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ここが知りたい REACH規則

コラム

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11.10.21

REACHにまつわる最近のニュースから(16)

REACH規則における一般市民の「知る権利」の現状について

REACH規則の前文117項には以下の記述があります。
 「EU 市民は、化学物質の使用について提供された情報に基づいた意思決定を行えるようにするするために、EU 市民が暴露の恐れのある化学物質についての情報へのアクセスが確保されるべきである。これを達成する透明性のある方法は、有害な特性の簡単な紹介、表示の要求、および認可された使用やリスク管理措置を含む関連する欧州共同体法規を包含するECHAのデータベースに保管された基礎データへの自由で簡単なアクセス権を市民に与えることである」(筆者部分意訳)

この理念よりREACH規則においては、一般市民には暴露されるかもしれない化学物質についての「知る権利」が保証されていることになります。

この理念に基づいてREACH規則では、一般市民に登録された物質の情報と商品中に含有されるSVHCの情報にアクセスできるようにしています。

物質についてはすでにECHAのホームページに登録された4418物質の情報が公開されています。今後、これらの公開情報には含まれていない登録者名や登録番号等の情報が公開される予定になっています(2011年5月20日付けコラムを参照下さい)。
 他方、一般消費者が直接購入する商品については、その商品にSVHCが0.1%以上含有される場合には、一般消費者から請求があれば、少なくともその名称と商品を安全に使用できる情報を45日以内に無償で提供する義務を供給者に課しています(REACH規則33条2項)。この義務は、SVHCの使用について透明性のある情報公開が商品製造者に求められ、より安全な代替物質に変更するよう圧力が掛けられていることになっています。ただ、この義務は消費者の要求があってはじめてその順守状況が把握できることになります。

このようなことから、EUの環境団体が、消費者の知る権利に対して企業がどのように対応するかを調査し、その結果を公表しています。本コラムではその報告の概要を紹介します。

まず1つには、EEB(EUROPEAN ENVIRONMENTAL BUREAU:環境に関する市民団体の連盟)が2010年10月に発表した調査報告があります。この調査は、2010年1月から8月の間に4つのNGO(非政府組織)と協力して行われ、candidate listに収載されていたSVHCは38物質です。
 調査は2つの面から行われています。その1つ観点は、5カ国(ベルギー、ハンガリー、スウェーデン、ドイツ、オランダ)にある小売業者とブランドを選び、市民の知る権利の要求を送付し、その回答がREACH規則の要求事項を順守して、(1)期限内であったか、(2)安全な使用のために十分な情報であったかを分析しています。
 もう1つの観点は、これら小売業者から93種類の日用品を購入し、SVHCの分析を行い、それらの回答が正しかったかの検証を行っています。
 知る権利に関しては、60軒の小売店に158件の要求を出していますが、回答率は大変低く不満となっています。国によりばらつきはありますが、全体では50%が無回答、28%が不十分な回答、そして22%の回答がREACH規則の要求を満たしていたとのことです。
 無回答の小売店の中には、REACH規則33条2項の義務を誤解していたり、回答を拒否しています。また、不十分な回答の中には、SVHCの含有の有無を明確にせず、例えば「弊社の商品はREACH規則の要求条件を順守していることを宣言します」というものがあったり、海外メーカーの電話番号だけを知らせてきたとしています。
 あるいは商品中にSVHCを0.1%以上含有するにもかかわらず、含有していないと回答しているところもあります。中にはSVHCの含有を宣言していますが、分析の結果、宣言したSVHC以外のSVHCも含有しているケースもあります。
 REACH規則に要求されている情報を提供した22%の回答の中には、「安全に使用するための情報」が不十分で、「安全に使用するために十分な情報」を提供したのは1小売店だけだったということです。
 この調査では、供給者の義務ではありませんが、「直ちにSVHCに収載すべき物質」として提案されている「SIN List」への対応についても質問しています。小売店の3社がSIN Listを活用し、4社が内部的な基準を設け、積極的に安全な化学物質の使用活動をしていると回答しています。

2件目の報告は、2011年10月にヨーロッパ消費者協会(beuc:Bureau europeen des unions de consommateurs)が同様の調査をしてその結果を公表しています1)。この調査では、ドイツ、フランス、ポーランド、英国、スペイン、オーストリア、スウェーデン、デンマーク、およびギリシャの複数の国に出店している小売業者に知る権利の要求を出しています。今回の調査では、消費者がオンラインで同じカテゴリーの異なるメーカーの3種類の商品について情報提供を要求しています。この調査ではSVHCの分析は行わず、回答の信頼性の検証は行っていません。企業が消費者の知る権利に対してどのように対応するかをチェックすることを目的としています。回答内容からは、企業の知る権利に対する認識はあまり高くないようです。例えば、要求した言語とは別の言語で回答され、一般市民にとっては内容が理解できないようなケースがあります。45日の期限については、スウェーデン、ドイツ、デンマーク、フランスはおおむね期限内ですが、スペイン、ギリシャ、ポーランドでは多くの回答が期限内に出されていません。
 また、複数の国に出店している小売業者であっても、ある国の小売店では満足できる回答をしていますが、別の国では不満の残る回答をしています。さらに、SVHCは順次追加されているにもかかわらず、最新のリストを言及していない回答もあります。今回の報告でも前記の報告と同じような、例えば、CEマークを貼付されているからEUの法律を順守しているというような、REACH規則の要求事項を満足しない回答があったと報告されています。

これらの報告から、EU域内ではまだまだ消費者の知る権利を保証したREACH規則の要求事項を認識していない小売店が多くあり、その対応方法を知らない、あるいは知らされていないように思います。

消費者に販売される商品中のSVHCについて十分な管理をしていても、輸出先の販売店までには十分な情報が提供されないケースも生じそうです。サプライチェーンへの情報伝達体制にも十分注意しなければならないようです。

なお、報告書には小売業者名、その対応状況も詳細に開示されていますが、本コラムではそれらの収載については割愛いたしました。

1)http://www.beuc.org/Content/Default.asp?PageID=2142
 http://docshare.beuc.org/Common/GetFile.asp?ID=41851&mfd=off&LogonName=Guesten

(林 譲)

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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の 見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。


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