェクトを提案。
  4. 協調と協業のネットワークの開発
    新戦略は、既存のネットワークの開発に加えて、欧州委員会と加盟国の関係当局、業界団体、個々の企業、NGO、研究機関、代替に関心のある消費者団体からなるマルチステークホルダーネットワークの構築を提案。

詳しくは、2018年1月の公表された「Strategy to promote substitution to safer chemicals through innovation」5)で説明されています。

(林 譲)

参考資料
1)https://echa.europa.eu/authorisation-list
2)https://echa.europa.eu/documents/10162/13640/7th_axiv_recommendation_november2016_en.pdf/3e11377b-edd8-46d3-a29c-1978c41db3ad
3)https://echa.europa.eu/-/echa-proposes-seven-substances-for-authorisation
4)https://echa.europa.eu/-/new-strategy-promotes-substitution-to-safer-chemicals-in-the-eu
5)https://echa.europa.eu/documents/10162/13630/250118_substitution_strategy_en.pdf/bce91d57-9dfc-2a46-4afd-5998dbb88500

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

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