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ここが知りたい REACH規則

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17.10.20

REACHにまつわる話(70)-ナノマテリアルに関する登録情報要求のための附属書改正案について-

REACH規則において懸案でありました「登録におけるナノマテリアルに特化した情報要求」に関して1)、REACH規則附属書の改定草案が、欧州委員会から公表され、2017年10月9日~11月6日までの4週間、意見募集が行われています2)

改訂草案では、REACH規則附属書I、IIIおよびVI~XIにわたり、ナノマテリアルに関連する情報要求事項について、条文の修正や追加が行われています。

草案の前文は26項ありますが、安全性評価や登録情報に関する改訂の考え方の主なものとして、下記のような説明があります。

前文(6)
 ナノ形状の物質の技術文書および化学物質安全性報告の最低限の標準情報がない場合、潜在的なリスクが適切に評価されているかどうかを確認することはできない。ナノ形状を有する物質の登録と関連する下流ユーザーの義務要件の明確化は、REACH規則の附属書I、IIIおよびVI~XIIに含めるべきである。これによりつり合いのとれたコストで明確で効果的な施行を確実にし、イノベーションと競争力に悪影響を及ぼさないようにすべきである。ナノ形状に関しての変更により、他の形状の登録物質のリスク評価の実施および文書化を害するものであってはならない。

前文(7)
 製造者と輸入者は、製造または輸入されるナノ形状の物質の特定された用途によって生じるリスクが適切に管理されていることを評価し、必要な場合は、化学物質安全性報告書において、必要な情報とその文書を作成しなければならない。明確にするために、化学物質安全性報告書には、評価によってカバーされる異なるナノ形状の種類と、どのように情報が報告書にまとめられているかを記述しなければならない。ある使用では、1つのナノ形状を別の形状に替えるか、または新しいナノ形状を生成する可能性がある物質に変更することができる。下流ユーザーは、この様な情報をサプライチェーンの上流に提供して、その使用が製造者または輸入者の登録書類によって適切にカバーされるようにする必要がある。

前文(8)
 大部分のナノマテリアルは段階的導入物質のナノ形状であると考えられるので、少量の段階的導入物質に関する新しい毒物学的および生態毒性学的情報の生成要件の条件を整理し、評価基準がナノ形状により予測される特性に基づくことを確実にしなければならない。既存の定性的または定量的な構造活性相関(QSAR)および他のツールの優先順位付けはまだ可能でない。したがって、不溶性情報は、物質のナノ形状の潜在的な毒物学的および生態毒性学的側面の代替として適用されるべきである。

前文(9)
ナノ形状については、物質同定の下で組成情報の一部として特定の最小限の特性情報を提供すべきである。ナノ形状の粒子サイズ、形状および表面特性は、その毒性学的または生態毒性学的プロファイル、ばく露ならびに環境における挙動に影響を及ぼす可能性がある。

前文(10)
作業性および比例性の理由から、類似の特性を有するナノ形状を「セット」にグループ化し、市場に出回っている実際の材料で限定された変動を許容する範囲の異なるナノ形状またはナノ形状のセットの特性を提供することが可能でなければならない。その場合、個々のナノ形状のハザード評価、ばく露評価、リスク評価に適している理由を正当化する必要がある。

前文(13)
 異なるナノ形状に対する物理化学的、毒物学的および生態毒性学的情報の関連性の適切な評価を可能にするために、試験材料は適切に特徴づけられるべきである。同じ理由で、異なるナノ形状またはナノ形状のセットに対して、利用された試験材料の関連性および妥当性に関する文書化された試験条件および科学的正当性が提示されるべきである。 テスト以外の方法で得られた情報の関連性と妥当性については、同様の方法でアプローチしなければならない。

前文(20)
異なるナノ形状またはナノ形状のセットを同定するために使用される物理化学的特性の数は、ナノマテリアルの特性の科学的理解に関連すると考えられ、必要なパラメータは個々のケースで変わる。作業性および比例性の理由から、他の粒子特性がハザードまたはナノフォームへのばく露に有意に影響を及ぼす場合には、100トン/年以上の物質の登録者のみがそのようなさらなる情報を明確に検討することを要求されなければならない。

このような目的を達成するために、附属書を改定することになっています。

改訂が行われた場合、改訂条項を直ちに順守・対応することは困難であるのと考えられることから、2020年1月1日から施行されることになっています。

他方、2017年5月にナノマテリアルの登録のためのガイダンスとして「ナノ形状をカバーする登録書類の作成方法:ベストプラクティス(How to prepare registration dossiers that cover nanoforms: best practices)」3)が公表されています。この草案である「登録ガイダンスの付録4(Appendix 4:Recommendations for nanomaterials applicable to the Guidance on Registration)」を2017年2月3日のコラムでご紹介しました。公表された上記のガイダンスは若干の文言の修正が行われていますが、内容は草案とほぼ同じです。ナノマテリアルの登録に当たっては、このガイダンスの内容を参考にして、登録に必要な情報を準備すればよいと考えることが出来ます。

なお、「ナノマテリアルの定義に関する委員会勧告2011/698/EU」が出されていますが、この見直しについての意見募集が行われていました4)。意見募集はすでに締め切られ、18件のコメントが提出されています。多くは見直しが必要との意見が出されていますが、その中でもCefic(The European Chemical Industry Council;欧州化学工業連盟)による下記のコメントは注意すべきではないかと思います。

  • サイズに基づく定義:定義は1から100nmまでのサイズにのみ基づいている。しかし、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびフラーレンを含めるために、いくつかの例外が当初導入されていた。例外も見直されているので、Ceficはこれらの例外を制限することを提案したいと考えている。これにより、REACH附属書への適合のための影響評価において考慮されなかった多くの物質をナノ物質とすることができる。
  • 最後に、ナノマテリアルに対応するためのREACH附属書の改訂に関する議論を含めることなく、ナノマテリアルの定義に関する議論を完了することはできないことを言及しておきたい。ナノマテリアルを特定する際の不確実性を明確にした上で、ナノマテリアルの登録を目指すべきである。Ceficはこのプロセスに参加する準備ができており、ナノ材料の定義に関する勧告とREACH附属書の改訂をさらに進めることを期待している。

このようなことから、ナノマテリアルの登録に関するREACH附属書の改訂に向けた議論は、ナノマテリアルの定義の改訂と並行して行われることが考えられ、さらに時間が掛かるものと推測されます。

(林 譲)

参考資料
1)http://ec.europa.eu/research/industrial_technologies/policy_en.html
2)http://ec.europa.eu/info/law/better-regulation/initiatives/ares-2017-4925011_en
3)https://echa.europa.eu/documents/10162/13655/how_to_register_nano_en.pdf/f8c046ec-f60b-4349-492b-e915fd9e3ca0
4)http://ec.europa.eu/info/law/better-regulation/initiatives/ares-2017-4513169

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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の 見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。