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ここが知りたい REACH規則

コラム

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14.07.04

新たな情報伝達のコアとなるIEC62474について

1.新たな情報伝達スキーム

経済産業省から2014年3月19日に「化学物質規制と我が国企業のアジア展開に関する研究会」の取りまとめとして「製品含有化学物質の情報伝達スキームの在り方について」の概要とその詳細資料が公開されました。
 「取りまとめ」では、現状認識として「サプライチェーンの分業で製造される製品の規制遵守は、企業間で伝達される情報に大きく依存する」とし、「サプライチェーンを通じた情報伝達の取組は進展しているが、未だ円滑に伝達されているとは言い難い状況にある」とまとめています。

この原因の典型的な例として、川下企業では「製品含有化学物質情報について、個社独自の書式でサプライヤに回答を要求している場合があり、サプライチェーンの負荷を増大させている」ことが示され、川中の中小企業では「複数のデータフォーマットが用いられているため、その対応負荷が問題となっていることが指摘されている」と示されています。 このような現状を踏まえて製品含有化学物質情報の新たな伝達スキームが検討されています。新たな情報伝達スキームの基本要件として、「単なる日本標準ではなく、国際標準(デジュール・スタンダード)を目指し得るものとすること。すなわち、電気電子分野において既に制定されている国際規格IEC62474(電気・電子業界及びその製品に関するマテリアルデクラレーション)と齟齬のない仕組みとした上で、対象範囲を拡げる形でISOIEC化などを目指し得るスキームとすること」を挙げています。
 「IEC62474と齟齬のない仕組み」は、2018年4月からの全面稼働に向けて取組みを開始したところで、具体化はこれからとなります。
 「取りまとめ」はわかりにくい部分がありますが、新たな伝達スキームの概要が「METI journal 6・7月号」に特集として、全体像の説明がされていますので参考になります。

2.IEC62474の概要

新たな情報伝達スキームのコアとなるIEC62474は、「材料宣言」と「データベース」の2つのPartから構成されています。
(1)材料宣言の要件
材料宣言の手順は標準化されており、製品構成部品の材料であり、データベースに収載されている物質(物質群)が、データベースで示されている用途に該当し、閾値以上の場合は報告する義務があります。報告のためのXMLスキーマーも用意されています。
(2)データベース
 データベースの情報要件は規格で定義されますが、構成物質はタイムリーにアップデートされますので、規格には収載されていません。データベースはIECが管理し公開しています。
 データベースには「報告物質(Declarable substances)」と「参考物質(Reference substances)」があります。

I.報告物質
 報告物質では、用途と閾値および報告義務(必須またはオプション)が示され、次の事例のような詳細が示されます。

<DIHPの例>

  • ID: 00042
  • Substance group:
  • Specific substance: 1、2-Benzenedicarboxylic acid、 di-C6-8-branched alkyl esters、 C7-rich (DIHP)
  • CAS number: 71888-89-6
  • Common synonyms:
  • Typical EEE applications / uses: Plasticizer、 dye、 pigment、 paint、 ink、 adhesive、 lubricant
  • Basis for including: Criteria 1: Currently Regulated
  • Description of basis (specific regulatory citation or specific market demand): Candidate list for European REACH Regulation No. 1907/2006/EC
  • Reportable application(s): All
  • Reporting threshold level in product (unless otherwise specified): 0.1 mass%
  • Reporting requirement: Mandatory
  • First added: 2011-10-14
  • Last revised: 2011-10-14
  • Comments / footnotes:

DIHPはREACH規則のCandidate List収載物質であるので、すべての用途において0.1重量%以上含有する場合は報告が必須となっています。典型的な使用例としては、可塑剤、染料、顔料、塗料、インク、接着剤、潤滑剤が示されていますので、調査する場合の手助けとなります。
 また、報告物質の酸化ベリリウム(Beryllium Oxide)を確認しますと、「Reporting requirement: Optional」となっています。オプションの場合は、閾値(この場合は0.1重量%)以上であれば報告が望ましい(should be declared)とされています。
 オプションの報告要件は、現行法規で規定されていないが、産業界全体での共通の要求がある場合に選定されます。 なお、オプション要件の物質(物質群)は閾値以下であっても、また、報告すべき用途以外での適用も報告することはできます。参考物質としての収載物質やデータベースに登録されていない物質でも報告することはできます。
 報告物質(群)の名称はデータベースの名称にすることが要求されています。例えば、報告物質の酸化ベリリウム(CAS番号1304-56-9)は、Glucina、Berylla、Beryllia、Thermalox、bromellete;BroMelliteやBeryllium monoxideなどの多くの名称がありますが、データベースの名称はBeryllium Oxideになっています。

II.参考物質
 参考物質は1つの物質群(Substance group)に含まれる物質リストです。コメント脚注に示されていない限り、参考情報であり、そのリストがすべてを網羅する意図はないとしています。
 Perfluorooctanoic acid(PFOA)and individual salts and esters of PFOA〔ペルフルオロオクタン酸(PFOA)と個々の塩及びPFOAのエステル〕を選択しますと、CAS番号として335-67-1(ペンタデカフルオロ-1-オクタン酸)や3825-26-1(ペンタデカフルオロオクタン酸アンモニウム)など8物質が表示されます。CAS番号335-67-1の詳細は次となっています。

