HOME > 経営をよくする > ここが知りたいREACH規則

ここが知りたいREACH規則

登録:REACH規則の基礎

登録義務者・唯一の代理人

1.登録義務者

2008年6月1日以降は、1企業当たり年間1t以上の物質それ自身または調剤中の物質をEU域内で製造または輸入する場合には、登録が義務づけられました。登録義務があるのはEU域内の製造者または輸入者ですが、EU域外の製造者には、輸入者に替えて、指名した唯一の代理人が登録する制度を設けています(EU域外の製造者は直接登録できません)。

2.唯一の代理人

REACH規則による登録は、EU域外の企業はできませんので、輸入者がその義務を負うことになっています。一般的に、輸入者はREACH規則が要求する登録時の情報や評価時の対応に関する情報に乏しいと思われます。このため、EU 域外の製造者は、「唯一の代理人」と契約し、登録に限らずREACH規則の義務などの代理をさせることができます。

唯一の代理人を活用することによりREACH規則への対応が円滑にできることや企業の生産情報などに関する情報の漏えいを防ぐことが可能になります。唯一の代理人はREACH規則の義務を遵守するため、物質の取り扱いに関する十分な背景(経歴)と物質に関する情報をもつことなどが必要です。そのほか、SDS(安全データシート)の最新版を常に提供することや登録物質の輸入量およびEU域内の顧客リストを常に最新の状態にする必要があります。

唯一の代理人はEU域内の自然人および法人であれば誰でもなれますが、登録などの実務を行えるのは、化学物質の知識と実務経験のあるEU域内のコンサルタント会社や各種試験機関等に限られてきます。これらのコンサルタント会社や各種試験機関は唯一の代理人業務のほかにコンサルタントや化学物質の検査などのREACH規則に関するワンストップサービスを提供していますので、REACH規則に関する業務のすべてを任せることができます。

これらのEU域内のコンサルタント会社や各種試験機関の日本支社やその提携機関などが唯一の代理人業務の受託を行っていますので、REACH規則に対するすべての対応を日本国内で依頼することができます。(参考リンク:「REACH関連サービス提供組織の調査結果について」日本化学工業協会)

予備登録・登録の期限

2008年6月1日からは、既存化学物質と新規化学物質の区別せずに、1企業当たり年間1t以上の物質は登録しなければ製造・輸入することができなくなります。しかし、欧州既存商業化学物質リスト(EINECS)などの段階的導入物質については、予備登録をすることによって、登録期限に猶予が与えられています。しかし、非段階的導入物質や予備登録しない段階的導入物質については、製造・輸入する前に登録しなければなりません。

スケジュールをまとめると次のとおりです。

予備登録期間:2008年6月1日〜2008年12月1日まで

予備登録した段階的導入物質の登録期限:

  • 2010年11月30日まで
    • 年間1t以上のCMR物質
    • 100t以上の水生生物毒性物質
    • 1,000t以上
  • 2013年5月31日まで
    • 年間100t以上
  • 2018年5月31日まで
    • 年間1t以上

非段階的導入物質および予備登録しない段階的導入物質:2008年6月1日からは、製造・輸入前に登録

段階的導入物質と非段階的導入物質

段階的導入物質は次のように定義されています。

  1. 欧州既存商業化学物質リスト(EINECS:European Inventory of Existing Commercial Chemical Substances)に記載されている物質
  2. 欧州共同体または第4次、第5次もしくは第6次の欧州共同体加盟国において製造されたが、本規則発効前の15年間において少なくとも一度も製造者または輸入者により上市されたことがない物質(製造業者または輸入業者が文書による証拠をもっている場合に限る)。
  3. 欧州共同体または第4次、第5次もしくは第6次の欧州共同体加盟国において、1981年9月18日から1993年10月31日の間に製造者または輸入者によって上市された物質で、本規則の発効前に指令67/548/EECの第8条(1)の第1インデントに従って届出されたとみなされるが、本則に定められたポリマーの定義を満たさないもの(製造業者または輸入業者が文書による証拠をもっている場合に限る)。いわゆる「ノーロンガーポリマー(NLP)」である。

これらの条件を満たしていない物質が非段階的導入物質です。

登録情報

REACH規則では、「一般的な登録」と「単離された中間体に対する登録」に分けて化学品庁に提出する情報が定められています。

1.「一般的な登録」で要求される情報

一般的な登録のために提出が求められる情報には、次のものがあります。

  • 技術一式文書
  • 年間10t以上の場合は、化学物質安全性報告書(以降、CSRと言う)

i.は年間1t以上の物質すべての登録に際して提出が求められる情報で、ii.は年間10t以上の物質に対してi.に追加して求められる情報です。

i.技術一式文書に記載する情報は表1に示すとおりですが、登録者の身元情報、物質の名称などの識別情報、物質の製造および用途に関する情報、分類と表示、安全使用のための説明や物質の特性に関する情報などがあります。

