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ここが知りたい REACH規則

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17.12.01

ビスフェノールA(BPA)の規制動向

1. BPA(CAS No.80-05-7)とは

BPAはREACH規則の附属書XVIIで、感熱紙に200ppm以上の含有を2020年1月1日から制限されています。また、BPAはCLS(Candidate List of substances of very high concern for Authorisation )で、生殖毒性(第57条c)及び内分泌かく乱性(第57条f:人への影響)が特定されていますが、さらに、第18次CLSのパブコメ(Public consultations)で内分泌かく乱性(第57条f:環境への影響)が追加する提案になっています。
 BPAの有害性については、インターネットで検索すると諸説があります。このコラムでは、2016年6月13日のコラムのその後の動向を解説します。
 環境省の資料1)では、BPAの用途は、中間物、有機化学製品用(接着剤、合成樹脂、その他)、添加剤(樹脂用、紙用)、電子材料等製品用としています。また、BPAはポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂などの原料が主な用途で、このほかフェノール樹脂、可塑性ポリエステル、酸化防止剤、塩化ビニル安定剤などに用いられ、エンプラ(ポリサルホン、ビスマレイミドトリアジン、ポリアリレート)の原料として用いられるとされています。
 古い資料ですが、製品評価技術基盤機構「化学物質リスク評価管理研究会ビスフェノールA リスク評価中間報告書」2)では、BPAの2003年の内需量426,674トン、ポリカーボネート樹脂用302,955トン(71%)、エポキシ樹脂用65,315トン(15%)で、感熱紙用は1997年1,200トンが、2003年0トンになっています。

2. BPAの規制の特徴

BPAは、感熱紙の顕色剤としてBPAを直接的に含有させる場合と、BPAをポリカーボネート樹脂の原料とする場合の状況の異なる規制がされます。
 例えば、ポリカーボネートは、BPAと塩化カルボニル(ホスゲン)から製造されます。

図1

ポリカーボネート樹脂技術研究会のホームページ3)では、ポリカーボネート樹脂は、BPAとは異なり「長い鎖状の物質(高分子)にしたもので、環境ホルモンとしての性質はありません」としています。
 ポリカーボネート樹脂は透明性をもつために光学用途にも使用でき、航空機・自動車、電気・電子光学の材料などに広く利用されています。エポキシ樹脂は機械的強度があるので、プラスチックねじの材料にもなっています。
 エポキシ樹脂もBPAが原料ですが、ポリカーボネート樹脂と同じように高分子です。
 エポキシ樹脂は成形して利用されるより、塗料、電気絶縁材料や接着剤などに利用されています。
 ポリカーボネート樹脂もエポキシ樹脂も高分子であれば、有害性は高くはないのですが、製造過程で反応しなかった微量のBPAが残留する可能性があり、規制の動きが強まっています。

3. 規制の動き

(1)EU
 EUでは、前記の感熱紙への含有制限以外に、欧州化学物質庁(ECHA)はREACH規則の認可対象候補物質(SVHC)として新たに9物質を追加する提案について9月5日に10月20日を締め切りにした意見募集をしました。この状況は9月15日のコラムをご参照ください。
 欧州委員会(EC)は5月25日、玩具指令(2009/48/EC)の附属書IIに記載されている付録Cの3歳未満の子供向け玩具または子供が口に入れることを意図した玩具中のBPAに関する特定制限値を改正する委員会指令((EU)2017/898)を官報に公示4)しました。
 この改正により玩具指令の附属書IIの付録Cに収載されているビスフェノールAの移行限度は従来の0.1mg/Lから、0.04mg/Lに変更され、2018年11月26日から適用されます。

(2)アメリカ
 アメリカでは、EPA(環境保護庁)が"Bisphenol A Action Plan"で、規制強化を検討しています。
 "Bisphenol A Action Plan"5)では、BPAを使用して製造された製品の食品包装用途では、人間は主にこの国で使用されるBPAの5%未満を占め、環境への排出量は年間100万ポンドを超えるとしています。
 このため、EPAは、水生生物種の潜在的な影響に関する懸念に基づいて、環境中のBPAに対処する即時の行動の開始を検討し、同時に、EPAは食品医薬品局(FDA)、疾病管理センター(CDC)、国立環境科学研究所(NIEHS)などが、BPAばく露によるヒトの健康影響を評価する計画です。
 これらの取組みの結果に基づいて、EPAは、BPAの非食品包装用途に起因するヒトの健康リスクに対処するためにさらなる行動が必要かどうかを検討するとしています。
 Proposition 65 List6)では、女性の生殖毒性3μg/day(固形物質からの皮膚ばく露)としています。
これを受けて、カリフォルニア州法典第27条§25603.3(特定の消費者製品のばく露に関する警告)(f)(g)項7)で、缶詰および瓶詰めの食品および飲料からのBPAばく露の警告を要求しています。
注)§25603.30及び§25603.31の緊急規制は2017年7月1日に削除されました。
 BPAに関する情報は公開8)されています。
FDAはBPAの食品接触利用制限に関する情報を開示9)しています。
 食品添加物規制を修正し、哺乳瓶、シッピカップ(幼児のためにつくられた、液体がこぼれにくいデザインのコップ)、乳児用調製粉乳容器に特定のBPAベースの材料を使用しないようにすることの義務化をしました。
 FAQで「FDAは広範な研究を行い、BPAの安全性に関する数百の研究をレビューした。食品容器および包装におけるBPAの現在承認されている使用は安全である」としています。

