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ここが知りたい REACH規則

コラム

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15.01.23

リスク管理に関する閑話休題

化学物質に関する規制はリスク評価、リスクベースあるいはライフサイクルシンキングなど、従来のSDSで知らされた有害性情報による管理とは異なる考え方での対応を求める傾向が強くなっています。この変化は、化学品(化学物質または混合物)を利用する成形品メーカーには総論は理解できるものの個別対応では戸惑いがあります。

日本の事例

例えば、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)では、「第二種特定化学物質」の定義を「その有する性状及びその製造、輸入、使用等の状況からみて相当広範な地域の環境において当該化学物質が相当程度残留しているか、又は近くその状況に至ることが確実であると見込まれることにより、人の健康に係る被害又は生活環境動植物の生息若しくは生育に係る被害を生ずるおそれがあると認められる化学物質で、政令で定めるもの」としています。

逐条解説では「人の健康に係る被害又は生活環境動植物の生息若しくは生育に係る被害を生ずるおそれ」について、「当該化学物質の「リスク」に応じた対応をする旨を明らかにしたものである。すなわち、当該化学物質の人の健康(又は生活環境動植物)に対する長期毒性に係る評価の結果を踏まえ、人の健康(又は生活環境動植物)に係る被害を生ずるおそれがあると予測される環境中の濃度と、その製造・輸入実績数量等から推計される環境残留の状況の比較に基づいて、被害が生ずるおそれがあると考えられる濃度を超えている又はこれに近付いていると認められる場合には、これに該当するものと判断することとなる」としています。これがリスクベースといわれるものです。

化審法の解説(化審法における化学物質のスクリーニング評価・リスク評価手法の検討について)では、「リスク=有害性×環境残留量」として、届出された製造・輸入数量が基礎データの1つとなります。環境残留量は環境排出量として定義されることもあります。「環境残留量」「環境排出量」という日本全体を考えたものになっています。

これとは若干異なる規制となるものですが、平成26年6月に労働安全衛生法が改正されました。その中で、印刷工場の胆管がん問題が背景となったリスクアセスメントに関する条項が追加されました。

第57条の3(第57条第1項の政令で定める物及び通知対象物について事業者が行うべき調査等)
事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、57条第1項の政令で定める物及び通知対象物による危険性又は有害性等を調査しなければならない。

「危険性又は有害性等を調査」について、危険性又は有害性等の調査に関する指針事例では、「負傷又は疾病の重篤度」と「発生可能性の度合」によりリスクアセスメントをしています。

労働安全衛生法によるリスクアセスメントは、簡易なリスクアセスメント手法として、「コントロール・バンディング」を示しています。
 「コントロール・バンディング」は作業場での扱い量とSDSによる健康有害性情報の入力により、リスクが計算され、リスクマネジメント事項が示されます。簡易な方法ですが、労働安全衛生法の義務を果たすだけでなく、ハザード情報と使い方、扱い量によるリスクのシミュレーションツールにもなります。

EUの事例

REACH規則では、リスク管理の責任は製造、輸入、上市するものの責任(前文第18文節)とし、実施要件は技術的附属書(technical annex)で定義する(前文第30文節)としています。
 10トン以上製造・輸入する場合には、REACH規則第14条により化学品安全性アセスメント(CSA)を行い化学品安全性報告書(CSR)の作成が要求されています。CSA、CSRに関連するガイドがECHAのサイトに開示されています。

実施方法は、「ハザード分類、用量(濃度)反応特性」(ハザードアセスメント)」と「使用条件による推定ばく露レベル」(ばく露アセスメント)から、リスクの特性化を行い、使用条件(ばく露シナリオ)を附属させたSDSを発行するような手順になっています。
 REACH規則によるSDSは、ばく露シナリオが附属されますので、REACH SDSあるいはe-SDS(extended safety data sheets)とも言われますが、SDS作成ガイドばく露シナリオガイドが用意されています。

リスク規制という面では、REACH規則の制限では「物質を製造、使用または上市するとき人や環境に容認できないリスクがあり、かつEU全域で対処が必要と判断されたときに、制限条件をつけたり、使用禁止する措置をとる」(第一法規 REACH規則対応Q&A88)としています。この制限条件等は附属書XVIIに記載されています。リスクを下げるための使用法の規制条件です。

特異な事例

化審法やREACH規則は食品には適用されません。アメリカでは食品関係はFDAがFederal Food, Drug, and Cosmetic Act(FD&C Act)で規制しています。
 調理器具は塗装やコーティングなどの表面処理されることがありますが、FD&C Actでは調理器具は食品接触器具となり、接触面に含有する化学物質規制や器具からの溶出制限がされます。

表面処理は食品添加物扱いになり、120日前に届出(food contact notification (FCN))になっています。詳細はFCNのガイドに示されています。
 なお、対象物質は特定されています1)

このように、表面処理剤メーカーにとっては、思いもかけないような規制もあり、使用方法をどこまで想定するのか悩ましいところです。

まとめ

化学物質に関わるリスクについて、いくつかの側面を紹介しました。REACH規則前文第86文節では「物質そのもの、混合物又は成形品に含まれる物質の製造・上市又は使用からの人の健康及び環境に対する高いレベルの保護を確保するために必要とされる適切なリスク管理措置を特定することは、製造者、輸入者及び川下使用者(工業的または職業的使用者)の責任であるべきである。しかし、それが不十分と考えられる場合や、欧州共同体の法規が正当化される場合には、適切な制限が定められるべきである」としています。
 リスク管理は法規制ではなく自主的対応を第一優先で行うことを求めています。

このような点も踏まえて、化学規制を整理しますと、リスクベースとはいえ、人への影響側面は「直接的影響」「環境経由間接的影響」があり、さらには政策的なリスクがあります。
 直接的な影響には、「作業者(職業的使用者)」「消費者」「一般公衆」に分けることができます。REACH規則や化審法は化学品が対象ですが、RoHS指令などは化学品利用規制です。
 このような視点で整理しますと、1つの法律は様々な規制がありますが、そのなかの1つを選択して分類すると表のようになります。

政策的 環境経由影響
生産量が基本
人への直接的影響
使われ方が基本
作業者
専門的利用
顧客・消費者 一般公衆
化学物質製品 化学物質兵器
バイオテロ法
化審法 労安法
Prop65
有害物質含有
家庭用品規制法
毒劇法
薬事法
化学物質応用製品 キャッチオール規制 WEEE指令
RoHS指令
労安法 玩具指令 バイオサイド規則

REACH規則では、前記のようにリスク管理の責任は製造、輸入、上市するものの責任です。この表からは、リスク管理は従来に増して複雑になり、川中、川上企業にとっては川下企業がどのような使い方をするのかを把握するマーケティング活動が望まれます。
 難しいことながら、リスク評価(アセスメント)は多面な視点で、自社で自社製品に関する用途を調べて、自ら評価することが望まれています。

(松浦 徹也)

1)http://www.ecfr.gov/cgi-bin/text-idx?SID=aba634985de0f18924bcb893e562692a&node=pt21.3.175&rgn=div5#sp21.3.175.c

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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の 見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。


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