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HOME > 経営をよくする > ここが知りたいREACH規則

ここが知りたい REACH規則

コラム

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14.01.10

自律的マネジメントの奨め

1.REACH規則やRoHS指令を巡るさまざまな動き

12月16日にREACH規則のCandidate Listに7物質が追加されて151物質になりました。RoHS(II)指令の使用制限物質の見直しも進んでいます。
 中間報告では、新規追加物質として、Priority I物質としてフタル酸エステル類4物質の追加を含むハロゲン系難燃剤4物質とその他ハロゲン系難燃剤3物質の11物質、さらにはPriority II、 Priority IIIやPriority IV物質もリストされています。
 REACH規則でも制限(附属書XVII No23)として、塗料中のカドミウムを100ppm以下(亜鉛含有量が10%以上の場合は1,000ppm)に制限するなどの提案もあります。
 2013年の規制動向を振り返ってみますと、1月からRoHS指令によるCEマーキング義務、7月の玩具指令の改正施行と分析方法のEN71-3の発行、9月のバイオサイド規則の発効や12月に電池指令の改定と大きな動きがありました。
 また、今後の規制として、REACH規則の認可申請インターネットコンサルテーションも行われておりその動向が気になるところです。
 化学物質関連規制はEU以外でも強化されています。カリフォルニア州ではプロポジション65の有害物質リストに、トリクロロエチレン(Trichloroethylene、CAS番号79-01-6)を生殖毒性物質として追加する提案を出しています。
 日本の化審法でも優先評価物質として22物質が追加(今年度中に40物質)され、2物質が削除されました。
 台湾でも有害化学物質管理法が改正されています。
 このような激しい規制動向を受けて、企業の対応も同期した対応に追われています。多くの日本企業はグリーン調達基準により追加物質の調査が行われ、JAMPも管理対象物質リストの臨時改訂予告を出して対応と支援をしています。
 さらに、経済産業省が検討をしている情報伝達スキームのコアとしているIEC62474:2012(電気・電子業界及びその製品に関するマテリアルデクラレーション)も、カドミウム(Cadmium、CAS番号7440-43-9)やパーフルオロオクタン酸(Perfluorooctanoic acid:PFOA、CAS番号335-67-1)などのREACH規則の認可対象候補物質(SVHC)の第9次追加物質を追加した物質リスト(D5.00版)を公表しています。

2.川中企業の悩み

前項の規制動向の事例は多くの変更の一部に過ぎません。まさに、日々のごとく規制内容は変わっていることなります。
 海外法規制の順守はEUに輸出している川下企業(多くは大手企業)の義務ですが、RoHS指令第16条2項(EU官報にて通達された整合規格に則り、第4条規定の順守を確認するための試験もしくは対応がされた、もしくは評価がされた原料については、本指令に適合しているものとみなすこととする)にあるように、順法確認はサプライヤーに依存せざるを得ません。

川下の大手企業の方々との面談や川中の中小企業の相談を受ける機会が多いのですが、典型的な課題があるように思えます。
 サプライチェーンの構造は、多段(孫、ひ孫関係)であり、川中企業には複数の川下企業から順法対応要求が来ています。順法対応は激しい規制内容の変化への追従のタイミングが各社各様であり、各社の価値観、方針の微妙な違いにより、川中企業には様々な異なった情報が届いています。また、川中企業には、川下企業の様々な要求仕様が個別様式でされています。
 このため、川中企業は、複数の顧客の要求に合致するように、一番厳しい要求を合わせた統合仕様で対応をしています。結果として、個々の川下企業が要求しているより厳しい仕組みで管理して、上流には自社様式の自社基準で要求仕様を出している事例が多くあります。また、川中企業がさらに川上に近い川中のサプライヤーに情報伝達するときに、受け手の規模の小さい企業に合った解説を加えることなく、一律の要求をしがちです。
 川中の中小サプライヤーは海外法規制に関する情報が少なく、言われたことを言われるままに対応する傾向があります。川中の中小サプライヤーによる最川上の企業(多くは大手企業)への要望が的確にできていなく、最川上の企業からの情報入手に苦慮している例が多くあります。
 川下の大手企業のサプライヤーへの要求にも課題があります。大手川下企業は組織間での内部情報伝達で、法規制要求の内容にズレが生じて、前提条件の欠落や余分な条件の追加がされがちです。
 川下の大手企業の第1次サプライヤー(tier-one)は、顧客との取引量が多いことにより、顧客ごとに専門部署が編成されていることが多く、矛盾を感じながらも大きな問題なしに対応をしています。
 一方、川中企業は規模が小さい企業が多く、顧客毎の専門部署を持っていなく、1つひとつは些細な矛盾が積み重なって、大きな矛盾を抱えています。

