EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2014.09.12
本年9月1日にECHAから、candidate listに収載するSVHCおよび認可対象物質(附属書XIV収載)に勧告する物質について提案が発表され、それぞれ意見募集が行われています1)。
今回はこれらの物質について紹介します。
表1に掲げる10物質について提案され、意見募集が10月16日まで行われています。
# | 物質名 | EC番号 | 提案国 | 提案理由 | 主な用途 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール(UV-328) | 247-384-8 | Germany | PBT; vPvB |
紫外線吸収剤 |
2 | 2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ブチルフェノール(UV-320) | 223-346-6 | Germany | PBT; vPvB |
紫外線吸収剤 |
3 | DOTE* | 239-622-4 | Austria | 生殖毒性 | PVCの熱安定剤 |
4 | フタル酸ベンジルブチル(BBP) | 201-622-7 | Denmark | ヒトの健康と環境へ深刻な影響の懸念がある | 可塑剤 |
5 | フタル酸ビス2-エチルヘキシル(DEHP) | 204-211-0 | Denmark | ヒトの健康と環境へ深刻な影響の懸念がある | 可塑剤 |
6 | フッ化カドミウム | 232-222-0 | Sweden | 発がん性; 変異原性; 生殖毒性; ヒトの健康に悪影響の懸念がある |
ガラス、ソ-ラーセル、合金等 |
7 | 硫酸カドミウム | 233-331-6 | Sweden | 発がん性; 変異原性; 生殖毒性; ヒトの健康に悪影響の懸念がある |
無機カドミウム化合物の原料、金属表面処理材 |
8 | フタル酸ジブチル(DBP) | 201-557-4 | Denmark | ヒトの健康と環境へ深刻な影響の懸念がある | 可塑剤 |
9 | フタル酸イソブチル(DIBP) | 201-553-2 | Denmark | ヒトの健康と環境へ深刻な影響の懸念がある | 可塑剤 |
10 | DOTEとMOTEからなる反応物* | - | Austria | 生殖毒性 | PVCの熱安定剤 |
*DOTE:2-ethylhexyl
10-ethyl-4,4-dioctyl-7-oxo-8-oxa-3,5-dithia-4-stannatetradecanoate
*MOTE:2-ethylhexyl 10-ethyl-4-[[2-[(2-ethylhexyl)oxy]-2-oxoethyl]thio]-
4-octyl-7-oxo-8-oxa-3,5-dithia-4-stannatetradecanoate
#1、#2の紫外線吸収剤については2013年3月から同年4月に意見募集が行われていましたが、2013年6月20日に収載が見送られた紫外線吸収剤4物質の中の2物質が改めて提案されたものです2)。
すでにカドミウム化合物については、いくつかの化合物がcandidate listに収載されていますが、#6、#7は一連のカドミウム化合物をカバーするものです。
#3、#10はオクチル錫化合物ですが、#3のDOTEはジオクチル錫化合物、#10のMOTEはモノオクチル錫化合物で、それぞれ以下の構造です。
#10は、DOTEとMOTEからなる反応生成物で2成分物質です。工業的には、この2成分の物質の含有率が異なる製品が生産されています。#3は、DOTEの単一成分物質が提案されています。
DOTE
MOTE
以上の6物質が新たな提案物質です。
その他の#4、#5、#8、#9の4種のフタル酸エステルは、すでに附属書XIVに収載され、認可対象となっています。2013年8月21日が認可申請期限ですでに終了しています、認可を取得していなければ、製造、販売、使用ができない日没日は2015年2月21日となっています。
今回の提案は、REACH規則第57条(f)の「人又は環境に対する深刻な影響をもたらすおそれがある物質」に該当するとして、新たに提案されています。この4物質は、提案の理由でcandidate listに収載されましても、これらの物質が成形品に含有する成形品に含有している場合、すでに届出や情報提供の義務はありますから、企業の対応義務は実質的には変わることはないことになります。ECHAが今回の提案をこのまま認める場合は、どのようにするのか、気になるところです。
上記1項と同じく、2014年9月1日に、表2に示します附属書XIVに収載する22物質の第6次の勧告案が発表され、11月30日まで意見募集が行われています。
# | 物質名 | EC No. |
---|---|---|
1 | 1,2-ベンゼンジカルボン酸、炭素数7の分岐炭化水素を主成分とする炭素数6~8のフタル酸エステル類 | 276-158-1 |
2 | 四ホウ酸二ナトリウム無水物 | 215-540-4 |
3 | 塩基性酢酸鉛 | 257-175-3 |
4 | 1-ブロモプロパン | 203-445-0 |
5 | 4-ノニルフェノールエトキシレート〔ノニル基は、炭素数9の直鎖および分岐のアルキルの全ての異性体の単独物、および、混合物(UVCB)、エトキシレートの付加数は、単一のものからUVCB,ポリマー等全てのものを含む〕 | - |
6 | フタル酸 ビス(2-メトキシエチル) | 204-212-6 |
7 | 酸化鉛 | 215-267-0 |
8 | 1,2-ベンゼンジカルボン酸、炭素数7~11の分岐および直鎖アルキルエステル類 | 271-084-6 |
9 | フタル酸ジペンチル(DPP) | 205-017-9 |
10 | 四塩基性硫酸鉛 | 235-067-7 |
11 | 四ホウ酸二ナトリウム水和物 | 235-541-3 |
12 | アントラセンオイル | 292-602-7 |
13 | 四酸化鉛(オレンジ鉛) | 215-235-6 |
14 | パイロクロア、アンチモン鉛イエロー(ピグメントイエロー41) | 232-382-1 |
15 | 三酸化二ホウ素、酸化ホウ素 | 215-125-8 |
16 | フタル酸n-ペンチル‐イソペンチル | - |
17 | ホウ酸 | 233-139-2, 234-343-4 |
18 | フタル酸ジイソペンチル | 210-088-4 |
19 | ケイ酸鉛 | 234-363-3 |
20 | 三塩基性硫酸鉛 | 235-380-9 |
21 | フタル酸ジ-ペンチル、分岐および直鎖 | 284-032-2 |
22 | コールタールピッチ、高温留分 | 266-028-2 |
附属書XIVに収載されている物質は、2014年8月19日に公布された第4次の物質を含めて31物質です3)。第5次の勧告案は5物質ありますので、今回の第6次の22物質を合わせますと58物質となります。
ただ、第4次の物質は、意見募集が行われてから約2年後に収載決定の官報が出されました。今回の提案も正式に決定するのは2年後なるのではと思います。
1)http://echa.europa.eu/;jsessionid=6CB9B7B2FD4F4B64C671837D520B26D8.live1
2)http://j-net21.smrj.go.jp/well/reach/column/130502.html
http://j-net21.smrj.go.jp/well/reach/column/130705.html
3)http://echa.europa.eu/web/guest/addressing-chemicals-of-concern/authorisation/recommendation-for-inclusion-in-the-authorisation-list/authorisation-list
(林 譲)
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