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ここが知りたい REACH規則

コラム

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15.09.25

成形品中のSVHC濃度判定時の分母に関する欧州司法裁判所の先決裁定

2015年3月13日付けコラムで、成形品中のSVHCに関する届出や情報伝達義務の濃度閾値である0.1wt%の判定時に分母として用いる「成形品重量」の解釈について、欧州司法裁判所法務官の意見を取りあげました。
 この法務官意見では、特に輸入成形品について、ECHAのガイダンスが示す「複合成形品全体」を分母とするのではなく、複合成形品を構成する「個々の成形品」を分母とすることが示されました。

この法務官意見を踏まえた欧州司法裁判所の先決裁定が9月10日に公表されました。判決内容は、おおむね2月に公表された法務官意見と同様であり、EU域外で製造された複合成形品の輸入者は、複合成形品を構成する「個々の成形品」単位でSVHCの含有判定を行うことが求められることになります。

先決裁定では法務官意見と同様にREACH規則第3条(3):成形品の定義、第7条(2)、第33条、それぞれについて論旨が記載されています。

1.第3条(3):成形品の定義

【経緯】
 REACH規則では、2つ以上の成形品で構成される「複合成形品」を特別に規定した条文はないため、REACH規則上は両者を区別する必要はない。そのため、複合成形品が「成形品」に該当するか否かは第3条(3)の定義のみで判断されことになる。

【結論】
 第3条(3)の定義を満たし、複合成形品の構成部品となるものは成形品に該当する。

2.第7条(2):届出

【経緯】
 REACH規則第7条(2)は、登録されていないSVHCの情報をECHAに提供することである。 製造者は自社が製造・組み立てた成形品中のSVHCの存在をECHAに届出することが求められる。なお、川下の2次製造者が同成形品を複合成形品の部品として利用する場合には、2次製造者は同部品について再度届出を行う必要はない。

成形品輸入者も製造者と同様である。異なる解釈をしてEU市場に上市されるSVHCの実質的な使用量がECHAに知らされない危険性が生じることはREACH規則の目的に反することになる。 また、欧州委員会等はEU域外のサプライヤーから必要情報を入手することが困難であると述べているが、困難であるか否か自体はREACH規則の解釈に影響しない。

【結論】
 製造者は、自身が製造する成形品の重量によって0.1wt%超の濃度で存在するか否かを決定するものと解釈しなければならない。また、2つ以上の成形品で製造された製品の輸入者は、個々の成形品の重量によって0.1wt%超の濃度で存在するか否かを決定するものと解釈しなければならない。

つまり、EU域内の製造者については、自社が製造または組み立てた製品を分母とすればよいが、EU域外で製造された複合成形品の輸入者は、複合成形品を構成する「個々の成形品」を分母に0.1wt%を決定することになります。そのため複合成形品の輸入者は、複合成形品全体ではなく、個々の成形品単位でSVHCの含有状況を把握することが必要となります。

3.第33条:情報伝達

【経緯】
 REACH規則第33条の情報伝達は第7条(2)の届出とは次の観点で異なる。

  • 義務対象はサプライチェーン全体であり、届出よりも幅広いこと。
  • 義務が課される条件が成形品中のSVHCの含有率のみであること。
  • 義務の目的がサプライチェーンの関係者が、各段階において成形品中のSVHCについて安全に使用するためのリスク管理措置を講じることができるようにすること。

また、サプライチェーンを通じて、受領者や最終消費者が製品特性を把握することで、製品選択を可能にすることもREACH規則の間接的な目的である。これら各種要因を考慮すると、サプライチェーンを通じて最終消費者に至るまで情報提供義務の有効性を保証する解釈に重きをおくべきであり、個々の成形品を複合成形品の一部とすることは、サプライチェーンを通じた情報伝達を妨げることになり、REACH規則の目的に矛盾することになる。

また、第33条では供給者提供する情報として、「利用可能な安全な使用に関する十分な情報(少なくとも物質名)」と限定しているため、過度な負担とみなすことはできない。

【結論】
 成形品中にSVHCが0.1wt%超の濃度で存在する1つまたは複数の成形品で構成される製品の供給者は、製品の受領者および情報提供要請があった消費者に対し、SVHCの存在(少なくとも物質名)について知らせるものと解釈しなければならない。

今回の先決裁定は、フランスの行政裁判における最高裁判所である上級行政裁判所が「EUの機能に関する条約(TFEU)」第267条に基づき、EU全域に関わるREACH規則の解釈を欧州司法裁判所に要請したものです。
 最終的な判決は先決裁定を求めた加盟国裁判所が行うことになりますが、先決裁定で示されたEU法の解釈は、先決裁定を求めた加盟国裁判所の判決を拘束するとともに、他加盟国すべての裁判所を拘束することになります。

今回の判決を受けて、ECHAのガイダンス等は改訂に向けて検討が行われることになると思われます。また、EU域内の輸入者は、複合成形品を構成する個々の成形品単位でSVHCを管理し、必要な義務の履行が求められることになります。

そのため、EU域外企業に対し、複合成形品単位ではなく、個々の成形品単位での情報提供を求めることになるものと想定されます。
 現時点で情報提供が困難な場合には、輸入者の要請に応じて適時の情報開示が行えるよう準備を進めることが必要であると考えます。

(井上 晋一)

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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の 見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。


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