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ここが知りたい REACH規則

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17.08.04

カリフォルニア州の安全消費者製品規則(SCPR)の現状

米国では、国全体を共通的に規制する連邦法の有害物質規制法(TSCA)が改正され、その下位規則の制定が進められているところです。
 一方、州の中でも特徴的な化学物質規制を設けているカリフォルニア州では、安全飲料水及び有害物質執行法(プロポジション65)について、対象となる物質の追加に加え、警告表示の改正などが行われています。また、2013年には全ての消費者向け製品を対象とした「安全消費者製品規則(SCPR)」が施行され、規制当局である有害物質管理局(DTSC)が候補化学物質の選定や優先製品の特定等の準備を進めていました。
 この結果、2017年7月1日に初めての優先製品指定規則が施行され、同規則に伴う企業対応が求められる段階になりましたので、改めてSCPが定める4つのステップごとに最近の動きを含めてご紹介します。

第1ステップ:候補化学物質の特定

プロポジション65やEU CLP規則附属書VIなどの各種物質リストをもとに、候補化学物質が逐次更新されており、DTSCが提供する候補化学物質データベース1)には、2017年7月末時点で約2,500物質が収載されています。

第2ステップ:製品と化学物質の組み合わせの優先順位付け

カリフォルニア州で販売される消費者製品のうち、第1ステップで特定した候補化学物質を1種以上含有し、広範囲に利用されるなど、消費者のばく露の影響がある製品などから優先製品が特定されます。優先製品に特定されると同製品の製造者・輸入者・販売者等に対して、届出が求められます。
 優先製品については、2014年に初期優先製品リスト案が公表され、次の3製品が提案されていました。

  • TDCPPまたはTCEPを含有する子供用のスポンジ状寝具
  • 不活性ジイソシアネート類を含有する発泡ポリウレタンスプレー
  • 塩化メチレンを含有する塗料剥離剤

このうち、「りん酸トリス[1‐(クロロメチル)‐2‐クロロエチル](TDCPP、CAS番号13674-87-8)またはトリス(2-クロロエチル)=ホスファート(TCEP、CAS番号115-96-8)を含有する子供用のスポンジ状寝具」を初めての優先製品に特定する規則2)が2017年4月に採択され、7月1日に施行されました。これらの物質は主に難燃剤として利用されており、同製品の製造者等は、8月30日までにDTSCに届出を行うことが必要となります。なお、DTSCによると、カリフォルニア州の子供用スポンジ状寝具の製造または販売者は約75社程度のようです。
 また、「不活性ジイソシアネート類を含有する発泡ポリウレタンスプレー」については優先製品に特定する規則案3)が2017年3月に公表され、意見募集等を経て検討中の段階です。

なお、これらの初期優先製品の規則化に加えて、その他製品の優先製品リストへの追加検討に向けて、2015年に2015~2017年の作業計画4)が公表されていました。

第3ステップ:代替分析(AA)

優先製品に特定された場合には、該当する懸念化学物質(子供用スポンジ状寝具の場合は、TDCPPまたはTCEP)の代替の可否や代替候補物質等に関する代替分析(AA)が求められることになります。この代替分析(AA)は2段階で行うことになっており、暫定版として位置づけられる第1段階AAは優先製品リストに特定されて180日以内、完成版となる第2段階AAは第1段階AAの審査結果を受領して1年以内に報告書を規制当局に提出しなければなりません。
 なお、代替分析の企業による実施を支援するために、「代替分析に関するガイド」5)が2017年6月に公表されました。同ガイドでは、第1段階および第2段階のAAの進め方を次のステップで進めるよう説明されています。

第1段階AA(暫定) 第2段階AA(完全)
1.製品要件および懸念化学物質の機能を特定する 1.複数代替案を比較検討する要因を特定する(第1段階AAの詳細化)
2.複数の代替案を特定する 2.代替案による優先製品のばく露経路やライフサイクルを踏まえた比較
3.複数代替案を比較検討する要因を特定する 3.追加情報の検討
4.代替化学物質の初期評価およびスクリーニングの実施 4.代替案の決定
5.追加情報(経済的影響等)の検討 5.完全AA報告書の作成
6.暫定AA報告書の作成
第4ステップ:規制化

企業による代替分析の結果、代替化が困難であることが示された優先製品などのうち、当局が公衆衛生や環境の保護に必要と判断した場合には、当局や消費者への情報提供、使用制限、販売禁止、その他必要な措置等の規制対応が検討されることになります。

なお、SCPの4つステップについて、DTSCのウェブサイトでフローチャート6)が提供されていますので、こちらもあわせてご確認ください。

SCPRの規制対象は消費者向け製品であり、その製品中の懸念化学物質の代替を促進することが目的となっています。この点は化学物質そのものに主眼を置くEU REACH規則や米国TSCA等のいわゆる化学物質規制とは視点が異なっていると言えます。
 SCPRはカリフォルニア州に限定した規制ではあるものの、2013年の施行以降、各種の検討を経て、ついに第2ステップから第3ステップに入る段階となり、届出や代替分析等の企業対応はもとより、米国の他州および他国などへの波及といった点でも、今後の動向が注目されます。
 なお、米国の他州でも子供向け製品を対象とした情報開示制度が波及しつつあり、またフランスでもREACH規則の認可対象候補物質リスト(Candidate List)に収載された物質等の懸念物質について、企業に代替を推奨する制度の創設(DETOX法案)7)が検討されています。

(井上 晋一)

1)https://calsafer.dtsc.ca.gov/chemical/search.aspx
2)http://www.dtsc.ca.gov/SCP/upload/Regulation-Text_Childrens-Foam-Padded-Sleeping-Products_Final_Clean.pdf
3)http://www.dtsc.ca.gov/SCP/upload/SPF_Proposed_Regulations_Text.pdf
4)http://www.dtsc.ca.gov/SCP/upload/PriorityProductWorkPlan_2015.pdf
5)http://www.dtsc.ca.gov/SCP/upload/AA-Guide-Version-1-0_June-2017.pdf
6)http://www.dtsc.ca.gov/SCP/upload/SCPRegFlowChart.pdf
7)http://www.senat.fr/leg/ppl15-302.html

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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の 見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。