本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

スタートアップガイド

J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト

  • J-Net21とは
  • スタートアップガイド
中小機構
  • メルマガ登録
  • RSS一覧
  • お問い合わせ

HOME > 経営をよくする > ここが知りたいREACH規則

ここが知りたい REACH規則

コラム

REACH検索

15.10.16

労働安全衛生法における化学物質管理の強化について(3)―化学物質のリスクアセスメントについて―

2015年5月1日付けコラム同年8月21日付けコラムでは、労働安全衛生法(以下、労安法)における化学物質管理の強化の内容について紹介しました。
 前回のコラムの公開時には未公表だったリスクアセスメントに関する指針が9月18日に公表されました。今回のコラムでは、この指針の内容も含めて改めて労安法で求められる化学物質のリスクアセスメントと実施の留意点を整理して紹介します。

1.労安法で求められる「化学物質のリスクアセスメント」とは?

労安法で求められている「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等」の「危険性又は有害性等の調査等」は指針において「リスクアセスメント」として説明されています。従い、このコラムにおいても「リスクアセスメント」と用語を統一して紹介します。

指針は、「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」として発表されました。また、同日に、都道府県労働局長に宛て、指針に関する施行に当たっての説明の通達文が出されています1)
 指針の内容は、これまでの指針と基本的には同じですが、リスクアセスメントの義務化が課せられたことによる修正が行われたと捉えることができます。

 
2.リスクアセスメントを行わなければならない事業者は?

改正労安法で義務化されたリスクアセスメントの条文には、義務が課せられている対象者は、「事業者」とだけ規定されていますが、どのような業種の事業者かは明示的には示されていません。

参考:新設されたリスクアセスメントの条文
(第五十七条第一項の政令で定める物及び通知対象物について事業者が行うべき調査等)
第五十七条の三 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第五十七条第一項の政令で定める物及び通知対象物による危険性又は有害性等を調査しなければならない。

しかし、労安法では「事業者の行うべき調査等」の規定があります。この規定から、「危険性又は有害性」に係る業務については、化学物質、化学物質を含有する製剤、すなわち化学品を扱うすべての業種の事業者に義務が課せられていることになります。

参考:(事業者の行うべき調査等)
第二十八条の二 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等を調査し、その結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない。ただし、当該調査のうち、化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物で労働者の危険又は健康障害を生ずるおそれのあるものに係るもの以外のものについては、製造業その他厚生労働省令で定める業種に属する事業者に限る。

この条文は、平成27年6月1日以降は改定され、第57条の3に係る内容が削除された条文になります。

3.リスクアセスメントでは、どのような調査を行わなければならないか?

リスクアセスメントは「危険性又は有害性の調査等」ですが、この中の「又は」は危険性か有害性の「何れか」について行えばよいということではありません。 「危険性」と「有害性」のある化学品を扱う場合は、「危険性」についても「有害性」についてもリスクアセスメント行う必要があります。誤解を招かない日本語にすることの難しさを改めて感じます。

4.リスクアセスメントを行わなければならない化学物質とは?

労安法では今回の改正によって、労働安全衛生施行規則(以下、安衛則と略す)の別表9に収載されている物質、いわゆる640物質がリスクアセスメントの義務化の対象になります。
 この640物質を含有する製剤、すなわち混合物については、ラベル貼付とSDS提供義務の裾切り値が異なる分類があることから判断が難しいかもしれません。しかし、まずは絵表示のある混合物についてリスクアセスメントを行うことで、リスクの有無のスクリーニングを行うことが必要と考えます。そのスクリーニングでリスクが高い場合は、さらに詳細なリスクアセスメントを行うことになります。

また、労安法第24条の15および16では、JISZ 7252、すなわちGHSの分類基準で危険有害性となる化学品については、ラベルの貼付、SDSの提供が努力義務とされています。 また、これらの化学品については、第28条の2においてリスクアセスメントの努力義務が課せられています。例え640物質を含有していなくても、できれば、JISZ 7252で危険有害性に分類される化学品についてもリスクアセスメントの対象とするのがよいと考えます。

5.リスクアセスメントはいつ行わなければならないか?