CSRに記載する内容は、表2の通りです。物質の評価の結果、その物質が危険物質、PBT(難分解性・生物蓄積性・毒性のある物質)、あるいはvPvB(極めて難分解性で高い生物蓄積性がある物質)に該当する場合には暴露評価とリスク評価を行います。この暴露評価とリスク評価を行う過程で、暴露シナリオを作成します。暴露シナリオは、川下企業にはSDSの付属書として提供されます。

暴露シナリオは、どのように物質が製造され、そのライフサイクルを通して使用され、登録者がどのように人や環境に対する暴露を制御しているのかなどを取りまとめたものです。つまり、物質の放出、排出、漏洩などにより人の健康や環境に悪影響を及ばさないために、適切なリスク管理の情報を提供するものです。

技術一式文書(vi)項の情報は、登録トン数帯ごとに定められています。「物理化学的特性」に関する情報はすべてのトン数帯で求められていますが、「毒性学的情報・人の健康に関する情報」や「生態毒性学的情報・環境に関する情報」はトン数帯が多くなるにつれ、求められる情報も多くなります。ただし、10t以下のCMR、PBTやvPvBなどに該当しない段階的導入物質については、「物理化学的特性」の提出だけで登録ができます。

2.単離された中間体に対する登録

中間体は暴露や漏出が最小化されるよう強度に封じ込まれ、厳重に管理されたうえで使用または輸送されていることを条件に、その登録に要求される情報は軽減されています。つまり、物理化学的特性や人の健康または環境特性に関しては、追加試験が求められず、入手可能な既存情報の活用が認められています。そして、この使用や輸送の条件を満足しない場合には、前述の一般的な登録に必要となる情報の提出が必要となります。

中間体は、「サイトで単離された中間体」と「輸送を伴う単離された中間体」に分けて、提出情報が定められていますが、登録者の身元情報や中間体の識別、分類、用途にかかわる情報など、求められる情報の大部分が共通しています。

なお、後者の「輸送を伴う単離された中間体」については、i.使用者が厳しく管理された状態で使用していることを登録者が確認することや、ii.1,000t以上の中間体については1〜10tの登録で定められている物理化学的特性や毒性学的情報、生態毒性学的情報の提供が特に必要とされています。

表1 「一般的な登録」で提出が要求される情報

登録のために提出を求められる情報
データ共有区分
(a)以下の事項を含む技術一式文書
(i)
製造者または輸入者の身元  
 
(ii)
物質の識別  
 
(iii)
物質の製造及び用途に関する情報  
 
(iv)
物質の分類および表示
   
(v)
物質の安全な使用に関する指針    
(vi)
トン数帯ごとの製造または輸入する物質の標準的な情報の適用および標準的な試験計画の適合化に関する一般的な規定の適用により得られる情報の調査要約書
   
(vii)
物質評価および化学物質安全性報告書の作成のための一般的な規定によって求められる場合、トン数帯ごとの製造または輸入する物質の標準的な情報の適用および標準的な試験計画の適合化に関する一般的な規定によって得られる情報のロバスト調査要約書
   
(viii)
(3)、(4)、(6)、(7)または(b)に基づいて提出された情報のいずれが、製造者または輸入者により選任され、かつ適切な経験を有する評価者によるレビューを受けているかについての指摘    
(ix)
附属書IXおよび附属書Xに列記されている試験に関する提案
   
(x)
1tから10tの物質に関する暴露情報  
 
(xi)
インターネット上で無償で公に情報公開することについて、製造者または輸入者がインターネット上で利用可能にすべきではないと考えている要請  
 
(b)登録者当たり年間10t以上の物質に求められる化学物質安全性報告書    

表2 化学物質安全性報告書に記載する内容

パートA
1 リスク管理措置の概要
2 リスク管理措置をしているという宣言
3 リスク管理措置を通知しているという宣言
パートB
1 物質の特定および物理化学的特性
2 製造および用途
3 分類と表示
4 環境中運命の特性
5 人の健康への有害性の評価
6 物理化学的特性の危険性評価
7 環境中の有害性評価
8 PBT、vPvBの評価
9 暴露評価
10 リスクの特性

