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HOME > 経営をよくする > ここが知りたいREACH規則

ここが知りたい REACH規則

コラム

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09.07.17

ポリマー中のモノマーの登録に関する提訴から思うこと-REACH規則の理解の難しさ(その1)

Hercules社、SPCM社、C.H.Erbsloh社、Lake Chemicals and Minerals社の4社から、ポリマー中のモノマーの明確化を求めると共に、モノマーの登録の登録要求は非合理で不平等であり、違法性があるとして提訴されていました。この判決が7月7日に欧州裁判所から出されています1)
 今回の提訴で、4社からは次のような考えが出されていました。

「反応してポリマーに変化したモノマーは、モノマーが持つ固有の性質はなくなり、ポリマー自体は安定で安全である。したがって、6条(3)のモノマーの定義がポリマー中に結合したモノマーであるとするならば、ポリマーは登録除外であるとしても、モノマーに登録要求をするのは意味がない。さらに、この説明はREACH規則の目的(人の健康と環境を守ること) と一致せず、差別的であり、不均衡である。」

争点を整理しますと、次の通りです。

  1. REACH規則第6条(3)の"monomer substance"は何を意味するか?
  2. ポリマー中に結合した重合したモノマーであるならば、ポリマー組成の情報を持つEU域内の製造業者に比べて、その組成の情報が分からないEU域内のポリマー輸入者にとっては登録に関して不利な状況に置かれ、"比例性の原則"(the principle of proportionality)に反しており違法ではないか?

これに対しては、(1)ポリマー中に結合しているモノマー単位であり、(2)モノマーの登録要求に違法性は無い、との判決が出されています。これまで国内で理解されている通りです。REACH規則の施行上の詳細について議論されていますが、この裁判の記録を見ますと、まだまだ今後も新たな問題が出てくるのではないかと感じます。
 例えば、モノマーやポリマーの定義について次のような新たな議論も出てくるのではと思いました。このコラムではその一例を紹介したいと思います。

ポリマーを製造する上ではモノマーは中間体ですが、モノマーに対しては登録に関しての中間体の特例条項は適用されないことになっています。他方、ポリマー中のモノマー以外の物質に関しては中間体の特例条項が適用されます。
 ABS樹脂を乳化重合で製造する場合を考えてみます。この場合、ブタジエンは予め乳化重合され、ポリブタジエンのエマルジョン(通常はラテックスと呼ばれます)となります(ラテックスは、水の中に乳脂肪が細かい粒子となって安定に分散している牛乳に似て、水中に細かいポリブタジエンの粒子分散しているものです)。このラテックスにアクリロニトリルとスチレンを添加し、重合してABSが製造されます。この場合、アクリロニトリル、スチレンおよび、ポリブタジエンは、全てABSを作る上での中間体であります。アクリロニトリルとスチレンは定義に従えばモノマーですが、ラテックスをモノマーと見るかモノマー以外の物質と見るかで、登録要件が大幅に変わることになります。

モノマー以外の物資と見ることが出来そうな根拠としては、ラテックス中のポリブタジエン粒子は、粒子同士が反応するとは考えにくいものです。すなわち、ポリブタジエン粒子がそれ以上重合するとは考えにくいということになります。
 ラテックスにアクリロニトリルとスチレンを添加し、重合してABSを製造しますが、アクリロニトリルとスチレンは共重合すると、ポリブタジエン粒子にアクリロニトリルとスチレンの共重合体の枝が付くとされています(グラフト重合)。

このように考えますと、ラテックスは「中間体」や「モノマー/ポリマー」のガイダンス文書に定義されている中間体と考えることが出来そうです2)3)
 したがって、ABS樹脂を製造する場合、「何処で」ラテックスを製造し、それにアクリロニトリル、スチレン共重合させるかによって、登録の要求内容が変ってくることになります。すなわち、EUに輸入されたラテックスを用いてEUでABSを製造する場合、川下企業で厳密な管理で使われる限り、ラテックスには特例条項が適用されて、登録情報は比較的少なくてすむことになります。

これを整理しますと、ABS樹脂を乳化重合で製造する場合、

  1. EU域内、域外で製造すると、全てのモノマーは完全な登録が必要(ポリマー中のモノマーであるから)
  2. EU域外で、原料であるブタジエンラテックスを製造して、EU域内でアクリロニトリルとスチレンを添加して重合する場合は、ブタジエンラテックスは中間体の簡単な登録ですむ(アクリロニトリルとスチレンは、通常の登録が必要)

すなわち、上記1と2では、ブタジエンについては今回の提訴で主張された「不平等である」ことになります。

このようにREACH本文やガイダンスを読んでいると、まだまだ話の種が出てきそうです。今回書きませんでしたが「不平等問題」なども含めて、機会があればこのような話も紹介したいと思います。

1)http://curia.europa.eu/jurisp/cgi-bin/form.pl?lang=en(「Case number」欄に「C-558/07」を入力して検索)

2)http://guidance.echa.europa.eu/docs/guidance_document/intermediates_en.pdf

3)http://guidance.echa.europa.eu/docs/guidance_document/polymers_en.pdf

(林 譲)

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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の 見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。


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