ここが知りたいREACH規則

ここが知りたいREACH規則

EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介

2018.01.26

4種のフタル酸エステル類に関するREACH規則とRoHS指令の関係

本コラム(2017年10月27日付)「REACH規則附属書XVIIの改正に関する動き」で取り上げた、「4種のフタル酸エステル類(DEHP、BBP、DBP、DIBP)の制限に関するECHA専門委員会の最終意見」に関連して、2019年7月から適用予定のRoHS指令との関係について、読者からご質問を頂きました。
 今回は、4種のフタル酸エステル類に関するREACH規則とRoHS指令の関係についてご紹介します。

1. これまでの経緯

改めて、REACH規則とRoHS指令における4種のフタル酸エステル類(DEHP、BBP、DBP、DIBP)の現状を整理してみます。
 まず、REACH規則について整理すると、2008年10月に、REACH規則の認可候補物質リスト(Candidate List)にDEHP、BBP、DBPが、2010年1月にDIBPが追加されました。その後2013年8月に附属書XIV(認可)に追加され、2015年2月以降は認可を受けていなければ4種のフタル酸エステル類およびそれらを含む混合物はEU域内での上市や使用が禁止されています。
 さらに、認可はEU域外から輸入される成形品は対象外ですが、2009年6月にREACH規則の附属書XVII(制限)にエントリー1~58が追加され、エントリー51でDEHP、BBP、DBPを合計0.1wt%超含有する特定の成形品(育児・玩具製品)について上市が禁止されています。また、RoHS指令では、2015年6月に附属書IIが改正1)され、上述の4種のフタル酸エステル類について2019年7月から電気電子製品に対する含有制限が課されることが決定しています。
 このように、4種のフタル酸エステル類については、現時点ではEU域外から輸入される成形品を対象にREACH規則附属書XVIIやRoHS指令によって規制範囲が拡大されつつある状況であると言えます。

2. REACH規則の認可と制限検討の関係

上記に加えて、4種のフタル酸エステル類について、「人が口に含むまたは粘膜接触、長期間の皮膚接触がある、または室内で使用され吸入ばく露が想定される成形品で、成形品中の可塑化された材料中に4種のフタル酸エステルを合計0.1wt%超含有する成形品」の制限が検討2)されており、現在欧州委員会(EC)が附属書XVIIの改正案を作成中の段階です。
 すでに4種のフタル酸エステル類は、認可対象物質であり、また日没日を経過しているため、認可を受けていなければ同物質およびそれらを含む混合物は、EU域内での上市や使用が禁止されています。そのため、REACH規則第58条5項で定められているとおり、物質およびそれらを含む混合物については附属書XVII(制限)の対象にはなりません。ただし、REACH規則第58条6項が定めるとおり、成形品中の物質による健康や環境へのリスクについては附属書XVIIの対象となり、REACH規則第69条2項に従い、日没日を経過した認可対象物質について、ECHAがリスクを評価し、リスクが適切に管理されていない場合には、成形品を対象とした制限手続きが進められるます。
 このような背景から認可対象物質でありながら、4種のフタル酸エステル類は成形品に関する新たな制限が検討されている状況となっています。

3. REACH規則の制限検討とRoHS指令の関係

成形品に関しては、従来から附属書XVIIのエントリー51で、玩具・育児用品中のDEHP、BBP、DBPについて合計0.1wt%超の含有が禁止されていました。その後RoHS指令によって電気電子製品についても4種のフタル酸エステル類が制限されることが決定しました。ただし、RoHS指令では、電気電子製品のうち附属書XVIIで既に含有が制限されている玩具および育児用品中のDEHP、BBP、DBPについては、法規制間の重複を避けるために対象外となっています。
 また、現在検討中の4種のフタル酸エステル類の制限でも、一部の成形品は対象外とする予定であり、この対象外の成形品として「RoHS指令の適用範囲である成形品」が挙げられています。これは、RoHS指令改正時において既に規制されている玩具・育児用品を対象外としたのと同様に、法規制間の重複を避けるためです。
 このようなREACH規則とRoHS指令での重複や矛盾を避けるための考え方として、欧州委員会は「REACH規則とRoHS指令の共通の理解3)」を2014年7月に発表しています。この内容については、2015年6月12日付のコラム(「REACH規則とRoHS指令の共通の理解」について)で6つのシナリオが紹介されています。
 6つのシナリオのうち、RoHS指令附属書IIの改正時の玩具・育児用品を対象外とした件は「5. REACH規則の認可物質(附属書XIV)をRoHS指令の制限物質として提案する」シナリオに該当します。また、現在検討中のREACH規則による4種のフタル酸エステル類を含有する成形品の制限においてRoHS指令適用製品を対象外とする件は、「1. RoHS指令の制限物質をREACH規則の制限物質として提案する」に該当します。
 現在検討中のフタル酸エステル類を例にして、改めて同コラムをご確認頂くことで、REACH規則とRoHS指令の関係について理解を深めることができるかと思います。

(井上 晋一)

1)欧州委員会 RoHS指令附属書II改正
2)ECHA RACおよびSEACで採択された意見
3)欧州委員会 REACH規則とRoHS指令の共通の理解

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

関連リンク