  • ID: R00373
  • Substance group: Perfluorooctanoic acid (PFOA) and individual salts and esters of PFOA
  • Specific substance: Pentadecafluorooctanoic acid
  • CAS number: 335-67-1
  • Common synonyms: Perfluorooctanoic acid
  • Basis for including: Reference
  • First added: 2014-04-09
  • Last revised: 2014-04-09
  • Comments / footnotes: This substance is also listed as a SVHC for declarable substance. This substance group reference list is complete and based on Norwegian legislation.

PFOAはSVHCで報告物質であるとされています。

3.論点

IEC62474のデータベースは公開されており、国際規格ですので、海外からの部品や材料を調達している場合などは海外サプライヤの理解を得やすいという利点があります。
 新たな情報伝達スキームとして川上から川中そして川下に情報が伝達する仕組みが具体化されつつあり、そのコアがIEC62321とされています。
 規格では報告すべき用途に該当する場合は、材料または製品構成部品レベルで報告することになっています。例えば、鉛(Lead/Lead Compounds)の場合は5つの用途が特定されています。
(1)すべて(バッテリー、ケーブル、キッズ用品/玩具を除く)
 均質物質あたりでトータルPbが0.1重量%以下
(2)消費者向けまたは12才以下の子供向け製品
 0.01重量%以下、根拠はアメリカの消費者製品安全改善法です
(3)玩具や子供が使用することを目的と他の製品のペイントと同様の表面コーティング
 表面被覆材料で0.009重量%以下、根拠はアメリカの消費者製品安全改善法です
(4)ケーブル/電源コードの熱硬化性または熱可塑性のコーティング
 表面被覆材料で0.03重量%以下、根拠はプロポジション65です
(5)電池
 0.004重量%以下(電池)、根拠はEU電池指令などです

IEC62474は国際規格であり、報告物質は法規制値に由来しますので、さまざまな国の規制値により閾値が異なっています。
 「取りまとめ」では、「たとえ国内の取引先のみと取引を行う中小企業であっても、サプライチェーンを通じて関係する国の法規制には対応する必要がある」としていますが、川中企業にとっては難しいところです。川中の企業は、川下企業の用途は明確でなく、川下企業(顧客)からの情報が重要になってきます。
 「取りまとめ」では、「一定の範囲の化学物質について、情報提供者がオーソライズした含有情報を伝達する“責任ある情報提供”」を求めています。「一定の範囲の化学物質」は、コアはIEC62474のデータベース収載物質で、それ以外に川上からの「関連する法規制等を踏まえて定められる閾値以上に含有している限り、情報提供者が含有情報をオーソライズして提供する」義務物質が含まれることになります。
 見方によれば、川中の企業にとって「責任ある情報提供」のためには、仕組みが若干曖昧な気もします。下請代金支払遅延等防止法では次のような義務があります。

第3条(書面の交付等)
 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。

注文書例では、「品名及び規格・仕様書等」欄に次が例示されています。

  • 注文品や作業等の内容が十分に理解できるように記入する
  • 仕様書、図面、検査基準等を別に交付している場合はそのことを付記する

川中企業は、川下企業(顧客)情報が頼りともいえます。

4.まとめ

新たな情報伝達スキームは運用が重要になります。「取りまとめ」の現状認識にある「サプライチェーンの川中の事業者は、これら多大な数のスキームに対応しなければならず、過大な負担を負っているケースもある」ことへの対策が新たな情報伝達スキームです。既述の「3.論点」に示したようなさまざまな課題があると思います。
 これら課題を川上企業、川中企業、川下企業のそれぞれの企業間での対峙課題にすることは避けなくてはいけません。新たな情報伝達スキームは、サプライチェーン全体での効率化が狙いです。
 別の考え方があります。自社の製品を購入した消費者や企業の作業者などの顧客に製品に起因した健康被害を与えてはならない、というのは企業責任です。
 REACH規則の前文にも、「物質そのもの、混合物又は成形品に含まれる物質の製造・上市又は使用からの人の健康及び環境に対する高いレベルの保護を確保するために必要とされる適切なリスク管理措置を特定することは、製造者、輸入者及び川下使用者(工業的または職業的使用者)の責任であるべきである。しかし、それが不十分と考えられる場合や、欧州共同体の法規が正当化される場合には、適切な制限が定められるべきである」があります。
 「安全・安心」な製品を供給する責任は、ことに化学物質については法規制対応だけで済ませることはできないと思います。
 新たな情報伝達スキームは経営ツールの1つです。ツールは使い方により負担になりますが、効率的な経営に寄与することもできます。自社製品に含有する化学物質は何か、顧客に影響はないかを企業責任で考え、新たな情報伝達スキームを経営ツールとして利用して顧客に伝達することが求められていると思います。

(松浦 徹也)

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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の 見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。


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