情報共有とSIEF

REACH規則において、複数の登録者が同一の物質を登録する際、脊椎動物を使った試験などの調査の重複を防ぎ、試験データを共同で提出することにより企業が負担する費用を軽減することを目的とした、登録者間のデータ共有を促進する規定があります。

このようにREACH規則では登録される物質に関するデータを共有(「1物質1登録」という)するために、同一の段階的導入物質に関してはSIEF(Substance Information Exchange Forum:物質情報交換フォーラム)により情報交換を行うこと、非段階的導入物質および予備登録されていない段階的導入物質に関しては、化学品庁にその物質がすでに登録が行われているかを照会することが求められています。

1.段階的導入物質に関するデータ共有

段階的導入物質に関するデータ共有は、SIEFを利用して行われます。SIEFは、同一の段階的導入物質ごとに形成され、その段階的導入物質の予備登録者(潜在的登録者)や予備登録をしないで登録をした者はこのSIEFに参加しなければなりません。このほか、データ保有者(川下ユーザまたは物質の情報を保持している第三者)もSIEFに参加することができます。

SIEFの目的は以下の通りです。

  • 登録時にデータ共有を促進して、重複した調査を避けること。
  • 潜在的登録者間で物質の分類と表示に差異がある場合、関連する物質の分類と表示に関して合意を促すこと。

SIEFにおいては、目的にあるように、試験の重複、特に脊椎動物に関する試験を避けるため、同一の段階的導入物質を登録しようとするすべての潜在的登録者間で、関連する利用可能なデータを共有しなければなりません。

なお、データ共有に関連して、オプトアウトという制度があります。これは以下の場合に、データの共有を行わず個別にテータ提出を行うことが認められるというものです。

  • データ共有の費用負担が過大な場合
  • データ共有が企業秘密に関わり、営業の損害をこうむる恐れがある場合
  • リード登録者(データを共有している登録者の中から選ばれた物質を代表して登録する者)の提出した情報に合意できない場合

オプトアウトする場合、その理由を文書にして化学品庁に提出しなければなりません。

2.共有しなければならないデータと個別に提出するデータ

物質の登録のために提出が求められるデータは、表1に示す、(A)登録者間で共有しなければならないデータ、(B)個別に提出するデータ、および(C)どちらかを選択できるデータに分類されています。

共有するデータは、最初に登録するリード登録者によって提出されます。

3.非段階的導入物質および予備登録されていない段階的導入物質に関するデータ共有

非段階的導入物質に関して、潜在的登録者はすでに同じ物質が登録されているかどうか所定の照会文書により化学品庁に問い合せる必要があります。

問い合わせの結果、同一物質が12年以内に登録されていた場合、化学品庁は潜在的登録者と既存の登録者にそれぞれの名称、所在地を通知し、脊椎動物による試験などを回避するために既登録データ等の参照によるデータ共有手続きが行われ、費用分担などの取り決めを行います。

同一物質が12年以前に登録されたものであれば、過去の登録者の提出した情報を無償で利用することができます。

その物質が過去に登録されていなければ、潜在的登録者はそのまま登録を進めます。

表1 「一般的な登録」で提出が要求される情報

登録のために提出を求められる情報
データ共有区分
(a)以下の事項を含む技術一式文書
(i)
製造者または輸入者の身元  
 
(ii)
物質の識別  
 
(iii)
物質の製造及び用途に関する情報  
 
(iv)
物質の分類および表示
   
(v)
物質の安全な使用に関する指針    
(vi)
トン数帯ごとの製造または輸入する物質の標準的な情報の適用および標準的な試験計画の適合化に関する一般的な規定の適用により得られる情報の調査要約書
   
(vii)
物質評価および化学物質安全性報告書の作成のための一般的な規定によって求められる場合、トン数帯ごとの製造または輸入する物質の標準的な情報の適用および標準的な試験計画の適合化に関する一般的な規定によって得られる情報のロバスト調査要約書
   
(viii)
(3)、(4)、(6)、(7)または(b)に基づいて提出された情報のいずれが、製造者または輸入者により選任され、かつ適切な経験を有する評価者によるレビューを受けているかについての指摘    
(ix)
附属書IXおよび附属書Xに列記されている試験に関する提案
   
(x)
1tから10tの物質に関する暴露情報  
 
(xi)
インターネット上で無償で公に情報公開することについて、製造者または輸入者がインターネット上で利用可能にすべきではないと考えている要請  
 
(b)登録者当たり年間10t以上の物質に求められる化学物質安全性報告書    

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の 見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。