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ここが知りたい REACH規則

コラム

REACH検索

16.09.23

非意図的添加とリスク管理

RAPEX1)で、「Years=2016」「Free text search=REACH」「Risk type=Chemical」をキーワードにして摘発状況を検索(検索日9月18日)したところ184件ヒットしました。

REACH規則の制限(附属書XVII)に関連する特徴的な事例について、企業対応を考えてみたいと思います。
(1)玩具にdi-(2-ethylhexyl)phthalate(DEHP)を4.1%含有している。基準値は附属書XVII Entry No 51(DEHP、 DBP 、BBP )0.1%
・DEHPを基準値以上含有している事例です。

(2)溶接用革製保護手袋に六価クロムを23 mg/kg含有している。準値は附属書XVII Entry No 47 3 mg/kg(0.0003%)
・六価クロムを基準以上に含有している事例ですが、皮膚接触革製品の基準が2015年5月1日から3ppmに強化された直後の摘発です。産業用専門家用途製品での摘発で注目されます。

(3)宝飾品にカドミウム(47%)、鉛(0.22%)を含有している。基準値は、カドミウムは附属書XVII Entry No 23 0.01%、鉛は附属書XVII Entry No 63 0.05%
・宝飾品のロー付け部分の摘発と思われますが、日本では合法的に販売されているロー材です。

(4)装飾用ランプのランプが子供の手が届き飲んでしまう可能性がある。基準値は附属書XVII Entry No 3危険物質の使用禁止と表示
・燃料(危険物質)に対する表示(この液体を入れたランプは子供の手の届かない所に保管しなければならない)がないという使用方法による摘発です。

(5)魔法瓶(Thermos flask)にアスベストファイバーを含有している。基準値は附属書XVII Entry No 63 意図的使用禁止
・基準値がなく、意図的使用は極微量でも不適合となります。一方、非意図的含有との識別の難しさがあります。

REACH規則の制限の企業対応は、事例(1)が中心で考えられています。事例(2)は、2015年5月施行されて間もなく、仕掛在庫、物流在庫の管理が課題となる事例です。

事例(3)は、販売が日本国内であったものが、顧客が輸出したような商流により適合、不適合になる事例です。

事例(4)は、製品そのものより使用方法による摘発です。RoHS(II)指令などのニューアプローチ指令の"The Blue Guide 20162)"の2.7項(意図した使用/誤使用)でいう「合理的に予見できる使用条件を誤使用を含めて深く考慮する」の考え方です。

事例(5)は、基準値ではなく「意図的使用禁止」という理念は理解できるものの企業対応に悩むところです。

意図的使用は、かつてELV(廃自動車)指令3)のAnnex Iで特定有害物質の最大許容濃度は非意図的添加としてカドミウム 0.01%、水銀、鉛、六価クロムは0.1%としていました。その脚注で意図的添加を「最終製品に特定の特徴、外観もしくは質を提供するために、 継続的な存在が要求される材料や部品が組織として計画的に利用されることを意味する」と説明していました。

その後、最大許容濃度は意図的非意図的を問わずと改正され、RoHS指令も同様の規制になりました。

日本企業のグリーン調達基準でも「意図的使用禁止」「使用禁止」などがあります。長いサプライチェーンを考えると、「意図的使用」でないことの適合説明をどのようにするかが企業の課題になります。

参考になる例として、食品接触材料に関する規則(Regulation 10/2011)4) plastic materials and articles intended to come into contact with food 通称:PIM)があります。

PIMでは、附属書Iに収載されたユニオンリストに収載された物質しか意図的に利用できなく(第5条)、この適合宣言(Declaration of compliance:DoC)を附属書IVにより作成しなくてはなりません(第15条)。

附属書IVには食品へのプラスチックからの物質の溶出量に関する技術的データが要求されています。適合宣言をサプライチェーンで渡していきますが、トレサビリティが要求されます(第17条)。

PIMで問題になるのが「非意図的添加物質」の含有です。用語の定義では、「非意図的添加物質(non-intentionally added substance)とは、物質中の不純物、生産プロセスで生成された反応中間体、分解物、反応生成物」としています。また、サプライチェーンのなかで、上流からの物質に追加、多層化することやコーティングや印刷することもあります。このような場合は、DoCは修正されます。

サプライチェーンのなかでの追加、合成などでの追加物質は、ユニオンリストに収載されていない物質も当然あり得ますので、PIMでの最終製品には、「意図的添加物質」と「非意図的物質」が含有されています。当然ながら「非意図的物質」の安全性は要求されます。

「意図的添加物質」の含有証明はできるのですが、「非意図的物質」については「意図的に入れていない」ことの証明は難しいものがあります。

Food Packaging Forumが非意図的添加に関する資料5)を公開しています。

非意図的添加物(NIAS)は、材料の中にありますが、生産プロセス中では技術的な理由で加えられていない化合物です。食物コンタクト材料(FCM)中のそれらの存在は、消費者に一般に知られていないものといえます。

NIASの構成物質としては、「分解生成物(ポリマーの分解・添加物の分解)」「不純物」「副生成物(プロセスでの酸化防止剤・UVプロテクト・接着剤・染料による生成)」「リサイクル由来」などがあります。

分析方法はクロマトグラフィーで分離しマススペクトロ分析しますが、様々な問題があります。

  • 未知物質もあり、すべての構成物質を分析できない
  • 100%抽出できるか
  • 熱分解法はフラグメンテーションが複雑
  • 物質特定ができるか

毒性学による評価は高額になるのでデータベース化が期待されます。

分析で確定できないのであれば、開発での材料選択、サプライヤ選択、工程などのプロセスのリスクアセスメントを行い、NIASの構成物質の生成の可能性を踏まえて、DoCの項目の詳細化が必要となります。

DoCの第7項の「物質に関する適切な情報、それらの特定の移動のレベルに関する、実験データあるいは理論計算によって得られた情報」、第8項の「温度などの諸条件」がリスクアセスメントのポイントになります。

印刷インクや接着剤などはDoCが必須ではなく、全項目は記載できない場合がありますが、第8項などは有用な情報になりますので、伝達が推奨されています。

EuPIA(European Printing Ink Association)は「非意図的に添加された物質に関するポジションステートメント(声明書)」を公開6)しています。声明書では、「印刷インクには化学物質を含有しているが、非意図的に添加された物質であり、分析もできないが非意図的に添加された物質を含有している」としています。

REACH規則では、Candidate List収載物質が成形品に利用される可能性のある情報7)(Information on Candidate List substances in articles)を開示しています。情報には成形品カテゴリ(Article Categories)と特定された用途(Identified Uses)が示されていますので、リスクアセスメントのポイントが絞れます。

PIMは多くの皆さまには、直接的に関係しないと思いますが、非意図的添加の対応の考え方は、RoHS指令やRACH規則が要求する情報伝達の企業対応の参考になると思います。

参考資料

1)Rapid Alert System - Search notifications
2)Official Journal of the European Union (PDF Download)
3)Official Journal of the European Communities
4)COMMISSION REGULATION (EU) No 10/2011 of 14 January 2011 on plastic materials and articles intended to come into contact with food
5)Dossier -Non-intentionally added substances (NIAS)
6)POSITION STATEMENT on Non-Intentionally Added Substances (NIAS)
7)ECHA Information on Candidate List substances in articles

(松浦 徹也)

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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の 見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。


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