リスクアセスメントの義務化は平成28年6月1日から施行されます。
 それは、新しい化学品を採用もしくは変更する場合、新しい方法や手順を採用もしくは変更する場合、あるいは化学品の危険有害性情報が更新や変更された場合等に行うことが求められています。従って、平成28年6月1日以前から行っている業務については、施行日以降も同じ化学品を同じ取扱い方法や手順で使用していれば、条文上はリスクアセスメントの義務はないことになります。

しかし、これまでにリスクアセスメントを行っていない場合は、リスクアセスメントを実施することが努力義務とされています。また、労災が発生した場合、機械設備の経年変化がある場合、安全衛生の知識経験の変化や新たな知見の集積等があった場合には、努力義務としてリスクアセスメントを行うことが求められています。

いずれにしても、従業員の健康障害を防止し職場の安全を守るために、化学品を取り扱っている職場では、義務の有無にかかわらず、今回の労安法の改正をよい機会と捉え、リスクアセスメントを行い、作業の仕方等を見直していただければと思います。

6.リスクアセスメントはどのように行うか?

まず、職場で化学品を扱っている業務を特定し、業務の中の各工程・作業を対象に、その工程・作業で使用する化学品の危険性・有害性の特定を行います。
 危険性・有害性の特定は、SDSの第2項「危険有害性の要約」に記載されているGHSの分類結果や、SDSの第8項「ばく露防止及び保護措置」に記載されている日本産業衛生学会の許容濃度や米国産業衛生専門家会議(ACGIH)のTLV-TWA等の暴露限界の値、あるいはこれまでの労働災害等の情報から行います。

次に、これらの危険性・有害性の情報を用いて、自社に最も適した方法を用いてリスクの見積りを行います。採用しなければならないリスクの見積りの方法は決められていませんが、指針には以下のようなリスクの見積りの方法が挙げられています。

  • 定量的方法
    • 作業環境濃度の測定(許容濃度等との比較)
    • ECETOC TRA(Targeted Risk Assessment tool)
    • あらかじめ尺度化した表を使用する方法(指針では定性的方法として例示)
  • 定性的方法
    • マトリックス法
    • 数値化法
    • 枝分かれ図を用いた方法(リストグラフ)
    • コントロールバンディング(厚労省「職場のあんぜんサイト」で提供)
    • プロセス災害を見積もる方法(主に危険性について)
  • その他
    • 労働安全衛生法関係法令に規定する化学物質の場合、各規定の履行状況を確認
    • その他危険物と同様の危険性を有する化学物質等の場合、労働安全衛生規則の各規定を確認

リスクの見積りにおいては、作業環境濃度を測定することが望ましい方法ですが、費用の面等を考えると困難なケースがあるかもしれません。従い、まずは簡易な定性的方法でリスクの見積りを行って構いません。
 その方法の1つとして、比較的使いやすく、リスクの低減措置のアイデアが示されているコントロールバンディングが使いやすいのではないかと思います。ただし、コントロールバンディングは、リスクの見積りとして厳しい結果が示され、より安全側のリスク低減措置が示される傾向があります。

なお、コントロールバンディングの実施支援ツールが厚生労働省のホームページで提供されています2)
 詳細なリスクアセスメントの仕方については、厚生労働省の委託事業として支援事業が行われていますのでそちらをご利用下さい。

7.リスク低減措置の検討と実施について

6項で得られたリスクの見積りで、作業環境濃度が許容濃度より低い等のように、リスクが無いか低い場合はそれ以上の対策は不要です、しかし、リスクが高い場合にはリスクの低減措置を検討する必要があります。

低減措置には、機械設備の改良や設置、作業手順の改良や立入り禁止等を設ける管理的方法、使用化学品の変更や作業条件の変更、場合によっては保護具の使用等が考えられます。これらの中から、優先順位をつけて低減措置を実施する努力義務が課せられています。

8.リスクアセスメントの結果の従業員への周知

リスクアセスメントの結果については、従業員に以下のiの内容を、iiに示す方法で周知することが必要です。

  • 周知する内容
    • 対象の化学物質等の名称
    • 対象業務の内容
    • リスクアセスメントの結果
    • 実施するリスク低減措置の内容
  • 周知する方法
    • 作業場への常時掲示・備え付け
    • 労働者への書面交付
    • 常時確認可能な機器での電子保管

この周知は労安法上の義務となっています。また、iの内容は、記録、保存することが望ましいとなっていますのでご留意ください。

(林 譲)

1)http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/sisinsekou.pdf
2)http://anzeninfo.mhlw.go.jp/ras/user/anzen/kag/ras_start.html

中小企業の方を対象として、海外ビジネスに関する質問を無料で受け付けています。
中小機構「中小企業国際化支援アドバイス

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の 見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。


このページの先頭へ