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ここが知りたい REACH規則

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17.10.27

REACH規則附属書XVIIの改正に関する動き

EU REACH規則における物質規制としては、Candidate Listへの物質追加、附属書XIV(認可対象物質)への物質追加といった認可の流れに加えて、附属書XVII(制限対象物質)への物質追加があります。
 最近のコラムでも、Candidate Listの追加提案附属書XIVへの追加等に関する最近の動向を取り挙げてきました。今回は附属書XVIIへの物質追加等に関する動きを整理します。

1. 最近の附属書XVIIの改正

附属書XVIIを改正する委員会規則は2017年にはこれまで次の3種が官報公布されています。

官報掲載日 附属書XVII改正内容 対象物質
2月10日1) エントリー67の新規追加 デカブロモジフェニルエーテル(CAS番号1163-19-5)
6月14日2) エントリー68の新規追加 ペルフルオロオクタン酸(PFOA)(CAS番号335-67-1)とその塩および関連物質
8月31日3) 付表1~6への発がん性、変異原性、生殖毒性(CMR)物質の追加 CLP規則附属書VIパート3に追加収載されたCMR物質

1つ目のデカブロモジフェニルエーテル(デカBDE)は、2019年3月2日以降、同物質の製造・上市を禁止するとともに、同物質を成分とする他の物質や混合物および、同物質を0.1wt%以上含有する成形品の製造や上市を原則禁止する内容となっています。ただし、航空機や自動車、機械等については適用時期が延期されています。また同物質はポリブロモジフェニルエーテル(PBDE)の1種として、従来からRoHS指令の制限対象であったため、電気電子機器については、本制限よりも厳しい(均質材料あたり0.1wt%)の含有制限が課されているため、本制限の適用は除外されています。なお5月に開催されたストックホルム条約締約国会議(COP8)において、廃絶対象物質(附属書A)への追加も決定されたため、今後多くの国でも原則禁止の措置が講じられることが想定されます。
 2つ目のペルフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩および関連物質については、2020年7月4日からPFOA類の製造や上市を制限するとともに、PFOAを25ppb超含有する、またはPFOA関連物質を合計1,000ppb超含有する混合物や成形品の製造時使用および上市を原則禁止する内容となっています。ただし、半導体製造設備や医療機器等については適用時期が延伸され、埋込型医療機器の製造時の物質・混合物の使用等については、本制限の適用は除外されています。
 3つ目の付表1~6へのCMR物質の追加については、定期的に見直されているCLP規則附属書VIパート3の「調和化された分類・表示」の内容をREACH規則附属書XVIIの付表に反映する内容です。REACH規則附属書XVIIのエントリー28~30では、REACH規則附属書XVIIの付表に収載されたCMR物質および一定濃度以上当該物質を含む混合物の一般用途向けの使用および上市が原則禁止されています。なお、今回の改正によって追加された物質については、2018年3月1日から適用される予定となっています。

2. 現在検討中の制限対象物質

附属書XVIIの改正は正式に官報が公布される前に各種の検討が行われており、意見募集が行われる対象として、加盟国等が提出する「制限提案文書」、欧州化学品庁(ECHA)が作成する「意見」、欧州委員会(EC)が作成する「改正案」の3段階があります。
 まず、正式な改正に近い「改正案」段階のものとしては、次の3種の新規追加があり、物質・混合物の使用や上市を制限する内容です。
 なお、改正案はECの意見募集ページ4)またはTBT通知ページ5)等で公表され、意見募集が実施されます。

【改正案】
附属書XVII
改正内容
対象物質 制限用途 適用時期等
エントリー69の新規追加 メタノール(CAS番号67-56-1) メタノールを0.6wt%超含有する一般消費者向けのフロントガラス洗浄剤または除霜剤、および変性アルコール製品の上市を制限 2017年上期に採択し、施行の1年後から適用
エントリー70の新規追加 オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)(CAS番号556-67-2)およびデカメチルシクロペンタシロキサン(D5)(CAS番号541-02-6) いずれかの物質を0.1wt%以上含有する、使用後に水で洗い流すパーソナルケア製品の上市を禁止 2017年下期に採択し、施行の2年後から適用
エントリー71の新規追加 1-メチル-2-ピロリドン(NMP)(CAS番号872-50-4) NMPおよびNMPを0.3%以上含有する混合物について、労働者ばく露に関する所定の条件を満たしていない場合には製造や使用、上市を禁止 2018年上期に採択し、施行の2年後から適用

次にECHAが最終意見を採択した「意見」段階のものとしては、次の2種があり、現在EUが改正案を作成している段階となっています。ECHAの最終意見については、ECHAの「採択された制限提案」6)で確認することができます。
 このうち、フタル酸エステル類については、REACH規則附属書XVIIのエントリー51でDEHP、BBP、DBPを含有する玩具や育児用品を対象にすでに制限が課されていますが、新たなエントリーとして対象製品が拡大されるとともに、既存のエントリー51にDIBPを追加するECHAの最終意見が採択されています。なお、4種のフタル酸エステル類については、2019年7月からRoHS指令の制限対象になり、本制限よりも厳しい(均質材料あたり0.1wt%)の含有制限が課されているため、本制限の適用は除外されています。

【ECHAの最終意見】
対象物質 制限用途
(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-tridecafluorooctyl)silanetriol and any of its mono-, di- or tri-O-(alkyl) derivatives(TDFA類)の新規追加 一般消費者向けスプレーの製造時の有機溶剤との使用・調製や、当該物質を2ppb以上含有する有機溶剤を含む一般消費者向けスプレーの上市を禁止
4種のフタル酸エステル類(DEHP、BBP、DBP、DIBP)の新規追加とエントリー51の修正 人が口に含むまたは粘膜接触、長期間の皮膚接触がある、または室内で使用され吸入ばく露が想定される成形品で、成形品中の可塑化された材料中に4種のフタル酸エステルを合計0.1wt%超含有する成形品の上市を制限
既存のエントリー51にDIBPを追加

また、制限提案文書の段階では、現在、鉛とジイソシアネート類に関する次の3種が検討されており、意見募集で寄せられた意見を踏まえてECHAが意見を作成することになります。なお、これらの情報はECHAの「提出された制限提案書文書の意見募集」7)で確認することができます。

  • ジイソシアネート類の合計濃度が0.1wt%以上の産業用途または専門家用途の物質または混合物での使用および上市を制限
  • PVC製品の安定剤として鉛化合物を金属換算で0.1wt%超使用するPVC製品の上市を制限
  • 湿地内で用いるまたは湿地内に着弾する散弾であり、かつ1wt%超の鉛および鉛化合物を含有する散弾の使用を制限

さらに、制限提案文書の作成に向けて検討が進められているものとしては、多環芳香族炭化水素(PAH)類やコバルト塩類、ペルフルオロノナン酸(PFNA)等があり、これらの情報はECHAの「制限提案意向8)」で確認することができます。

REACH規則の規制対象物質の検討手続きは、透明性の向上や企業の予測可能性を高めるためにECHAのウェブページ等を通じて、適宜その進捗や提案文書やECHAの意見等の関連文書が公開されています。
 制限対象の物質や条件を確認する際に、今回ご紹介したECHAのウェブページ等をご活用いただき、情報収集の参考になれば幸いです。

(井上 晋一)

1)EU官報:(EU)2017/227
2)EU官報:(EU)2017/1000
3)EU官報:(EU)2017/1510
4)EC 意見募集ページ
5)EC TBT通知データベース
6)ECHA 採択された制限提案
7)ECHA 提出された制限提案書文書の意見募集
8)ECHA 制限提案意向

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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の 見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。