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ここが知りたい REACH規則

コラム

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09.10.02

コンプライアンスとデュ デリジェンス

大手企業A社が本年9月16日にクッキングオイル製品の販売自粛・出荷停止を発表しました。
発表によりますと、製造工程の脱臭の過程で副生したグリシドール脂肪酸エステルが、原材料の天然油脂の濃度以上に製品に含有されているとして自主的に販売を中止しました。グリシドール脂肪酸エステルの安全性についてはEU等で論議され、一部消費者グループ等からも問題提起されていたことが背景にあると思われます。

グリシドール脂肪酸エステルは、現時点では発がん性を含めた安全性への懸念を科学的に示す明確な報告がないので法律違反ではありません。ただ、ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)の研究によれば、ヒトの強酸の胃液による消化過程で定量化できないものの、グリシドール脂肪酸エステルがグリシドールに遊離する可能性を示していました。

インターネットで検索すると、消費者の視線でA社の発表に対して「信頼を裏切った」「前から指摘されていた」などの批判的な意見や「有害性がわからない段階で自主規制をかけた」ことを評価する意見などが出ています。

消費者の意見だけでなく、技術データによる評価も出ています。A社が食品安全委員会へ報告したグリシドール脂肪酸エステル濃度は約370ppmです。食品安全委員会の専門委員によるBfR(ドイツ連邦リスク評価研究所)のワーストシナリオによるグリシドールとして代謝する試算によれば、MoE(Margin of Exposure暴露マージン)は250です。食品などの安全性評価ではMoEは10,000程度ですので、A社製品のMoEが小さいとして、「油を主たる油脂として日々摂取する国民においては、健康上の危惧が存在しないとはいえない」との結論を示しています注1)
 グリシドール脂肪酸エステルは400ppm程度、試算によるグリシドールは80ppm、それも製品含有濃度ではなく、代謝物の濃度が論議されています。REACH規則やRoHS指令などでは、特定有害物質は0.1%(1,000ppm)が基準となっています。
 ことに消費者向け製品では、このようなレベルまで管理対象が要求されることに考えを新たにさせられました。

この視点でみると、REACH規則のSVHCやナノ物質対応が気になります。

CA会議などの討議でも「化学物質のサイズは新規か既存かの決定に関係ない」とされました注2)。このことは、「カーボンナノチューブやフラーレンは、既存のカーボン物質と分子構造が異なるので新規化学物質となり得る」が、「酸化亜鉛、二酸化チタン、銀などのナノ粒子は、既存のバルク物質と分子的同一性が同じなので既存化学物質である」ということになります。
 アメリカのTSCAでも同じように運用されていて、TSCAインベントリに登録されていないとして、フラーレンやカーボンナノチューブは製造前届け出がされています。
 しかし、新規物質にならない銀、酸化チタンや酸化亜鉛などは、衣類の防臭や化粧品に多用されています。
 化粧品では、日焼け止めクリーム中のナノ形状の酸化亜鉛が皮膚の細胞と細胞の間の隙間を通って浸透するリスクが問題提起されています。皮膚の浸透性が高いことが化粧品としての価値を高めていますが、バリアである皮膚を通過して体内に浸透することはないのか、これまでの毒性試験ではナノ粒子の影響は検出できないのではとの指摘もあります。
 日本化粧品工業連合会では化粧品へのナノ物質の使用は法律違反ではないとしつつも、情報開示を基本方針としています注3)
 本年5月8日のコラムでご紹介しましたが、英国のThe Royal Society and Royal Academy of Engineeringの勧告に以下があります注4)

R10:ナノ粒子またはナノチューブ形状の化学物質はREACH規則では、新規物質として扱われるよう勧告する。
R12:消費者製品のナノ粒子形状の成分は、製品中での使用が認可される前に、関連する科学諮問機関による完全な安全評価を受けるよう勧告する。

これらのように、消費者の視点では法規制以上の取組みが要求されることは多くあります。この延長線上で考えますと、2009年9月1日の第2回Candidate List収載候補への対応、ノルウェーのPoHS法や消費者団体からのSVHC要望対応など、告示された法律基準を守る(コンプライアンス)だけでは不足すると考えられます。
 欧米の基本的な企業対応は自己宣言的な自主対応でReasonable Precautions and Due Diligence(合理的な注意と適切な注意)です。
 EU の化学物資規制対応は、経営リスクマネジメントであり、A社製品のクッキングオイルを他山の石とした自主的な取組みが流れとなっているようです。

(松浦 徹也)

注1
http://www.fsc.go.jp/senmon/tenkabutu/t-dai75/tenkabutu75-siryou5.pdf#search='BMDL'

注2
http://ec.europa.eu/enterprise/newsroom/cf/document.cfm?action=display&doc
_id=2368&userservice_id=1&request.id=0

注3
http://www.jcia.org/nano/index.htm

注4
http://www.nanotec.org.uk/report/chapter10.pdf

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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の 見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。


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