7 Other
 「プラスチック容器上のこの樹脂コード"7 Other(often polycarbonate or ABS)"は、その製造にBPAが使用された可能性があることを示しています」としています。
 FDAはBPAの「低用量問題」10)を次の課題としているようです。
 化学物質ごとに実験に基づいて「許容摂取量」が決められており、その許容量以下では影響が出なくなる」とされています。「低用量問題」とは、「許容摂取量以下の量で、人や生物に影響がある」とする仮説で、低用量での影響について、新たな実験法の開発も含めて、実験が続けられています。
 各研究機関の科学的実験では、「低用量のBPAは人健康に影響しないが、子供の健康には懸念の可能性がある」との結果が報告されています。
 これを受けて、子供用製品の規制が強化されています。

(3)日本
 厚生労働省食品安全部基準審査課による「ビスフェノールAについてのQ&A」(平成22年1月15日更新)11)で、日本の取組みを説明しています。
 このなかで、「食品用の容器等は、化学物質の発生源となり、その化学物質が体内に取り込まれる可能性があることから、これらの健康被害を防止するため、食品衛生法によって規制されており、必要なものには規格基準が定められています。」としています。
 食品衛生法の規格基準においては、ポリカーボネート樹脂製器具及び容器・包装からのBPAの溶出試験規格を2.5μg/ml(2.5ppm)以下と制限しています。
 日本の規制基準は溶出量となっています。

(4)中国
 中国語では、「BPAの哺乳瓶への使用を禁止する通知」12)で、
「2011年6月1日以降は、ポリカーボネート樹脂製乳児ボトルやBPAを含む他の乳児の哺乳瓶の生産を禁止」
「2011年9月1日以降は、BPAを含むポリカーボネート乳児の哺乳瓶やその他の乳児用哺乳瓶の輸入及び販売を禁止し、製造者又は輸入者はリコールの責任を課す」
としています。
 哺乳瓶の消毒温度は100℃を超えてはならない、プラスチックボトルは消毒磨耗と裂傷が繰り返された後に摩耗して裂け、この時点で溶解したビBPAが増加するため、最大8ヶ月から1年で交換する必要があります。同時に、プラスチックの老化を防ぐために、容器を太陽の下で直接放置しないなどの解説13)もあります。
 FDAと同じくGB/T16288による樹脂コード"7"または"53"に、BPAの含有の可能性があるとしています。

4. 論点

BPAの有害性、ばく露量、低用量リスクなどの不明確な点があります。
 また、基準が日本は溶出量、EUは含有量、カリフォルニア州法はばく露量と異なっています。>
 ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂中の結合したBPAではなく、製造過程で反応しなかった微量の残留BPAが対象となります。
 BPAはREACH規則のCLSに特定され、将来的には附属書XIV(認可物質)となり、認可企業以外はSunset Date(上市禁止日)を迎えます。
 Sunset Date以降は、REACH規則第56条6項によりCLP規則第11条3項(附属書I Section1.1.2.2)に定めるカットオフ値以上含有させることが禁止されます。
 CLP規則 附属書I Section1.1.2.2では、BPAは生殖毒性1Bで表3に特定濃度限界が定められていないので、Section 3.7.3により0.3%となります。
 内分泌かく乱性物質(第57条f)はREACH規則第56条6項により0.1%が濃度限界となります。
 ポリカーボネート樹脂などのなかの遊離したBPAの含有量の測定法は難しいようです。
 別途専門家に解説していただく機会を設けます。

(松浦 徹也)

1)https://www.env.go.jp/chemi/report/h16-01/pdf/chap01/02_2_15.pdf
2)http://www.nite.go.jp/data/000010066.pdf
3)http://www.polycarbo.gr.jp/howto/howto_03.html
4)http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32017L0898&from=EN
5)https://www.epa.gov/sites/production/files/2015-09/documents/bpa_action_plan.pdf
6)https://oehha.ca.gov/media/downloads/proposition-65/p65listlinked111017_1.xlsx
7)https://govt.westlaw.com/calregs/Document/I2E352FE653364F099FD78F6185C79D00?viewType=FullText&originationContext=documenttoc&transitionType=CategoryPageItem&contextData=(sc.Default)
8)https://www.p65warnings.ca.gov/chemicals/bisphenol-bpa
9)https://www.fda.gov/newsevents/publichealthfocus/ucm064437.htm#regulations
10)https://www.fda.gov/downloads/Food/IngredientsPackagingLabeling/
FoodAdditivesIngredients/UCM424074.pdf

11)http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kigu/topics/080707-1.html
12)http://www.miit.gov.cn/n1146295/n1652858/n1652930/n4509650/c4509758/content.html
13)http://baby.sina.com.cn/11/0106/2011-06-01/1012185250.shtml

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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の 見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。