3.情報提供対象物質

日本企業は順法意識が高く、生真面目な対応をします。生真面目さゆえのサプライチェーンの混乱・困惑が生じているともいえます。一方で、「海外企業は順法対応をどうしているのか」、「順法対応をしているのは日本企業だけではないのか」などの問合せをいただくこともあります。企業の経営姿勢はさまざまですから、一概にはまとめることはできないのですが、欧米企業と日本企業の法規制に対する意識に違いがあるようです。
 少し古い資料ですが、「価値観データブック:電通総研余暇開発センター編、同友館発行 、P272」を見ますと、法律制度への信頼度は日本では「信頼する74.1%」ですが、ドイツでは「信頼しない55.2%」が「信頼する43.0%」より多くなっています。アメリカはそれ以上に「信頼しない61.6%」で「信頼する35.7%」と大きく差がでています。
 法規制はその国の価値観をベースとしています。価値観はその国の歴史、文化や宗教によって醸成されます。RoHS指令でカドミウムが他の物質より厳しく100ppmに制限されている理由も本質を追求していくと理解ができます。RoHS指令のCEマーキングはいわゆる自己適合宣言ですが、自己適合宣言の意味合いもEUの価値観を理解しないと対応を誤ります。
 欧米と日本の価値観、行動基準の違いを分析した名著に「菊と刀:The Chrysanthemum and the Sword: Patterns of Japanese Culture)Chrysanthemum and the Sword: Patterns of Japanese Culture)」があります。「菊と刀」は教科書にも載っていますが、米国の文化人類学者ルース・ベネディクトが日本文化を解説した著作で、日本は「恥じの文化」欧米は「罪の文化」としています。
 「恥じの文化」は絶対基準がなく、「罪の文化」には絶対基準があると思えます。日本人の行動は「人の目」が基準で、企業活動では複数の「人の目」である「法的基準」を求めることになります。法規制の本質は何かを考えるとき、この価値観の違いが欧米との取組みの違いになっていることがわかってきます。
 海外諸国の法規制を理解するには、その国、地域の価値観を理解することが前提であって、明示された規制文言だけでは解釈を誤ることになります。
 例えば情報伝達義務ですが、要求の源流にレイチェル・カーソンの著書「沈黙の春」に記述されている「正確な判断を下すには、事実を十分知らなければならない:青樹簗一訳、 新潮文庫、P24」が始まりとされています。レイチェル・カーソンは、農薬などの化学物質の全廃を求めているのではなく、化学物質のよい情報、悪い情報を開示して市民が判断できることを求めています。
 この潮流の具体例として、WEEE指令(DIRECTIVE 2012/19/EU)第14条で「電気電子機器に危険物質が存在することによる環境と人の健康に対する潜在的な影響」の情報提供があります。「危険物質」の定義は、前文第4文節で定義は廃棄物指令(DIRECTIVE 2008/98/EC)を参照しているとしています。

廃棄物指令の定義は、附属書IIIに「爆発、酸化性、有毒性や発がん性物質」などが危険物質(HAZARDOUS)としていて、人への健康影響以外に幅広くなっています。REACH規則の高懸念物質(SVHC)は第57条で範囲が示されていますが、人と環境への影響を対象としています。従って、第59条によるCandidate List収載物質(いわゆるSVHC)、第33条による情報伝達や附属書XVIIの制限物質などは、WEEE指令第14条の物質より範囲が狭いことになります。
 WEEE指令は2003年1月27日付けの指令で、10年前から幅広い含有物質情報の開示要求がありました。当時のJIGによる24物質の情報開示ではなかった点は思い起こす必要があります。

4.自律的マネジメントの推奨

理屈としては、WEEE指令による情報提供が義務化されているのですから、SVHCの半年ごとの追加は問題ないということになります。サプライチェーンが複雑で、EU情報が末端まで行き届かないということもありますが、化学物質の性状を関係する企業・人が正確に理解することは別の面で難しいことです。
 10万とも言われる化学物質が存在し、化学物質なしでは、企業活動は継続できません。多くの企業にとって理解が乏しい化学物質について、何をすべきかの情報を求めています。この情報が法規制情報で、化学物質は「使用廃止」ではなく「許容された使い方」で利用するものです。
 レイチェル・カーソンがいう「正確な判断を下す」では、法規規制で示される化学物質とその「許容された使い方」(逆には「禁止された使用方法」)はその一部にすぎません。法規制による情報開示・提供は本質的な要求の1つの手段と考えることができます。
 「消費者の知る権利」は企業にとっては「知らせる義務」になります。ただ、知らせる義務=法規制の順守ではなくもっと幅広になります。この企業の義務を「当社の製品を購入して頂いたお客さまが、含有する化学物質で被害を与えてはならない」と考えると対応が具体的になります。
 「自社製品のなかに何が入っているのか」「その物質はお客さまに害を与えないのか」などは、顧客満足あるいはCSR(corporate social responsibility)活動の1つとすることになります。
 欧米の罪の文化の絶対基準は宗教観の違いもあるとは思いますが、欧米の法規制に対応するには、欧米の考え方や価値観を理解する必要があります。絶対基準を「お客様の安全安心=お客様満足」とすると日本企業は柔軟な対応ができるようになります。
 法的要求事項対応から顧客満足を目指す自律的マネジメントが、仕組み作りが大変ですが、法規制の変化に振り回されることがなくなり、長い目で見ると効率的な経営となります。

(松浦 徹也)

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中小機構「中小企業国際化支援アドバイス

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の 見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。


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